32話 封印されし神具
「中々とんでもないものが眠っていたわ!」
制御室を飛び出してから1時間後、青の魔剣が光りルルが広間へと戻ってきた。そして開口一番目を輝かせながらそう叫び、一辺がルルの肩幅ほどある正方形の紙を見せてきた。
「これは・・・世界地図ですか?」
描かれている物は茶色だったり青だったり緑だったりと様々な色で着色されており、パッと見た感じだと何が何だか分からなかったが、リリムの一言でこれが何なのかを理解した。
だが、これがとんでもないものだというのだろうか?確かに古代遺跡にこれほど着色された地図があるというのは珍しい。というか、世界的に見ても中々ないだろう。だが、それがどうすごいのかは、せいぜい作成が大変だっただろうと感じる程度だった。
「この遺跡の設計図を眺めていたら、グラが感知した部屋の一つが記されていないことに気が付いてね。制御室で正しい魔法式を打ち込むことで隠し扉が開く仕組みだったのよ。解読にちょっと苦労したけど、何とか扉を開いて隠し部屋に行ってみたら、まあすごい物が隠されていたわ。特にこの地図よ!」
そういってルルはいくつか持ってきた物を広げ始めた。3つある指輪はそれぞれ、水中で永遠に呼吸が出来るようになる物、自動的に魔法を防御する障壁を展開する物。自動で物理的な攻撃を防御する結界を貼る物と、分かりやすく協力な魔法具だった。少し大きめの盾は、触れた物を魔法だろうと人だろうと跳ね返し飛ばす魔法陣が刻まれているらしい。そして視界を失うことがなくなる特殊な形をした眼鏡に、水圧に潰されないようになる魔法陣が刻まれている腕輪まであり、これらを隠した人の目的は、間違いなく深海探索なのだろうと容易に想像がついた。
「そっちもすごいかもしれないけど、こっちの地図なのよ!地図!」
「姉様、それは詳しく説明して頂かないとすごさが伝わりにくいです。」
ルル曰く、これらの深海探索の魔法具は普通に魔法で発動することも出来るらしく、実用性は高いものの術式を解読し習得すれば不要になるような物でもあるという。水中探索専用の2つはともかく、残りは普通の冒険などでも役立ちそうなものだが・・・。
「確かに色付きの世界地図って国宝級の物かもしれないけど、なんか古代の秘宝的には地味だよね。」
「かなり精密に書き込まれているのがすごいとか、そういう話なのかい?」
「魔力が蓄積されているのを感じますね。てことはこの地図は魔法具・・・?」
興奮した状態で中々説明を始めないルルに痺れを切らし、それぞれ何がすごいのか考えてみたが、何故ここまでルルが興奮しているかまでは考えが及ばない。
「ふふ。見ててね。こうやって地図に掛かれた所に触れると・・・ほら!」
4人で地図をのぞき込みルルが触れた途端、触れた所が拡大され、さらに地名などの表記も出てきた。
「これはね、こうやって触れることで拡大や縮小が出来るのよ。それに表示された名称に触れると、簡単にだけど、町や土地の説明が表記されるのよ。」
そういってルルはアガレス王国と表示された部分に触れた。浮かび上がってきた文字は"大陸の魔を滅ぼした英雄アガレスによって開拓された土地。東西北を山に囲まれた王都"と記載されていた。
「おぉ!すごいや!っていっても、本当に簡単にだね。町入り口の看板に書かれている程度の内容だね。」
「それでも知らない土地などもありますし、そこの情報をこうやって知ることが出来るだけでも素晴らしいですね。」
そういってリリムが触れたのはウアル連合国の部分だった。ウアル連合国は古代、いくつかの領があるだけで国としての体を成していなかったが、英雄ウアルがそれらの領をまとめ上げ一国家に築き上げたと記されている。学術書などに記載されている内容と同じだったため、学問を修了している者なら知っている内容ではある。
「お?竜神の遺跡なんて者がある!どんな所なんだろう。」
シールが触れた場所はおそらく神話の遺跡なのではないだろうか?これが作られた時代が古代であるなら、まだここの遺跡などは、研究所などといった記載になるだろう。
「竜神の遺跡・・・神が世界を創造し支配していた時代に世界中の竜神が集まり神を自らもろとも封印した遺跡・・・。なんだこれ?」
「おそらくだけど、どこかの書庫とこの地図が繋がっていて、そこにある書物の文章を持ってきているんじゃないかしら?だから、神話の遺跡に関してはおとぎ話みたいな表記になっているのだと思うわ。」
なるほど、一体どんな技術を使っているのか、どこの書庫なのかもまったく見当がつかないが、おそらくはこの遺跡と同じくどこかの地に封印されているのだろう。
仮に中の書物が失われたらこの説明文も消えるのだろうか?などと考えていた時、ふと何かが引っかかるような感覚が脳裏を襲った。そして考え込んでいるとルルが悪戯っぽい笑みを浮かべて話し始めた。
「グラに一ついいことを教えてあげるわ。制御室の中には、この遺跡に入ってきた人の情報やいつ入ってきたかの日付が記録として残されていたの。一番新しいのが当然私たちなのだけど、その前の人が最後に訪れたのはおよそ1200年前。間違いなく古代に生きていた者が最後、つまりこの地図はそれより前に作成されていた物になるわ。」
「ほえー・・・すっげー・・・。そんな昔にこんな色付きのすっごい世界地図作れるのか・・・。古代の失われた技術って奴はすごいねぇ。」
シールはそんな呑気な感想を述べていたが、それがもしこれが本当にそんな昔に作成された物であるなら・・・
「なるほど・・・ルルが目を輝かせるのも少しわかった気がするよ・・・。ウアル連合国が連合国となったのはおよそ400年前、それ以前にウアル連合国なんてものは存在していないし、英雄ウアルも生まれてすらいないだろう。」
「そう!つまり、この地図は・・・。」
「未来予知できる人が作ったってことか!?」
シールの的外れな答えに三人でずっこけてしまった。もしそうならそれはそれですごいことだが、そんな未来の地図など作る理由はないだろう。
「シール君、今のは中々面白い回答でしたね。ですが違います。この地図は"生きている"のです。そしてこの地図と繋がっている書庫も同じく。時代が変わり、名前も変わっていく世界の名称を残すのであれば、その都度作成し直さなければならないはずなのに、この地図はその作り直しを自動で行っている。ということですよね?」
ルルに確認を取るようにリリムが尋ね、小さく頷いた後に地図を上に掲げ、感慨深そうに呟いた。
「人の技術でこんな物作るなんて不可能だわ・・・。空よりももっと高い場所から世界中を観察し続けて、戦争の跡地や噴火して形の変わった山なんかも細かく描かれ続けているなんて・・・まるで神の所業・・・神話の地図とでも言おうかしら。」
研究者気質のあるルルにとって、神話の道具への興味は尋常ではないらしく、そんな物を手にしたら100年は引きこもって研究し出すとリリムが言っていた。
iPadでg○○gleストリートビューを見ているような感じだと思ってください。




