35話 模擬戦のような何か
「模擬戦・・・ですか?」
「えぇ、そうです。私とノエルとアルマ殿下の三人でリリム様に挑みたいと思います。」
王都にたどり着き、さっそく食事をしようと店を選んでいたところにエレナに捕まり、そのまま離宮へと連れ去られた。
現在アルマ王子はグラの所へ向かっているらしく、戻ってきたら模擬戦を行いたいとのことらしい。互いの強さはもちろん認めているが、どれほどの実力があるのかまでは把握できていない部分も多いため、それを知りたいのだという。
「三対一で挑むのは騎士道に反するかもしれないが、貴女らの実力を鑑みればむしろこちらの戦力が足りないくらいだろう。物足りなさを感じさせるかもしれないが、受けてもらえないだろうか?」
ノエルとアルマがどれほどの実力者なのかは分からないが、幼いころより国王を守護してきたというノエルと、二人の英才教育を受けているというアルマなのだから、実力は疑うところもないだろう。問題はこれをリリムが受けるのかどうか。もし受けないのなら私が代わりに戦ってもいいのだが、それは逆にエレナが断固拒否すると宣言していたため出来なくなっていた。
「わかりました。その模擬戦お受けします。ただし、一つだけ条件があります。」
そういって少しばかり笑顔になりながら"徹頭徹尾全力でお相手させていただきます"と伝え、エレナとノエルを震え上がらせていた。
「さあ始まりましたアガレス王国模擬試合!実況は私シールと解説はルルさんにお越しいただきました!ルルさんよろしくお願いいたします!」
「え、えぇ・・・よろしく。」
アルマが戻ってきて共に地下闘技場へやってきたシールが、どうせなら楽しくしたいと言い出し、闘技場の外側にアガレスの騎士が観客のように集まり、どこからか取り出した椅子と机に音を拡散させる魔法具まで用意して仕切り始めた。
どこかの国ではこういった決闘が興行になっているらしく、アガレスの騎士たちも盛り上がっている。そして召使たちは食事を用意したり賭場を開いたりしている。リリムのことを知らない騎士たちはアガレスの三神が負けるわけないと三人に賭けている中、離宮の召使たちはこぞってリリムに賭けている。なかなかずるい賭場となっているとおもわず苦笑いしてしまった。
そして、興行をよく見に行っていたというシールが、その時の司会を真似しているらしい。ちょっと意外な趣味だけど、男の子だからそういうものなのかなと深く考えないようにした。
「今回、実況の上で出場者の方々を敬称略で呼ばせていただきますことをあらかじめご了承ください。さてルルさん、この試合どうみますか?」
「どう、と言われても三人がどれほど強いかは私もよく知らないのよね。ただ一つ言えるのならリリムが負けるというのは想像つかないわね。」
そして、小さな鐘が大きな音を立てて戦闘が開始された。
「おーっとエレナ選手!吹っ飛ばされ・・・ちょ、リリム!?」
「まあ、その後は想像通りだと思うよ。この回復結界だっけ?性能が優秀だったせいで何回吹っ飛ばされても回復しちゃうからなんというか・・・ね?」
口にするのもためらわれるような戦闘・・・という名の一方的に虐げられるだけの時間が過ぎていたようで、騎士たちはドン引きしながら賭場を立てた召使に文句を言っていたり、召使は召使で、やはりドン引きしながらお金の回収をしていたり片付けを始めていた。
「アルマ王子は魔法剣士だったのかしら?初撃で剣を粉々に蹴り砕かれてしまったせいで素手での戦闘になってしまったけど、リリムの動きに三割くらいはついていけてたわね。身体強化の魔法を使っている上で攻撃魔法を展開していく技術は素晴らしかったわ。」
「その攻撃魔法は全部打ち返されていたけどね・・・。」
アルマはグラッセオによく似た力強い肉体に、ノエルの剣術とエレナの魔法技術を習得しているというのだから、人類の中でもそうとう強いほうだろう。そんなアルマですらまるで手も足もでないのだから、残りの二人がどうこうできる話ではなかった。
「ノエルさんは17回蹴り飛ばされるだけで済んでいたわね。たぶんリリムとしてもよく知らない女性を攻撃するのに抵抗があったんじゃないかしら?逆にエレナは・・・エレナじゃなかったら何回死んでいるか分からない程攻撃されていたわ。」
エレナは一切攻撃魔法を展開することすらできず、ひたすら防御に徹するしかなかったそうだ。そしてその防御を力づくで貫き続けたというのだからとんでもない話だった。
思ったより戦えていたと言っていたが、いったいどこが戦えていたというのだろうか?
「そりゃもちろん、何十回とやられても立ち上がるその闘志を称えたんだ。僕だったら二回くらいで諦めて土下座してたと思うし。あと、展開していた防御魔法や攻撃魔法も正確だったし。・・・まあ実力差がありすぎたね。」
判断力や技術は素晴らしいが、そもそもの実力差がありすぎるがために結局一方的になったということらしい。
「私も久しぶりに全力で攻撃できていい憂さ晴らしが出来ました。あぁ安心してください。全力と言っても死なない程度には手加減もしましたから。さすがに死んでしまったら回復も出来ませんからね。」
「私は・・・生きている・・・?」
「俺の攻撃は・・・どこにいった・・・?」
いつのまにか復活していた二人が混乱しながらも現状の把握を始めていた。そしていまだピクリとも動かないエレナを見つけて驚愕していた。
各人の強さはこんな感じです。
グラ:対人の一対一ならそこそこ。
ノエル:スゲェ
アルマ:ヤベェ
エレナ:パネェ
リリム:トンデモネェ
ルル:神




