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不死議な姉妹の旅物語  作者: 黒い星
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46話 ザリガニ退治

「鳥翼種の魔物を相手にするときは翼を狙え!グラセナ!」

「はいっ!」

「麻痺の魔法を打って動きを封じるのも有効です。」


日も登り航海は順調に進んでいく中、時折現れる魔物の対処は訓練の意味も込めてグラが中心に行っていた。


隠密系の適正を持つグラは、密偵としての潜入工作などは素晴らしく優秀だが反面、戦闘能力は一般騎士程度のものしか持っていないため余裕があるときは鍛錬の時間として使いたいとのことだ。


しかしながら、鳥翼種はいざとなったら空に逃げることも出来る上にグラの獲物は護身用程度の短剣しかなく、攻撃魔法も近接用に鍛えていたため鳥翼種に当てるには空中に身を投げ出さなければ届かない。どうしても向こうが攻撃を仕掛けてきた所に合わせて反撃するしかないため、倒した数はまだ数匹程度だった。


「それでも確実に翼を切り裂いて倒せているし、悪くないよね。あ、こっち焼けたよルル姉。」


筋力はそれ程あるわけではないが、身体強化を行ったり武器に魔力を乗せて切り裂いたりし、襲ってきた魔物は確実に仕留めていた。


そして仕留めた端からルルとシールで調理を進めていく。普通の家畜などは血抜きをして熟成させないとあまりおいしくないが、魔物の肉は魔毒と呼ばれる血の代わりに魔物に溜まっている物を浄化するだけでそこそこおいしいため、戦場や冒険者にとっては貴重な食料となっている。


「いい匂いが漂ってくるせいで集中力が切れそうだよ・・・。」

「それではひとまず終わりにして、食事にしましょう。」


そういって空中へ跳ね上がり、残っていた魔物を全て蹴り飛ばして海の藻屑としていくリリムを見上げながら、串に刺さった鳥肉を受け取る。飛行魔法は使えないそうだが、空中に結界を貼りそれを蹴って跳び回ることで、下手な飛行魔法よりも素早い動きを行っているそうだ。


そんな戦闘技術もあるのかとノエルと共に関心したが、ルル曰く"普通は出来ないし飛行魔法を覚えるほうがいい"と言われてしまった。


「今はどのあたりまできているんだ?かなりの速度で進んでいるように感じるが・・・。」


シールが正確に風を操り、船はものすごい速度で進んでいた。普通なら5日以上はかかる航路だが、夜だろうと関係なしに進み続けていたこの船はすでに航路の半分を進んでおり、明日の朝には到着する見込みのようだ。


そして、そんな速度で進んでいるにも関わらず、周りの風をシールが整えてくれているおかげで船上は爽やかな風が心地よく吹いていた。


「魔物もそんなに強くないし、楽な船旅だねぇ。そろそろちょっと強い魔物でも出てこないかな?」


余裕があるからこその発言なんだろうが、何もないに越したことはないだろうに、竜神だからなのか子供だからなのか、刺激的な旅を望んでいるようだ。


そしてその期待に応えるように、海面が大きな音を立て水しぶきを飛ばし、ザリガニのような魔物と空中に浮いている魚が現れた。


「おぉ!これこれ!エビ?ザリガニ?おいしいかな?」

「魚の方はトビウオの魔物でしょうか?身がしまっていておいしそうですね。」


目の前に現れた魔物に対してずいぶんと呑気な感想を述べているが、今回に関してはまあ同じ感想を抱く。


トビウオの魔物はさきほどの鳥と同じく、攻撃が突っ込んでくるしかないため対処は簡単だ。ザリガニの方も大きな鋏で船を襲われたら破壊されかねないが、単純な物理攻撃のため結界を貼っていればその攻撃が通ることもないだろう。問題はやはり間合いをどう詰めるかだが、海上ならば海に氷の魔法を放つことで短時間だが氷の足場を作り出すこともできるため、さっきよりかは苦戦しない。


「船は私たちが守ってるから、グラ、頑張ってね。」


ルルが軽く手を振りながら結界魔法を発動する準備をする。結界は外から内へ物理的な進入を防ぐため、貼られた後では中に戻ることができない。そのため、危険を感じた時に即座に貼るようにはするが、それ以外の時はいつでも船に戻ることができるように結界を貼らないようにしてくれている。危険を感じたらすぐさま船へ逃げることが出来るので安心して戦うことができる。そしてこれも鍛錬だと思い、海面の一部を凍らせながらザリガニへと間合いを詰めていく。


トビウオが突っ込んできたりザリガニの鋏が襲い掛かってくるが、身体強化をしている今ならその速度を遥かに超えた動きを取ることができている。そしてザリガニの懐へ飛び込むように氷を蹴り上げ、その速度を活かしたままザリガニの右腕側の関節をめがけて短剣を突き出す。外殻はものすごく硬いのが見てわかるが、どんな生物も関節部分は装甲が薄くなっているため、ここを起点に切り裂けば上手くいけば腕ごと鋏を切り落とすことが出来るだろう。


「・・・と思ったんだけど、硬すぎるだろ!?短剣が砕けたんだけど!?」


ガキンッ!という金属音と共に、短剣の刃先が砕けて海に落ちていった。すぐさま壊れた短剣を懐にしまいザリガニの右腕に捕まる。そのまま腕を蹴り跳びザリガニの顔の前まできたところで、口の中に炎弾を叩き込む。さすがに内蔵はそこまで硬いわけもなく、魔法攻撃も苦手なようでザリガニは内側から燃え上がりながら悲鳴を上げている。


空中に身を放りだしていたため後ろから飛んできたトビウオの攻撃をまともにくらう位置になっているが、ここは結界ではなく防御魔法を展開しトビウオの突撃を受けた反動で距離を取り、ザリガニの攻撃を躱すことに成功する。


視線はそれてしまったがザリガニが火を消すために海に潜った音と気配は感じていたため、海の中へ探知魔法を打ちこみザリガニの位置を探る。


どうやらこちらの足元へ向かって移動し、襲いかかってこようとしているようだ。ザリガニが水中から鋏を振り上げ突き攻撃をしてきた所を、さきほどのトビウオの時と同じように防御魔法を展開した後わざと攻撃を受け空高くへと打ち上げられる。


「わざわざ弱点の口の中を向けてくれるなんてやさしいじゃないか。」


空へと打ちあがったグラを見上げるように上を向いてしまったザリガニの口元めがけて魔法攻撃を仕掛ける。選択したのは雷の魔法。右手から電撃が放たれザリガニの口元めがけて駆け抜ける。さらに続けて放たれた電撃に纏うように円柱状の氷弾と風刃の魔法が跳び回る。3種の合成魔法を食らったザリガニは体内から爆発を起こし、体は切り刻まれたり氷弾に貫かれたり電撃で焦げ付きながら海の中へと沈んでいった。


やはり1対1ならそれなりに戦えるなぁと思いつつ船に戻ったグラを待っていたのは、拍手と驚愕の声と怒号と紅茶だった。

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