34話 報告
「おかしい・・・僕たちは確か王都に戻った途端食べ歩きを始めた姉妹を探していたはずなんだが・・・。」
「安心しろ。すでにあの姉妹はエレナ殿が拉致・・・保護して王宮へ連れて行った。」
シールは王都が初めてだったらしく、色々案内しながらルルとリリムを探していたのだが、道中どこからともなく現れた第一王子にして兄でもあるアルマに捕まった。
「兄上は何故ここに?」
「グラセナの気配を感じたのでな。エレナ殿に転移魔法を使用してもらい近くにきたのだ。」
あぁそうだ。この兄は何故かこちらの居場所が分かるんだった。それが魔法ではなく愛だと言っているのだが、できれば魔法であってほしい。
「王子様はグラっちのことが好きなの?」
「愚問だな。同性に生まれてしまったがために子を成すことができないのを悔やんでいる程度だ。いやまてよ・・・身体的特徴を女の物にすればグラセナも孕むことができるのではないだろうか?」
「お願いですから往来でそのような発言は慎んでください。いえ、往来でなくても慎んでください・・・。」
とんでもなく物騒なことをつぶやき始めた兄に呆れつつ、王宮へと足を運んだ。門番の衛兵が哀れみに満ちた目をしてこちらに敬礼していたが、それに反応する元気もなくなってくる。
「・・・・・・報告は以上となります。また、リュフカの衛兵にも同様の説明をしております。」
ここは王宮内謁見の間。国王の他に複数人の臣下がおり、遺跡のことを報告した。ただし、シールの事は特に話してはいない。必要がないというのもだが、竜神が身内にいることをわざわざ明かしたところで面倒事しか起きないだろう。そう判断し、シールは現在離宮にて姉妹と共に待機してもらっている。
「ふむ。グラセナ様、本当に遺跡はこのままでも平気だと判断しておられるのでしょうか?いえ、あなたの判断を疑うわけではございませんが、リュフカの町は軍や傭兵を配備しないことで他国からの警戒もされていない土地。であるならば、非常の際はわずかな警備の者のみで対応させなければならなくなる。」
リュフカは重要な観光名所なため、そこを守る警備は当然優秀な面々が揃ってはいるが、魔物が大量に出てしまったら確かに対応しきれない可能性が高い。だがそこはルルによって故意に扉が開けっ放しにならない限り問題ないと言われているし、扉が開いた時はリュフカの警備所に信号が送られるようにしてあるため、手遅れになるほど対応が遅れることはまずないだろう。
「遺跡の情報を傭兵所へ渡し、冒険者が訪れるようになれば周辺の魔物への対応は問題なくなるでしょう。むしろ、盗掘の類や粗暴な冒険者への対応のほうが人手不足になるかもしれません。」
遺跡に挑もうとする冒険者は大抵それなりに実力も名誉も持っている者が多いため、実際町に害を成すような輩がそれほどいないだろう。むしろ、訪れる人が多くなるのだから宿や食事処の手配のほうが必要かもしれない。
「ふむ。町の外に新に傭兵所と、冒険者を泊めるための宿を作るよう手配しろ。遺跡へ続く道の整備も行い巡回しやすくしておけ。グラセナ、他に報告がないのであれば離宮へと向かえ。」
国王がそう告げると、臣下たちは急いで対応に向かった。本当にこの方は謁見の間で会う時と家族だけで会う時とでしゃべり方も雰囲気も何もかもが違う。別人なのではないかと疑いたくなるほどに。
そして、偉大なる国王に背を向け謁見の間を後にした。
そして離宮へたどり着き、エレナに挨拶をしに行こうとしたところで召使の一人に"エレナ様は現在地下研究所にいます"と伝えられそちらへと足を運ぶ。おそらくはそこに残りの三人もいることだろう。
「それで・・・死体が3つほど転がっているように見えるんだけど、これは何があったのか教えてくれないかシール。」
「思っていたより強いねあの人たち。結構びっくりしたよ。」
「そうね、確かに想像以上に戦えていたわ。」
事情を聞くために近くに腰を下ろし耳を傾ける。どうやら国王への報告を行っていた間、ここで戦いがあったらしい。




