17話 消えた魔物
「竜神様の祠・・・ですか?」
リリムがエレナを背負い、ルルがグラを背負い、自分も一緒に行くと言い出したコロンを抱えながら、とんでもない速度でスフラの町へと向かっている途中、コロンが言い出した。
「うん。みんなそこにいるの。りゅーじんさまが、みんなを守るからって、そこに呼んだの。」
コロンが言うには、町自体は壊滅的なほど崩れているが、ほとんどの人は魔物が来る前にその祠へ逃げ込むことが出来たため無事とは言えないが生きているとのことだ。
「竜神様の祠というのはわからないが、町人のほとんどが逃げ込める場所となれば、おそらく笛吹の洞穴のことだろう。」
海から吹きこんでくる風が洞穴の中を巡り外に出る際に音がなるらしく、それが笛のようだということから笛吹の洞穴と呼ばれているらしい。そこならば場所は分かるとグラが言うため、ひとまずはグラの指示のもとに笛吹の洞穴を目指す。
だが、リリムもルルも前へ進む速度を少しずつ落としていった。体力が切れたのではなく、突然止まってしまうとその衝撃が3人に伝わり、思わぬダメージを与えてしまうかもしれない。そのために少しずつ速度を落とし、完全に停止した場所の丁度目の前に魔物の群れが広がっていた。
通り過ぎながらの爆撃か何かで、この程度の魔物は消し飛ばすことも容易ではあるのだが、道を塞ぐ魔物の異形さを調べるためにも一度足を止めて闘うことを選んだ。
「どの魔物も魔力反応が歪ね。召喚術によって使役されている魔物のようだけど、これほどの量を操るのは普通じゃないわね・・・。」
「私やルル様リリム様の魔力量を足して、やっとこの一面の数を操れる程度でしょうか?この先の道や町にも魔物が残っているのなら・・・」
「竜神様の仕業・・・ということだろうか?」
竜神とはそれぞれの系統の魔法を極め、膨大な魔力量を誇っている存在である。もしこれが竜神の仕業だというのなら、この先に待ち構えているのは闇の竜神ということになるだろうか。
「立ち止まっておいて何だけど、ここであれこれ考えるよりさっさと目的地にたどり着いてしまったほうがいいわね。」
ルルがそう言い切った瞬間、陸も空も隙間が見えないほど埋め尽くしていた魔物達が一瞬で消えた。いや、倒されたというべきだろうか。
グラは唖然としながらも、エレナが両腕を振っていたのを視界に捉え何とか状況を理解した。だが、グラの考えよりも数段階ズレたことが起こっていたらしい。
「私が消し飛ばそうと思ったのですけれど、ルル様?今のはどの系統の魔法ですか?まったく気配も何も感じなかったのですけれども?」
「ふふ。ただの爆炎魔法よ。単純な威力だけで言うなら、エレナのほうが高い威力で撃てるわ。」
「爆炎なんて何も起きていないんだが!?」
魔法の威力は魔力をどれだけ魔法に乗せることが出来るかで変わり、単純な魔力量だけでいうならばエレナのほうが遥かに多いため威力だけはエレナのほうが上らしい。
だが、これだけの数が音もなく一瞬で消えたため、幻影でも見ていたのかと疑いたくなってしまう。だが、ルルもリリムもただの爆炎魔法で消し飛ばしただけだとしか教えてくれず、答えの分からぬまま先に進むことになった。
「確かに魔法が撃たれた形跡は残っている・・・ルル様が予備動作も一切なく無詠唱でこれだけの魔法を撃てるのは当たり前として、音も何も出さすにやるには・・・。」
エレナがぶつぶつと呟きながら考察をしている。アガレスの魔法神は騎士として軍に入ったが、妾になった後はひたすら魔法の研究をしていたため、研究対象を見つけるとひたすらに没頭してしまう癖がついてしまっていた。
そして、王族専用の書庫で手に入れた情報や"リリムの記憶"を頭の中に展開し続け、答えにたどり着いた。
「もしかして、逆式結界・・・ですか?」
「あら?思っていた以上に早く当てられたわね。その通りよ。逆式結界を貼って、爆炎魔法を打ち、消音と消火の魔法を重ねたの。」
通常の結界は外から内への攻撃などを防ぐもので、それが逆式ということは内側から外側へ攻撃が一切漏れることのない結界が出来上がるということだ。敵の体ごと囲ってしまえば逃げ場のない攻撃が結界内で暴れ続けることになるため、最高の防御魔法でもあり、究極のカウンターにもなる。
「答えにたどり着くことは出来ましたが・・・これは真似できそうにありませんね・・・。難易度が高すぎます・・・。」
世界有数の魔法技術を持っているエレナですら諦めるような難易度の魔法をいともたやすく扱い見せたルルは、天才なのかという問いに対してはいつも通り、何百年も鍛錬をしたから出来るだけと答えたのであった。




