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不死議な姉妹の旅物語  作者: 黒い星
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82話 違和感

「それで、結局いつまでしていたんですか?」


「10回から先は数えてないわ・・・。」


グラとの初夜を迎えたあくる日の昼、昼食用の魚を捕りにリリムと川へ来て、魚が釣れるまでの雑談の中で突然リリムが聞き出した。


グラが3回、私が10回くらいまではまだ覚えている。だがその先は殆ど記憶もなく、気がつけばお互いの体液と汗まみれになりながら眠りについていた。さすがに毎回こうなってしまってはまずいと思うので次回からはある程度で自重することを覚えなければと思いつつ、それでも昨日のようにひたすらに求め続けてしまうかもしれない・・・快楽とは何と危険な物だろうか。


「体の調子はいかがですか?つわりがひどくなると何も食べれなくなると聞きますが。」


「昨日の今日でそこまでいかないわよ。体の調子も悪くないわ。強いて言うのなら心かしら?グラの顔をまともに見れる気がしないわ・・・。」


昼前にリリムに起こされ、慌てて体を洗って逃げるように川まで来てしまったため、未だ眠っていたグラとはまだ一言も話せていない。というより、今顔を合わせたらまた求めてしまいそうで怖い。


「それで、私だけ起こした理由をそろそろ聞かせてくれないかしら?」


これ以上情事のことを聞かれるのもアレなので、話を変えるついでにリリムの本題に触れてみる。魚を捕るだけならわざわざ釣竿など用意しなくても問題ないし、釣りを楽しむ趣味もない。それなのにわざわざ道具を作ってまで連れてきたのだから、何か理由があるのだろう。


「少し気になることがありまして。ここから元の場所へ戻るにはどうしたら良いのでしょうか?」


私たちが今いるこの土地は、ミスフィが作り出した幻想世界に近い何かであると説明を受けていた。当然帰る際は彼女たちに話をしてどこかへ、恐らくは元の山かその麓かへ飛ばしてくれるものだと思っていたのだが・・・確かに考えてみれば万が一彼女たちが元の場所へ送ってくれなかった場合、私たちはどうしたらいいのだろうか?


「シール君に協力してもらい昨夜この周辺を調べましたが、出口らしき所は一切ありませんでしたし、神話の地図も元の山を指したままでした。」


「別に私たちは普通に送り返すから心配しなくてもいいんだけど・・・?」


背中から声を掛けられ振り向くと、複雑そうな顔をしたミスフィが立っており、その手には大きな籠を持っていた。


「君ら入れ物を何も持たないで出て行ったじゃない?大漁だったらどうするつもりだろうって思って持ってきたんだけど、いらない心配だったみたいだね。」


にやにやと笑いながら籠を置き川の中へ入っていったかと思えば、あっという間に魚を3匹捕まえて籠に入れていく。釣りを楽しむ趣味はないが、だからといってこの取り方はどうなのだろうか?これではまるで熊か何かのようだ。


「そんなにこの場所が不安かな?一応私としては楽園的な物になるように設計したつもりなんだけど・・・。」


私たちが感じている不安はまさにその楽園のような部分だろう。ここは何もかもが満たされすぎている。どれだけ食べてもなくならない食材に、快適な住居、争いも何もなく平穏に過ごすことが出来る。だが、現実はこんな楽なものではないはずだし、私たちはその辛い現実を生きていたからこそ、この場所に居心地の悪さを感じているのだろう。


「私がここを作った理由はまさにその辛い現実から逃げ出したい人を救うためだから、ある意味で成功しているねぇ。」


少なくとも私たちに敵対意思はないし、ちゃんと山の麓に転移すると告げて、いつの間にかあふれんばかりの魚やら山菜やらが詰め込まれた籠を持ってミスフィの姿が消えた。






結局、その日の夕方に麓へ転移してもらうことになり、無事に元の世界へと戻ることが出来た。振り返れば目の前には砂漠が広がり、すぐ近くには穴がまだ残っていたため埋め立てておいた。


グラとシール君はもう少し残っていたかったと不満を零していたが、そこはリリムが一言"首を刎ねますよ"と呟き、満場一致不満無しで戻ることが決定した。


「それで、結局この後どうするの?今からサンタナ領まで向かうと夜になっちゃうし、宿が取れるかもわからないよ?」


一応、食料はそれなりに分けてもらったので、数日野宿をするくらい何の問題もないのだが、それでも町の近くで野宿をするほうがいいだろうということでサンタナ領の町へと向かう。


だが、歩いている最中どうにも違和感というか、奇妙な感覚が襲ってくる夕刻を過ぎ日が沈みだしており、体調でも崩してしまったのか初夏らしからぬ肌寒さを感じる。その奇妙な感覚は他の3人も感じていたらしく、だがどうにも言葉にできずにいた。


「砂漠やその付近は日中と夜間の気温差が激しいと聞くが、ここまでひどいとは思わなかった・・・。」


雪山ほど寒いというわけではないが、砂漠からそれなりに距離も離れたというのに未だに寒さを感じる。この寒さの正体は実は覚えがある・・・というより、認めてしまえばなんら変なことなどない至極当然のものであるはずだ。


だがそれでも、事実を認め受け入れることができない。それが本当ならば私たちはかなり危険な状態にいたことになる。




そして、認めたくない事実は、サンタナ領に近づくにつれて認めざるを得ない状況となってしまった。




「お探ししておりました。お久しぶりですルル様。」

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