55話 ルルの適正
「これで~私も~ルル様と同じ~魔法使い~♪」
初めて思い通りの魔法が使えたことが嬉しかったらしく、アルルはご機嫌に鼻歌まで歌い出した。そして次はセインが同じように手ほどきを受けている。
セインの場合は適正の無い魔法を無理に使おうとしてしまっているがために上手くいっていないらしい。純血種の場合適正の有無による得手不得手が人間よりも顕著に表れるそうで、セインにはレオナが教えることのできた魔法、炎や氷の魔法に関して適正が殆どなく、風魔法と雷魔法に適正があるとのことだった。
風魔法に関してはシールも教育に参加しており、道中だけでいくつか魔法を使えるようになっていた。
「それにしても、ルル殿は素晴らしいな。自らが強いだけでなくこうして教育を施すことまで出来るとは。」
ルルほどの人外まではいなくても、それなりに実力を持った者なら世界中にいる。だがその殆どは誰かに教える技術があるわけではないので、魔導士を目指すなら良き師に恵まれることが最も重要なことだろう。
レオナもその一人で、自分では強くないと言っているが2種の属性を持つ精霊族が弱い訳もなく、どちらかと言えば経験不足の面が大きいのではないかと思う。そして彼女も人に教えるのは苦手らしく、これまで何度となく教育に挑んだが成果が出なかったそうだ。
「そういえば、ルル様の適正ってなんなんですか?」
純真無垢なアルルが質問するが、その質問にルルとリリムは一瞬顔をしかめたように見えた。適正というのは言ってしまえばその人の得意魔法が何かという話でもあり、それが知られてしまえば対策も取られやすいのであまり他言しないのが普通なのだが、この二人にそんな常識など通じるものではないだろう。だからこそ、二人が言いよどんだ理由がわからなかった。
「私は・・・そうね、夢を壊してしまうようで申し訳ないのだけれど、ほぼ全ての魔法に関して適正が無いわ。最初に覚えたのは炎魔法だったから炎魔法なら多少は覚えがあるけど、それ以外で言うなら、知識面でならともかく技術的に私にしか使えない魔法というのは1つしかないわ。」
その一つが、アルルやエレナに使った"導き"の魔法らしい。ルルが独自に開発したその魔法は、被術者の才覚を見抜き引き出すという物らしい。そしてこの魔法を習得し自らに使った結果何も才覚がないことが判明してしまったということだった。
「私とあなたたちの差は、赤ん坊と大人の差と同じで、才能の差ではなく時間の差でしかないのよ。私にとってはそれが唯一にして絶対の差、だがら同じだけの時間を鍛錬に費やした人には勝てないと思うわ。」
尤も、もともと狂研究者気質なルルはその人生の殆どを研究と鍛錬に費やしているそうで、その時間差を埋めることが出来るものなど神話の時代から生きている者にしかできないんじゃないかとシールが呆れていた。逆にリリムは意外と怠け者のきらいがあるようで、適当に休んでいたら気が付いたら姉ととんでもない差が出来てしまっていたとのことだ。
「次に研究したいことも決まっているのだけれど・・・それをするために探しているものがあってね。見つからない限りは先に進めないのよね。」
その探しているものが700年前の財宝なのだろう。彼女が次にする研究に関しては以前少し聞いたことがある。といっても、単にすごい素材からすごい武器を作ってみたいというだけだそうでその財宝でなくても、例えば竜神の牙とか心臓でもいいとシールやエリアスを見て呟き戦慄させていたのを覚えている。
「なるほど・・・だが700年前にルル殿が倒した物の財宝なら、各国の国宝として伝えられているのではないだろうか?各英雄たちは財宝を持ち帰ったことで英雄として認められた部分もあると聞くが・・・。」
レオナの疑問にルルもリリムも口をぽかんと開いていた。どうやらその可能性は思ってもみなかったことのようで、今まで一度も確認したことがなかったらしい。
「姉様・・・これは・・・どうしましょう。アガレスとウォレウォルとを攻め滅ぼして探し出しますか?」
「止めてくれ・・・。二人を相手にして我が軍が戦える訳がないだろう・・・。滅ぶくらいなら国宝の一つや二つ明け渡すよう陛下に進言してみる。」
正体がバレないよう静かにしていたノエルだったが、さすがにリリムの発言は看過できなかったらしく、レオナ達に聞こえないようにリリムの耳元で呟いていた。
「ねえグラ・・・。あなたの権力でなんとかならないかしら?」
今度はルルが耳元で囁く。息がこそばゆいし何かいい匂いがしたり柔らかかったりしたが、その期待に応えられるほどの力は持ち合わせていないし、何があるのかすら、本当にそんなものがあるのかすら知らなかった。
「まあ・・・僕なりに協力できることは協力するよ。」
そう答えるのが精一杯だった。




