16話 襲撃された町
「姉様が見つかったのですか。」
リリムと母はあの後も話続けていたらしいのだが、さすがに付き合いきれなかったため先に休ませて貰っていた。そして日も明け、特に任務もなかったためルルでも探しにいこうかと思った矢先に急報が飛び込んできた。
スフラの町が魔物に襲撃されていると。相手は魔物と人間の混成軍だというのだから意味がわからない。負傷者数不明、被害状況はかなり酷いということしかわっていないそうだ。そして、スフラから逃れてきた少女が傭兵所にて保護されており、その傍らに金髪の女性・・・特徴から察するにルルがいるとのことだ。
「事情はわかりました。すぐに向かいます。」
「わ・・・たしも・・・行く・・・わ・・・。」
何がどうしてこうなったのか。ここは離宮の地下闘技場という名の母特性魔法研究所だそうだ。そしてボロ雑巾のようになりながら地面に突っ伏している母も共に向かうというのだが、その状態では生きているのかすら怪しく思えてしまう。
かと思ったが、突如光に包まれたかと思ったら服も体も傷一つない状態に戻っていた。そしてその謎の現象をリリムが説明してくれた。
「狭範囲回復結界。姉様が理論を組みエレナが完成させたそうです。この中にいれば死なない限り回復できるというものです。昔、エレナを鍛えるために理論を組んだのですが、うまくいかず諦めていたのですが・・・。」
「空間設置型ではなく地面に魔法陣を埋めた結界型にしたらうまく起動できたのよね。最もリリム様の愛・・・もとい修行を受けて即死しない人など限られているでしょうけど。」
理解の及ばぬ話に思考を取られるよりかは、スフラをどうするかについて考えるほうがいいだろう。グラは人外魔境に属する二人を引き連れ傭兵所へと向かった。
アガレス王都傭兵所。ここに集まるのはアガレス王国に所属している傭兵や冒険者。各所から上る依頼をこなし報酬を得る者や、近隣の魔物討伐、遺跡の調査などを行っている。そして今はスフラへと向かう人員を集めているところだった。
傭兵所内に通され、ここで待つよう指示された部屋の中にルルと、もう一人少女が座っていた。
「ルル様、お懐かしゅうございます。エレナです。」
「エレナ!?久しぶりね!そういえばあなたこの国の貴族だって言っていたわね。コロン、この人たちは私の妹と、仲間と・・・えっと・・・知り合いよ。」
若干言葉に詰まるルル。妹は当然リリムのことで仲間とは僕のことだと思いたい。そしてやはり母との関係性はよくわからない状態のようだ。
コロンというらしいこの少女は、スフラから王都まで歩いてきたという。にわかには信じがたいが、スフラの現状を鑑みれば子供がそんな無茶をすることもあるかもしれない。
「私はこの子に助けてとお願いされたから、この後スフラへと向かうわ。あなたたちはどうする?」
こちらを見て意見を伺うルル。リリムの方を見ないのは聞かずともリリムはついてくると分かっているからだろう。当然僕も行くし母も向かうと言う。
立場的には母が向かうべきではないのかもしれないが、襲われたのが昔と同じスフラの町であるならば事情を知っている母は僕らでは気づけない何かに気が付くかもしれない。
先ほどまでとは違い、いつものお淑やかま感じで母は話し始める。どちらが本当の姿なのかはわからないが、おそらくこのお淑やかな状態は外行の顔だろう。この部屋には自分らしかいないが、アガレスの魔法神を一目見ようと廊下に人が集まっているのを感じる。そんな中で弾けた話し方をしてしまえば、いろいろ問題が起こるかもしれない。
「問題は人と魔物の混成というところですね。魔物を使役する魔法は確かに存在しますが、かなり上位の魔法のはずです。敵の中に術者がいるのならばここの傭兵たちが戦わないようにしたほうが賢明でしょう。私たち3人の誰かが見つけ次第倒しに行きましょう。」
「エレナ、あなた戦えるの?いえ、そうね。リリムの記憶を転写しているのだから多少は強くなってて貰わないと困るわね。」
「大丈夫です。姉様。最悪私がエレナもろとも消し飛ばします。」
そんな作戦会議とも言えない会話を終わらせ、4人でスフラの町へ向かう。




