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不死議な姉妹の旅物語  作者: 黒い星
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93話 真夜中の襲撃

「姉様、目覚めていますか?」


「えぇ。・・・何の気配かしら・・・雨に混じって嫌な気配が漂っているわね。」


リュフカ手前の砦に辿り着き、私はエレナお抱えの召使たちによって着替えさせられたらしく、気が付いた時にはベッドの上で横になっていた。そのまま休ませてもらって体調も良くなってきた深夜、雨が降る外の上空に、何か違和感というか、妙な気配を感じ取った。


この時間じゃ見張りの兵士たちは起きていても、グラたちは寝ているだろう。何より、彼らがどの部屋にいるのかを私は知らない。単独で調べに行くとまた心配をかけるかもしれないので、一先ずリリムと共に外に出て空を見上げた。


「何でしょうかあれは・・・。鳥翼の民・・・ではないですよね。この雨と暗闇の中では有り得ないはずですし。」


鳥翼の民は一部を除いて基本的に夜や暗闇では視力を失う。しかもこれだけ強い雨が降っている中では満足に飛行することも出来ず格好の餌食となってしまう。


恐らくは召喚獣だろう。上空から奇襲を仕掛けるのが目的だろうが気が付いてしまえばいくらでも対処は出来る・・・はずだった。


突然の轟音と共に起きた爆風で吹き飛ばされてしまい、体勢を整えて轟音がした方を見ると、砦の一部が破壊されており、雨の中ですら消えないほどの勢いで炎上していた。


そして、何が起きたのか理解する前に炎上している中心の辺りから稲光が発生し防御が間に合わずに喰らってしまった。それでも、魔法攻撃だったため元々の抵抗力である程度防ぐことが出来た。当然、呪いの力で焦げ付いた肌もすぐに元通りになり、改めて状況を確認してみる。


燃えている砦の反対側の方へ兵士たちが退いていく。何が起きたかわからない状況で安全な方へ素早く逃げることが出来るのは中々優秀だと思う。普通はこんなことがあれば呆然と立ち尽くしてしまうだろうから。


「この状況下で、死者が出ていませんね。兵士の気配の数がここへたどり着いた時と同じです。」


リリムが気配探知の魔法で、敵の捜索ついでに確認したようだ。大怪我をしている人こそいるけど、誰一人として死んでいないというのはどういうことだろうか?


「いえ、そうね。ここにはエレナがいるんですものね。彼女の作った砦なのだから、こういった事態への対策も完璧なはずよね。」


遠距離から消火の魔法を使って炎上を止めて確認してみると、燃え上がっていたのは砦の上部と周りが殆どのようで、砦自体は多少の崩壊はしているものの想像以上にしっかりと形が残っていた。


「負傷したのは外にいた見張りの兵だけのようですね。ただ、全員が外に出てしまっているのはまずいのではないでしょうか?」


どうやらそれが狙いのようだ。今までは砦の中から遠距離魔法で追い返していたようだが、全員が外に出てきてしまえば遠距離攻撃をするための視野が足りなくなる。だからといって、今から砦の中に戻ったところでもう間に合わない。すでに敵の戦闘部隊が肉眼で確認できる程の位置まで来ているのだから。


「さて、それじゃ吃驚させられたお返しに、私たちも彼らを驚かせてあげましょう。」


リリムが頷き駆けだし、負傷した兵や給仕の召使たちに襲い掛かろうとする敵を薙ぎ払う。召喚獣だろうと人だろうとお構いなしに蹴りで切り裂き、首を刎ね、真っ二つにしていく。


そして、その数が20になろうとした辺りでふと気が付く。私もだが、リリムが着ている服がいつもの服ではなく召使の衣装になっている。おそらくダメになってしまった服の代わりに借りているのだろうが、人から借りた服をそんな鮮血で真っ赤に染めてしまっていいのだろうか?


白と黒を基調とした服がどんどん赤と黒に変わっていっている。暗闇の雨の中だからまだ誰も気が付いてないかもしれないが、もしこれが明るいところでだったらかなりの恐怖を煽る状態になってしまっていただろう。


「っと、そんなこと考えている場合じゃないわね。陸上はリリムに任せてしまえそうだし、私は・・・空の方々と戦おうかしら。」


そう思って再度上を見上げると同時に、上空から何かが落ちてきたので慌てて避けつつ何が落ちてきたのか確認してみる。


「これは・・・召喚獣の・・・死体?どうして・・・。」


遠視の魔法を使って空を見てみると、そこにはシール君がすでに戦っているのだが様子がおかしい。攻撃をしている様子がまったくないのだが何故か周りの敵が端から切られ、一体、また一体と落ちてくる。


わずかに見えた魔力反応から察するに、グラが戦っているようだ。グラ本人は見えないし気配も感じないのだが、グラが持っている短剣が長剣化の魔法を発動したのが一瞬だけ感じ取れた。


グラは飛行魔法や結界を足場にする技術は身に着けていないが、シール君がそのあたりを補っているのだろう。それに、ノエルから一通りの剣術や武術は習っていると言っていたし、あの短剣を手に入れてからもしっかりと鍛錬を繰り返していた成果が出ている。


「・・・空の方も大丈夫そうね・・・。そしたら、負傷者の手当てとか護衛を・・・。」


と思って兵たちの集まっている方を見れば、すでに負傷者の手当ては済んでおり、戦える兵士たちは戦えない者を囲うような陣形を取って敵襲に備えている。彼らもまた陸上はリリム一人で、上空の方も問題ないと判断しているのだろう。それぞれの方向を確認しつつもその場から離れずにいた。


「んー・・・私だけやることがないわね・・・。どうしましょう・・・。砦を襲った魔法の正体でも調べにいこうかしら。」


取り合えず砦の中に戻り、中の被害状況なんかを確認しつつ炎上した部分へと向かった。

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