表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不死議な姉妹の旅物語  作者: 黒い星
54/139

54話 移動中の教育

「それでは出発いたします。本日中に王都にたどり着くため、少々早めの行軍となります。」


馬車に乗り込み、スーレ領の騎馬部隊の一人にそう説明され困惑しながらも頷いた。ここから王都までは結構な距離があるのだが、現在乗っている馬車はここへ来る前に、アガレス王都からレゾンを目指した時の馬車と馬によく似ている。多少の違いはあれどこの馬車も特別性なものだろう。


馬車は7人を乗せているにも関わらずかなりの速度で進行していく。そしてその前後両脇を囲い守るように騎馬隊が列を成している。道中も魔物などは出るらしいのだが、この速度についてこれるような魔物はこのあたりにはいないだろう。


道中は特にやることもなく、ルルと犬の女の子との会話に皆耳を傾けている。アルルというこの少女はルルにとても憧れているらしく、常に興奮気味に話しかけているアルルに対して、ルルはやや引き気味だがしっかりと質問に答えていった。


「じゃあ1年間も土の中で過ごして土地を耕していたんですか!?」


話はルル達が転移に失敗したときの話だったが、以前聞いていた内容と少し食い違っている。転移魔法にルルが失敗して土の中に飛ばされ魔力の殆どを失った結果1年近く冬眠するはめになったと聞いていたのだが、絶望の竜神が死の間際に転移魔法を放ちルル達を飛ばしたことになっていたり、その土地がやせ細っていたため土の中から耕していたことになっている。


どちらが本当なのかとルルの方を見ていたら視線が合い、ばつが悪そうにすぐに視線を逸らされた。どうやら彼女たちの理想像を壊すまいと少しばかり嘘をついているようだ。


他にも、大津波を凍らせてせき止めたとか、村が丸ごと燃え盛ってしまった時に村人全員の命を救い、怪我を癒した話など色々していた。そして話の度にリリムがこっそりと耳打ちをして真実を教えてくれた。


大津波を止めたのは、海辺の家で寝ていた時に巻き込まれ溺れかけた際に無理やり凍らせて脱出しただけだと言うし、村が丸ごと燃えたのは、彼女が実験に失敗して周りの建物ごと全て焼失させてしまっただけな上、そもそも一人もいない廃村での出来事で、助けられた人がいるとしたら巻き込まれたリリムだけだという。


そんな話を聞いて、いつぞやの仕返しとばかりににやつきながらルルを見ていたら少しばかり顔を赤くして話題を変えるのに必死になりはじめた。


「そ、そういえばアルルは魔導士になりたいって言っていたわよね?」


「は、はい!でも私あんまり魔法は使えないんです・・・」


魔法というのは正しい術式を理解して組み立て魔力を流すことで発動する。それが上手く使えない原因は術式の理解が足りないか魔力を流すことが出来ていないのか魔力そのものが無いかのどれかだ。


「あなたの場合、魔力は十分足りているのだけれど、術式への理解が足りていないのと、魔力を上手く流し込めていないのが原因ね。術式への理解は勉強すればいいし、魔力の流し方は今教えてあげるわ。」


そういって彼女はアルルの両手を取り何かをしている。見た感じではわからないが今の会話から察するに魔力の流し方を教えているのだろう。


「アルルは私が教えてもどうにもならなかったのだが、ルル殿ならそれが出来るというのか。」


関心したようにレオナが呟くが、魔力の流し方は教えるのも理解するのも難しく、自身もエレナの英才教育をもってしてどうにか習得出来たほどだ。大抵の者はそこで挫折し魔法を使うのを諦めるのだが・・・。


「魔力の流し方は感覚でしかないから、言葉での説明は難しいのよね。ただ、一度覚えてしまえばどんな魔法も基本は同じだからすぐに色々出来るようになるわ。」


ルルが手を放しそう伝えると、アルルは手を見つめ何度か閉じたり開いたりを繰り返した後、外に手を出して魔法を放とうとする。そして"えいっ"という掛け声と共に炎弾が放たれ地面に着弾した。


後ろを走っていた騎兵が驚き少しばかり隊列を乱したがすぐに修正した。なかなか鍛え上げられている兵のようでそこに関心していたが、ふと考えれば草が生い茂るこの草原に炎弾など打てば火事になってしまうと思い着弾点の方を見たが、一切燃えている様子はなかった。


だが燃え盛る大地を見るよりも信じられないような光景が目に映り、慣れていない異種族三人は唖然としていた。


「中々見事な炎弾でした。あとは術式と戦術を勉強していけば立派な魔導士になれると思います。」


何事もなかったかのように淡々と伝えるリリムだが、彼女はその直前まで馬車の中にいなかった。


炎弾が放たれると同時に馬車から飛び降り、着弾点に先回りし着弾と同時に消火を行い、そして馬車の中へ走って戻ってきた。


いや、走って戻ってきたというのは少し違うか。地面を蹴り上げ飛び跳ねるようなその走りは、馬よりも遥かに早くルルが中で止めてくれなければその勢いで馬車が大破してしまっていたのではないかと思うほどだった。






「ルル様もすごいけど・・・リリム様もすっごーい・・・」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ