77話 創世神話
「さて、今後について話し合おうと思うのだけれど・・・何故あなたがいるのかしら?」
ガイムさんが家を建てている間に4人で次にどうするかを決めておこうと思ったのだが、何故かミスフィも一緒に会議に参加している。まあ神話の時代から生きている彼女の知識や見聞は確かなものだろうし、普通なら何も問題ないのだが・・・
「そんなに敵視しなくてもいいじゃない。あなたの旦那様はもう狙わないわよ。たぶん。」
ルルの目つきが少し鋭くなったような気がする。だがどちらかといえば恨みを買ったのは食事時にルルの皿から料理を奪っていたことのほうが大きいと思う。
「それじゃ、お詫びと友好の証ってことで私から一つ情報をあげるわ。ウアル連合国西の海には魔力がとんでもない海域があるんだけど、その辺りの海底に遺跡があるのよ。そこには、古代竜の言葉がわかるようになる魔法具がある・・・って噂よ。」
その海域とはウアルへ来る前に事故にあって迷い込んだ魔霧海域のことだろう。確かにあの海底には遺跡があったようだが、絶対視力を使って遠視を掛けてぼんやりと見える程度の場所だったし、陸地ならともかく海底となるとそこまで潜ることすら一苦労だ。
「噂・・・噂ねぇ・・・竜神ならもう少し確かな情報をくれないかしら?」
「それは無理な話よ。だって水の竜神ですら辿り着くのが難しいなんて言われている所よ?私たちじゃ辿り着く前に死んじゃうわ。」
水の竜神・・・現在はエリアスがその名を冠しており彼女ならスフラの町にいるため、協力を依頼すること自体は容易だが、水の竜神ですら到達が困難というのがわからない。水中は彼女の領域な上、海竜種である彼女は息継ぎの問題も水圧の問題も無視できる。中を攻略することが出来ないというのならまだ理解できるが・・・
「どういう仕掛けかは分からないし、調べたこともないから確かな事は言えないけど、あの遺跡は間違いなく神話の時代からある遺跡だし、言うなればその付近も含めて神に近い者の領域よ。何があっても不思議じゃないわ。」
神話の時代、かつて三人の神がこの世界に降り立ち、一人が空を、一人が陸を、一人が海を作り出した。そして、その三人はそれぞれの領域に適応した生命体を生み出し競わせた。自分たちの下までたどり着いた者をその領域の王とすると定めて。
だが結局、三人の神の下までは誰も辿り着くことが出来ず、それぞれの生命体は独自の活動を始め発展させていった。その時代の建造物は殆どが朽ち果てているが、ごく一部が未だに現存しており、それが神話の時代の遺産として語り継がれている。
これほどの長い年月を超えて未だに形を残している建造物を建てる者など、殆ど神と言って差し支えない程だという。そんな場所の付近は、常識では計ることのできない"何か"があるということらしい。
「以前、アモンという魔族の国で一度神話の遺跡を見かけたことがあります。が、確かにそこは陸地だというのに私たちと当時の魔王やその配下の者が力を合わせても入り口にたどり着くことすら出来ませんでした・・・。」
魔王たちと協力体制にあったことは置いておくとして、ルルとリリムに加え世界一魔法に長けた者と言っていい魔王ですら到達できなかったのだから、もはやお手上げではないだろうか?まして僕たちが目指しているのは海底の方なのだから・・・。
「空にある遺跡なら場所だけは僕は知ってるけど、あれは天才と呼ばれた僕でも一秒でお手上げだったね。」
シールが手を顎に当てて思案するように呟き、まったく答えの見つからない問題に当たってしまい全員が黙り込んでしまった。
「おーい、家が出来たぞ・・・ってなんだ?随分と暗くなってるな。」
家を建て終えて戻ってきたガイムさんにここまでの話をかいつまんで伝えて知恵を出してもらう。だが、やはり詳しくは分からないとのことだった。
二人は神話の時代から生きているとはいえ、竜神としての力を得たのは最近・・・と言っても1000年程前のことらしいが、それまでは大した力も持っておらず、日々を生きるだけで手一杯だったそうだ。
「毒の竜神に出会って、不死の毒を飲んでからやっと強くなったもんだから、神話の時代は本当にただ生きていただけなんだよなぁ・・・。多少の歴史程度ならその辺の書物より詳しいが、知識に関しては古代からの竜神と同程度だからなぁ。」
頭をぽりぽりと掻きながら申し訳なさそうに話すガイムさんを加えて、あれこれ話合ってはみたものの、結局答えは出ないまま時間だけが過ぎていった。
「ま、悩んでてもしょうがない。今夜は一先ず休んでおこう。それと、ガイムさんとミスフィ・・・さん、もしよろしければ明日から少しばかりお時間を頂けませんか?色々と教えて頂きたいことがあるので。」
一瞬ミスフィに対して敬意を払うのを忘れかけたが、竜神二人に鍛えてもらえば僕でももう少しは戦力になるかもしれないと期待を込めてお願いしてみた。
現状僕は戦力としてまったく当てにならないだろう。ルルの隣に並ぶのに相応しいだけの力を手に入れることは難しくても、せめてもう少しくらいは強くなりたい。
「ふむ、俺はかまわないが・・・俺自身は戦闘能力はそれ程高くないからな。あまり期待するなよ。」
「私も問題ないわよ~。お姉さんが手取足取り教えてア・ゲ・ル。」
ミスフィの発言に少しばかり嫌な感じもしたが、ルルは特に気にした様子もないし、こちらからお願いしたのだから多少のいざこざは我慢するしかないだろう。
とりあえずはガイムさんが建てた家・・・といっても入ってすぐのところに1室だけある簡易なものだが、一人一軒ずつ家の中へ入り休息の準備に取り掛かった。




