15話 月下の巡り合わせ
「さて・・・どうしようかしら。」
王都にたどり着いたのが夕刻。そしてそこからひたすら食べ歩き続けて気が付けば営業している店が殆どなくなってしまっていた。半分に欠けた月灯りの元、広場の噴水前に座りつつ焼き鳥を頬張り、ルルは悩んでいた。
出てくる料理の全てが美味しく、欲望の赴くままに進んだ結果本日の宿も取れず、日中は暖かくなってきたとはいえ夜間は冷え込みがまだ激しい中寒空に取り残されていた。
「リリムが宿を取っているかしら?グラは王宮にでもいるのかしら?王族らしいから、頼めば一晩くらい泊めてくれないかしら?」
誰に言うでもなく淡々と呟く言葉に返事はない。ルルは一人でいること自体は特に気にしないのだが、リリムが万が一にでも一人になってしまっていたらと思うと大変なことになりかねない。本当ならすぐにでも探しに行きたいのだが・・・
「この子を放っておくわけにもいかないわよね・・・。」
どうもルルは子供に好かれやすいようだ。今、彼女の腿を枕に寝息を立てているのは10歳くらいの女の子。この広場で焼き鳥とお酒を堪能していたところに突如として現れ腹の虫を鳴らしただし、手持ちを分けてあげれば喜々として食べ始め、気が付いたら満足そうに眠っていた。
服もボロボロで体中に傷をつけたこの少女に関して、名前も事情もわからないが一つだけわかることがあった。褐色の肌に、傷んだ白い髪、そして微かに香る磯の匂い。この子は王都南に広がる海辺の町の子だろう。
「海辺の町・・・確かスフラと言ったかしら?あそこからここまでは結構な距離があるわよね。道は舗装されているだろうから歩いてこれないこともないだろうけど、それにしても・・・よね。」
せめて宿が取れていれば、この子をベッドに寝かすこともできたのにと少しばかり自身の行動を後悔しつつ、宿を取っていなかったからこそこの子を救えたのだと自分に言い聞かせ夜更けを待つ。そろそろ日を跨ぐ頃だろうか。王宮の方角にわずかな明かりこそ見えはするが、そこに行ったところで休めるわけでもないだろうと、噴水の水の音を子守歌に眠りについた。
助けて・・・タスケテ・・・嫌・・・イヤ・・・!
「来ないでぇ!」
うなされ、叫び声と共に目覚めた少女は、歯をカチカチと鳴らしながら乱れた呼吸を整え、夢であることに安心をした。
日がわずかに顔を出している。記憶では夜にここへたどり着いていたのだから今は朝だろうか?幼いながらに必死に状況を把握し、うっかり枕にしてしまっていた女性へ静かにお辞儀をして歩き出そうとした。
「こんな時間に動いても、どこの店も開いてないわよ。」
まさか起きているとは思わずびっくりして転びそうになったが、すぐに声の方へ振り向き凝視する。
昨夜、焼き鳥をくれたこの女性は、眼を開けることもなく話しかけてくる。
「私もどこかのお店があくまで退屈なの。よかったらお話ししない?」
片目を開けて優しく微笑み話しかけてきた女性は、なんとなくこの人を頼れば大丈夫だと感じさせた。そして、その安心感からか・何日も歩き続けた疲労からか思わず涙を零して倒れてしまった。慌てて抱き寄せてくれた彼女はとても暖かく、やわらかかった。




