7話 雨天の山中
「雨ね。」「雨だね。」「雨ですね。」
アガレス王国の西側に位置するこの山脈を超えるため進み続け、途中で反対側へと繋がる洞窟を見つけ一息ついていたところにこの天気である。
山の天気は移ろいやすいとは言え、さすがに予想していなかった。
ルルとリリムは、竹筒に入れた水を飲みながら溜息をついている。さすがにこの中を進むことは躊躇ってしまう。二人の衣服が濡れていないことが幸いか。
濡れていたら・・・色々危なかったかもしれない。
「少しは暖かくなっていたかと思えばこれだものねぇ。こんな気温の差が激しい日が続いてしまったら、風邪を引いてしまうわ・・・」
「ん?君たちでも風邪を引くのか・・・!?」
思わず口にしてすぐ、失言だったかもしれないと若干の後悔をしつつ、視線と咳払いでごまかしておく。
決して君たちのことを馬鹿にしたわけじゃないぞ・・・。
「私たちにも体調の良し悪しはあるわ。普通の人よりその波はないけど、それでも多少はね。」
「外傷などに対しては完全と言えるほどの耐性がありますが、状態異常に関しては毒が効かないのと火傷や凍傷にならないという程度です。」
そういえば警騎士所で話していたときも麻痺や眠りの魔法に困ったことがあると言っていたな。確か、ルルがリリムに掛けてその反応を楽しんでいたとか。
「まあ最も、身動きが取れなくなってしまう程でもない限り、治癒魔法で治してしまうのだけれどもね。」
「治癒魔法が使えるというのは羨ましいな。僕なんかは毒消しとかが旅の必須アイテムだからね。どうしても荷物がかさばってしまう。」
雨音を背後に感じつつ、そんなたわいもない会話をしながら洞窟内を進んでいた時、どこからか悲鳴が響いてきた。
「今のは、子供の悲鳴か!?」
「洞窟の奥から響いてきたようです!しかし響き方からはかなり奥のほうではないかと・・・。」
「見に行ってみましょう!死んでさえいなければ救えるかもしれないわ!」
急いで洞窟の奥へと走り出す三人。ここは危険な魔物が出てくる山。子供はもちろん、大人ですら腕に自信のないものは訪れてはいけないとさえ言われている。
子供の無事を祈りつつ、たどり着いた現場で目にしたものは涙を流しながらもすり傷程度で済んでいる子供と
残酷な現実だった。