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不死議な姉妹の旅物語  作者: 黒い星
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37話 苦悩の吉報

「エレナ、グラセナ。陛下がお呼びだ。執務室まで来てくれ。」


夕暮れも近い時刻、やっと起きてきたルルも加えて次にどこへ行くのかなどを談笑しつつ打ち合わせしていた。そんな中王妃ノエルが部屋へ入ってきてそう伝えた。


「執務室に来てほしいなんて、また厄介事の予感がするわ・・・。」


エレナがげんなりした顔でそう呟いたが、さすがに陛下の呼び出しを無視するわけにもいかず、すぐ戻ってくるから勝手にどこか行かないでとだけ伝えて部屋から出る。


「この時間に呼び出しとは・・・。バエル王国に動きでもあったんでしょうか?」

「その可能性もあるわね。いっそわかりやすく攻め込んできてくれた方が楽かもしれないわ。」


気持ちは分からなくもないが、実際に攻め込まれたら少なからず被害も出るだろうし、肯定するわけにもいかない。ただ何もせずに睨み合いが続くと言うのも、国境付近の兵士や民は疲弊し続けてしまうだろう。


だが、執務室で告げられた話は、まったく別方向の話だった。



「こんな時間にすまぬな。実はウアル連合国の第一王子が結婚したらしくな。」

「それは・・・また難しい話ですね・・・。」


王族が結婚したとなれば、各国からそれなりの立場の人間が式へ参加し祝辞を述べる必要がある。まして相手は貿易相手としても友好的な関係を築けている国となれば、王族か宰相が行く必要が出てくる・・・らしい。


普通ならば王妃にして宰相という立場のノエルが行けば済む話なのだが、隣国と緊張状態にある今、国軍の要にもなっているノエルを送り出すわけにもいかないと、どう手を打つか決めかねているとのことだ。


「こちらの事情を説明出来れば、アルマかグラセナのみの出席となってもウアル国王は納得してくれるだろうが・・・。」

「周辺貴族が納得しない可能性もありますね。貿易友好国だというのに、王子の祝い事にノエルも陛下も出席しないとなってしまっては・・・。」


しかも、アガレスで開かれたノエルとグラッセオの結婚には、はるばる海を越えてウアル連合国国王が直々に来てくれたというのだ。友好国ならばそのくらいはしてやらないといけないだろうと言い、周辺貴族が難色を示していた中で来てもらったのだから、今度はそれにお返しという形を取る必要がある。


「ノエル様にしても陛下にしても、どちらかが国を空けた時点でバエル王国は攻め入ってくる可能性が高いですね・・・。」


エレナという秘密兵器もいるし、スフラの町にいるエリアスも守るくらいなら協力すると宣言してくれたため、実際に攻め込まれたとしても勝つ見込みのほうが高いのは事実だ。


では何が問題なのかというと、アガレス王国の南西に位置するウォレフォル領域と呼ばれる場所に住んでいる者たちだ。


「今は睨み合っているだけだから目立った動きはないが、いざ戦争になったら連中は確実に動き出すぞ。」


ウォレフォル領域とアガレス王国の間には、大峡谷があるため殆ど交流もないのだが、バエル王国とは陸続きになっているため、ウォレフォル領域とバエル王国は友好的な交友があるという。


万が一戦争になった場合、北西から攻め込むバエル王国と、南西から攻め込むウォレフォルの民と、二面を一度に相手をしなければならなくなり、苦戦を強いられてしまう。


何より、ウォレフォルの民は普通の人間ではなく、異種族の者の集いであるため、戦闘能力も機動力も計り知れない。


「噂では竜麟の民もいるらしいからな。数も分からぬ竜麟の民を相手にしてしまえばエレナといえど敗戦する可能性がある。」


異種族とは人と各種族との混血の者たちを指し、竜麟の民とはその名の通り、竜の血を引く者たちを示す。竜麟の民の中で特に優れた者が竜神と呼ばれる訳だが、竜神に一歩及ばないにしても、近似の力を持つ者たちを何人も相手に取れる人間など限られている。


もちろんこの悩み自体はルルとリリムを味方に出来れば瞬く間に解決するのだが、基本的に戦争事には関与しない姿勢をとっているらしく、多少の協力はしてくれても、前線で戦ってくれることはないだろう。


「バエル王国に密偵を潜らせることは出来ているが、ウォレフォルの民は隠密の無の気配すら見抜くというからな。うかつに密偵を送ることもできていない。エレナ、グラセナ、ルルとリリムに依頼し、ウォレフォルの情報を入手してもらうよう頼めないだろうか?」


少なくとも、ウォレフォルの民がどういう動きを取るかだけでも判れば、まだ手の打ち様はある。だが現状アガレスの戦力では知る方法は無に等しいため、彼女たちを頼らざるを得ないのかもしれない。


打診してみますと伝え、彼女たちが残る離宮へと一度戻る。協力は得られないにしても、彼女たちの知識を借りることは出来るかもしれない。


海を越えて届いた吉報は、アガレスにとって頭を抱える問題となって燻っていた。

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