36話 リリムの適正と少ない黒
「リリム様・・・私ばかり狙っていたのはやはり魔導士だからでしょうか?」
「私怨・・・いえ、そうですね。やはり複数人での戦闘では遠距離攻撃が出来る者を最初に潰すのが基本です。」
一瞬本音が出たような気がしたが、気のせいということにしておこう。
壮絶な惨劇から一夜明け、現在は昼過ぎ。寝起きのリリムを捕まえて昨日の模擬戦に関して話をしている。
予定がない時は早起きもしないらしく、未だそれぞれの客室のベッドで寝ているルルとシールに加え、昼過ぎになってようやく目覚めたリリムを待っていては業務が滞るとノエルもアルマも本宮へと戻っていた。
「アルマ殿下の魔法を打ち消していたのは逆式結界でしょうか?」
「まさか。私は姉様ほどの技術はありません。あれは単純に同系統の魔法を放ち相殺していただけです。」
未だ寝間着姿で眠い目をこすりながらも質問にしっかりと答えてくれるリリム。中々扇情的な恰好になってしまっているため多少目を逸らしてはいるが、出来ることなら早く着替えてきてほしい。
「兄上は氷と炎の魔法が得意だと聞いていたのだが、同系統の魔法を放ったということは、リリムも同じ適正を持っているということか?」
実践で使用できる魔法は一部の天才を除き、適正のある魔法だけと言われている。もっともルルの妹にして同じような時間鍛錬に費やすことが出来たであろうリリムにそんな常識など通じないだろうが・・・。
「私の適正は光と闇だけですが、適正は所詮適正。ごく一部の専用上級魔法を除けば、初期能力と成長率の差程度のものです。」
普通の人間には適正外の魔法を鍛錬するだけの時間がないため、初期能力が高く成長しやすい適正のある魔法を伸ばす教育が一般的だが、長命種族の者たちは自分の好きな魔法を好きなように伸ばしているらしい。
「私は戦闘で使用される魔法は大抵使えます。ですが単発の威力はそれほど高くないので、闇魔法の一つでもある"増力"を自身と攻撃に乗せて闘っています。」
身体強化の魔法は文字通り身体能力を高める魔法で、筋力や瞬発力、人によっては聴力や視力なども強化できる魔法なのだが、そこに上級闇魔法の増力という魔法を重ね掛けしているらしい。
「増力は身体強化や武器強化などに重ね掛けすることができますし、魔法攻撃や詠唱速度にも効果を乗せることが出来るのです。ついでに、一度使用すれば効果が切れるまで一切無効化されません。私の切り札の一つでもあります。」
手の内を簡単に明かしていいものだろうかとも思ったが、聞き出したのはこちらで、知った所で対処方法など使用される前にどうにかするしかないらしいので、むしろ知らしめることで不要な戦闘を防ぐことすらあったらしい。
「リリム様は蹴りに魔法攻撃を乗せて闘ってましたよね?それは何か戦術的な意味合いがあるのでしょうか?」
魔法を普通に放つこともできるが、武器などに乗せることで武器そのものの破壊力に魔法の破壊力を上乗せできる。もちろんその分の間合い取りは格段に難しくなるのだが、そこは彼女の速度があれば問題にならないのだろう。
「はるか昔は剣に乗せたりしていたのですが、シール君が蹴りを主体にしたほうがいいと何度も言ってきたので300年ほど前からはこの戦い方にしてますね。」
「それは・・・何故なんでしょう?」
エレナの疑問は当然の話で、わざわざ剣から足に変える理由がわからない。剣が壊れる可能性があるというなら足も当然同じな上、壊れやすさも壊れた際の被害も足のほうが遥かに高い。何か深い理由があるのだろうかと思ったが、リリムが顔を少し赤らめながら説明した内容には、呆れてしまった。
「おそらく、私の衣服がスカートだからでしょうね・・・。狙いは言わずもがなです。なので私のスカートと下着に暗転の魔法を掛けて戦闘中は一切見えなくしているのですが・・・。」
暗転の魔法は術者以外に一定空間内の光を遮断する効果があるらしく、それで見えなくなるらしい。だがそんな魔法は聞いたことがないし光が無くても暗視の魔法を使われたら見えてしまうのではないだろうか?と聞けば、この魔法はルルが開発した物で、暗視をしても見えないと思うと言われたそうだ。少し自信がないのは人間の目と竜神の目が果たして同じなのかという点があるからだそうだ。
「僕も頑張ってみてるんだけど、スカートの中を覗けたことは一度もないんだよねー。お風呂とかは覗きに成功したことあるんだけど。」
そういって会話に参加してきたのは、やっと目覚めたらしいシールだった。ただ、リリムと違いしっかりと普段着に着替えていて、髪なども整っていた。
「たぶんこれを覗けるのは隠密系の絶対視力とかじゃないと無理だと思う。そういう意味ではグラっちなら覗けるんじゃない?」
そういってリリムに着替えて戻ってくるように伝え、普段着になったリリムが"どうですか?"と尋ねてきたが、絶対視力なんて使えないから判らないとだけ答えておいた。
思ってたより布面積の少ない黒の下着を身に着けていたため動揺が表情にでそうだったが何とかバレずにすんだようだ。




