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不死議な姉妹の旅物語  作者: 黒い星
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75話 霧の悪戯

「少年よ、なかなか良い趣味をしているな。それは雪国の金髪美女を集めた一冊でな、入手には苦労したのだよ。」


雪国は日の当たる時間が短いらしく、ここに載っている女性は皆肌が白くて、それによって一部の桃色がより映えている・・・じゃなくて!


「いや、あの、す、すみません!何か違和感があったのでちょっと調べてみただけで・・・これを見に来たわけでは・・・。」


「まぁまぁ皆まで言うな少年!年頃の男なのだから興味があるのは当然ではないか。なんなら私が色々と教えてやってもよいぞ!」


そういって目の前の幼女は体を密接させてきた。だが、やわらかな物が当たる感触を楽しむ前に、多少だが距離があったはずの二人の間合いを一瞬で詰められたことと、いつのまにか足の周りに霧が出来ていて動かなくなってしまったことに同様を隠せないでいた。


さらに言えば、こんなとこをルルに見られたらとてもまずい訳で・・・


「グラー?もうすぐご飯が出来る・・・け・・・ど・・・。」


これ以上ないくらい最悪のタイミングで、僕を探しにきたルルが倉庫の中に入ってきてしまった。ルルの視点からみれば、女性の裸が掲載されている本を持っている恋人が、水着姿の巨乳幼女に抱きつかれている状態で、怒られる程度で済めばいいが、下手したら殺されてしまうのではないかとすら思えた。


だが、ルルも混乱しているのか、まったく予想外の反応を示してきた。


「えっと・・・お楽しみの所お邪魔しちゃったかしら?あぁ、大丈夫よグラ!男の子だものね、そういうのは理解しているつもりよ。」


「いや違う!助けてくれ!」


ルルの反応に突っ込むのも忘れて思わず叫んで助けを求めてしまった。そして叫んだ瞬間にルルの目つきが変わり姿が消えた。いや、消えたように見えるほど素早くこちらへ近づき、幼女の頭上から炎を纏ったルルの右手が襲い掛かっていた。


何が起きたのか理解すると同時にその場にへたり込んでしまい、足にまとわり付いていた霧も晴れて動けるようになったのを確認し座ったまま後ずさった。すでに幼女の姿は無く、周りを睨みながら探しているルルが立っているだけだった。


倉庫の床には小さな穴があいており、その入口周辺や中が硝子状になっている。どれだけ高熱の魔法だったのか考えるのも恐ろしいほどの一撃を放ったルルは、小さく"逃がした"とだけ呟き謎の幼女の行方を追っているようだ。


「ごめんなさいねグラ。てっきり情事に励んでいるものだと思ってしまって・・・敵に捕まっていたとは思わなかったわ。怪我はない?」


なんとなくではあるが、昔のルルならばこういった思考はしなかったんだろうなと感じる。僕を男として見てくれているからこそ、だがどうにも認識というか常識がズレてしまっているせいで反応が遅れたのだろう。


怪我という怪我もまったくしておらず、密接していたはずの幼女だけを狙い、僕には熱量すら伝わらないような精密さで魔法を制御したルルに驚くばかりだ。


「とりあえず無事なようでよかったわ。家の外にさっきまでなかった建物があって、中からグラの声がしたから来てみたのだけれど・・・さっきの子は誰なのかしら?」


おそらくはここの持ち主なのだろう。何もない空間に隠されていたことや、ガイムさんの話からして、さっきのが霧の竜神なのだろうか?だとすれば万が一にも殺してしまっていてはまずいことになっていただろう。


「殺すつもりはなかったわよ?でも、グラを襲っていたのだから腕の一本くらいは覚悟してもらおうかと思ったのだけれど・・・それより、今の子が霧の竜神なのだとしたら、敵意を見せてしまった以上協力は得られないかもしれないわね。」


「まあ、その辺は後で考えよう・・・。ここは色々と危ないから・・・。」


何が危ないのかといえば、僕の精神状態が危ういだけなのだが、うっかり未だ手にもっている本を見つけたルルが取り上げ棚に戻した。ちょっと惜しい気もするが、"本でするくらいなら私がしてあげるから"と言われてしまってはどうしようもない。


とりあえず面倒事は食事の後にでも考えよう。






「あー・・・それは間違いなくミスフィだな・・・。すまない、連れが迷惑をかけたようだ。」


とりあえず倉庫のことと、行方をくらました幼女のことをガイムさんに伝えた所、やはり先ほどの幼女が霧の竜神だったようだ。


「ちなみにミスフィさんがあの姿だったのは僕に見た目を合わせただけみたいで、実際は普通に大人の姿だったよ。」


ここへ1番最初にたどり着いたシールに対しては普通に大人姿だったらしく、シールと川へ魚獲りに行く途中で見た目を変えたらしい。いつだったかシールが話していた、純血の竜種は人の姿をある程度自由に変えることが出来ると言っていたし、霧の竜神ともなれば人の姿以外にも容易く変わることができるだろう。


つまり、今そこの食卓に大量に並べられた料理の数々を、ルルと文句を言い合い取り合いながら食べ漁っている女性が先ほどの幼女の・・・霧の竜神の本来の姿なのだろう。


黒く艶やかな髪を頭の上で束ねて、腕まくりをして両手に箸を持って器用に食べている彼女は、こちらに気が付くと食事をやめ、またしても一瞬で間合いを詰めて抱きついてきた。


「やーやー先ほどの少年ではないか!さっきはすまなかったな!まさか彼女もちだったとは!さすがの私も不貞行為をさせるつもりはなかったのだがな!だが、自分からしたくなったのならばいつでも言いたまえ!」


悪気はなかったと言いつつもとんでもないことを言ってくる竜神を払い、何をしたんだとか、浮気はダメだとかいってくる二人を押しのけてルルの隣に座る。


「食の竜神というのは素晴らしいわね。こんなおいしい料理の作り方を残してくれたのよ。ほらグラも食べなさい。」


隣に座るや否やルルがお皿にあれこれ取ってくれたのだが、僕の胃袋はこれの半分くらいしか食べられないだろう。せっかくならルルが作った物が食べたいと伝えた所、少し顔を赤らめながら1番近くの皿に纏めてあると伝えられた。


「別に好きなものを食べればいいのよ?何もそんな拘り方しなくても・・・。」


「姉様、今のグラさんにそんなことを言ったら姉様が食べられてしまいますよ。」


耳打ちしているリリムを叩き、目の前の皿に乗っている物を一つずつ食べていく。後ろでガイムさんが生暖かい視線を送っている気がするが、気にしないでおこう。

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