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不死議な姉妹の旅物語  作者: 黒い星
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91話 シールの過去

「さて、グラ、シール様、事情を聞かせていただけますか?」


急ごしらえで立てられた砦の一室に案内され、そこには離宮にいた召使たちが何人かいたためルルとリリムを預け治癒を依頼し、僕とシールは別室で母上の事情聴取に付き合うことになった。


今から一年半前・・・といっても、僕らからすれば一週間くらいしか経っていないのだが、ともかくノエル様と別れた日からここにくるまでに起きたことを報告した。


「なるほど・・・それで何の連絡も無しにずっと国を離れてしまっていたのね・・・。とんだ災難だったわね。お疲れ様。」


お疲れ・・・というほどの苦労は僕はしていない。残りの三人はそれぞれ別々の理由で傷ついてしまったが・・・。


「ともかく、ここから先ルル様たちのお力添えを頂けるというのなら、取れる戦術も増えてくるわ。陛下やノエルの方にも伝令を送って今後の策を決めるから、それまでゆっくり休んでいるといいわ。」


もっとも、そんなゆっくり休めるような場所ではないけれどと言い残し、母上は部屋を去った。この部屋はそのまま僕らの部屋として使っていいということなので、シールが机の上に布団を敷きベッド代わりにしようとしている。


「いや、さすがにそれは行儀が悪くないか?」


「じゃあどこで寝るの?てか、兵士の人たちってどうやって寝てるの?」


どう、と問われれば戦場では基本野宿と同じで、地面に直接寝転がるか木や壁などに寄りかかって眠りにつく。一部の将軍や給仕、医術者などは野営の幕が張られその中で眠りにつくが、それでもせいぜい毛布のようなものが支給される程度だ。


「うわぁ・・・大変そうだね・・・。僕は軍人にはなれないなぁ。僕もルル姉たちみたいにベッドを持ち歩こうかな。」


ルルたちと違い収納魔法にも比較的余裕のあるシールだが、自分の荷物は実は殆どもっていないらしく中に入っているのは殆どが食料だという。


何故なのかと一瞬思ったが、考えてみればシールは天空都市で寝ている最中に地上に落ちてきたのだから、自分の荷物やらは天空都市に置きっぱなしになっているのだろう。


「天空都市というのはどこにあるんだ?僕らでも行けるところなのか?」


「んー・・・場所は判らないねぇ。なんせ風の向くまま気の向くまま空を彷徨っている箱舟みたいなものだから。今どこにあるのかさえ判れば行けないこともないかな?空気はかなり薄いから呼吸は苦しいだろうけど、その辺は魔法を頼ればどうにでもなるだろうし。」


空気が薄いといっても水中ほどではないし、水中呼吸の魔法をそのまま使うだけで問題ないようなのでいつか行ってみたい気もする。歴史上どこにも記されていない天空都市とはいったいどんなものなのだろうか。


「まあ近づけば僕が気付くし、その時時間に余裕があったら招待するよ。入場審査とかも僕がいれば問題ないし。なんせ僕が作った都市だからね。」


「・・・!?シールが・・・作ったぁ!?天空都市を!?」


「あ、話してなかったっけ。空に都市があったら面白そうじゃん?だから、作ったんだ。ついでにその功績が認められて竜神試験を受けることができて、風の竜神になったんだよ。」


改めて考えるととんでもなくすごい人と共に旅をしているんだなと思い知った。シールの研究というのは天空都市そのものらしく、まだ出来上がって百数十年程度だからこそ、どの歴史にも出てきていないのだろう。


「歴史書に刻まれるのは大抵戦争があったりした所だからねぇ。あそこは争いなんて殆ど起きてないからね。」


理由を聞けば、都市といってもそれほど大きい訳ではなく、ほぼ全員が知り合いというか家族みたいなものだからだそうだ。ついでに、なんだかんだ言ってシールが、竜神という存在が抑止力になっているそうだ。


「これでもリリムに出会うまでは、喧嘩とか無敗だったんだよ。でも、それで調子乗って決闘興業に参加して、初戦でリリムにボコボコにされたんだよね・・・。」


外国には闘いを興業化している国もいくつかあり、いくつかの大会は優勝したが、最後に参加した所でリリムに出会い敗北したそうだ。リリムが参加した理由は判らない・・・はずなのだが、その時の大会は賞金の他に肉やら砂糖やらの、その国では貴重とされている食品が賞品になっていたそうだ。


「始めは負けた悔しさから付き纏って再戦したりしてたんだけど、一回も勝てなくてね、でも、いつでも相手してくれるし優しいし、だけど闘いは一切手を抜かないで一人の戦士として見てくれてて・・・。」


「それで、好きになったのか。」


「ん?好きになったのは顔とか胸とか脚が好みの感じだったからだよ。まあ惚れこんでるのは色々理由はあるけどね。」


シールの返事に思わずずっこけてしまった。いい話かと思って聞いていれば結局ただの一目惚れだったのか・・・。まあ、一目惚れの辺りは僕も人のこととやかく言えないけど・・・。


「ちなみに一度ルル姉にも挑んだことがあるんだけど、まあ・・・結果は聞かないでね・・・今でも時々夢に見ちゃって、飛び起きたりすることがあるから・・・。」


何をどうしたらここまで怯えさせることが出来るのか・・・



その後も色々と話をして気がつけば辺りがすっかり暗くなっていた。シールと二人きりになるのは初めてではないが、こういった話をするのは初めてであったし、なんだかんだ楽しい時を過ごせた。

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