26話 遺跡の種類
「私・・・死んだらここに墓を建てます・・・。」
「馬鹿なこと言ってないで、宿に行くわよ。」
辺り一面見渡す限りの畑で栽培されているのは、砂糖の原材料らしい植物。この白い花の花弁を乾燥させ粉状にしたものがこの国名産の砂糖らしく、終わりが見えないほど広がっている花畑からはとても甘い香りが漂っていた。
そして、そんな中で呆けたように座り込み虚ろな目で謎の宣言をしたリリムは、ルルに頭を叩かれ自我を取り戻したようだ。
宿は傭兵所の紹介もあってかなり上質な所を押さえることができた。二人利用の部屋を二部屋押さえてもらい、片方にはルルとリリムが、もう片方はグラが一人で泊まる予定だったがそこにシルフィードが加わり丁度二人ずつの宿泊となった。
そして、姉妹の部屋へと4人で集まり、明日から始まる遺跡調査の打ち合わせを始めた。
「古代遺跡と言っても、その種類はいくつかあるわ。まず一番やっかいなのは神話の時代から残っている遺跡ね。これは正直私たちでも手に負えないからそんな代物だったら周辺の土地ごと纏めて封印するわ。それと何かの研究所だった場合、これは入り口から制御室まではそれほど距離はないのだけど危険な研究をしていた場合同じく封印するわ。」
遺跡の種類には大きく分けて5種類あるらしく、まずはその種類の説明と対処に関して話を進めていく。神話の時代からある遺跡は、全ての竜神が集まり力を合わせることで突破できるなどと言われているほどの場所であり、まさに神の領域と言える場所らしく、周辺を封印し立ち入り不可にするのがやっとのことらしい。
研究所だった場合は言わずもがな、死者蘇生の研究を行っていた人もいるらしく、そんな危険な場所であったら封印するより破壊してしまうほうがいいのではないかと思うが、殆どの遺跡は壁に魔力網が貼られており、破壊などに対してすさまじく高い耐久力を誇るそうだ。つまり、結局同じように立ち入り不可にするしかない。
「一番楽なのは避暑地であったり休息地、つまりは別荘として建てられた場合ね。これは危険はせいぜい中の魔力量次第で魔物が出てくる程度だから問題ないのだけど、立地的にあの遺跡がそうである可能性は低いわ。逆に可能性が高いのは、制御室に大切な何かが封印されている場合ね。道具だったり武器だったり色々あるけど、まあ冒険者が挑む遺跡と言われて一番最初に思いつく種類よね。」
おとぎ話の中では邪神が封印されていたり、英雄の剣が封印されているような遺跡が実際にあるという。だが大抵は戦場などで活躍した者の武器や防具などが悪用されないように封印するために建てられた物だという。
「それと、建設者の趣味で作られた遺跡。大きく分けてこの5つよ。」
特にこれといった目的もなく、強いて言うならば遊び場のような感覚で作られた遺跡もあるらしく、これに関しては即死級の罠こそないがそこら中に罠が仕掛けられている上に踏破したところで手に入るのは魔物の素材と記念硬貨のようなものだけらしく、酷い時には何も得るものがない場合すらあるそうだ。
「見分け方としましては入ってすぐに、広間があり守護者らしき者がいる場合が神話の遺跡、警報や罠が発動した場合は研究所、試練内容であったり何かしらの案内がある場合は趣味で建てられた遺跡の可能性が高いでしょう。」
残りの避暑地か封印の遺跡だった場合は特に何もないのだが、避暑地はわりとすぐの場所にも部屋があり罠が殆どないためそこで見分けがつくそうだ。つまり、どの種類の遺跡だったとしても外見から判断こそつかないが入ってすぐに判断がつくそうだ。
一通りの説明を受けて、4人の中で唯一遺跡に近づいたことのある竜神シルフィードが口を開く。
「封印壊しちゃった時に中を少し覗いたんだけど、今の話を聞く限りだと封印の遺跡かもね。どんな武器が封印されてるんだろ?」
「期待しすぎるのも良くないわよ。昔一度だけ遺跡に入ったことがあるのだけど、そこに封印されていたのはただの恋文だったり下手な詩集だったりもしたから。封印しておきたい気持ちは分からなくもないけどね。」
そんなものをわざわざ遺跡を建ててまで封印しなくてもいいのに・・・。遥か昔の人たちが何を思っていたのかなど分かりようもない。というか、さりげなく言っているけどそれを知っているということは遺跡を踏破したことがあるということなのではないだろうか?
「傭兵所などの然るべき組織に認知されていない遺跡も多く残っていますし、少し心得があれば踏破できるような簡易な場所はそもそも古代遺跡として認められていない節がどこの国でもありますね。」
「私たちが行った場所も封印が厳重だっただけで、中は何もないに等しい遺跡だったからねえ・・・。」
彼女たちがどこの遺跡を踏破したのかは分からないが、少なくとも踏破すれば英雄と崇められるほどの遺跡に足を踏み入れたことはないらしく、経験不足という点でどうしても不安を拭い切れないまま遺跡の調査へと向かうことになりそうだ。




