14話 二人の出会い 魔法神の力
「くっ・・・重力魔法ですか・・・しかも横向きに・・・!」
重力魔法・・・通常は上から下へ押さえつけるだけの魔法だが、横向きに発動させることでリリムを引っ張ったようだ。最も、そんな芸当ができるのは母とこの姉妹くらいなものだろうけれども・・・。
「私もリリム様を超えるため、日々努力していますの。」
「魔法技術に関してだけは一流ですね・・・。」
何かを諦めたかのようにふぅっと息を吐き、リリムは椅子に座った。山中で熊との闘いを見たりした限りではリリムはとんでもない超人だと思っていたのだが、そのリリムをこうも容易く従わせるとは、母もまた人の枠組みを超えていると認識を改めさせられた。
「うふふ。さて、何からお話ししましょうか。話したいことが沢山あって決められないわね。あ、そうだわ。グラ、あなたの疑問に答える形で話をしてみましょう。」
「それなら、お二人の師弟関係についてお伺いさせ「師弟ではありません。」
突然話を振られながらも、真っ先に出てきた疑問をぶつけてみたのだが、言い切る前にリリムに遮られてしまった。
「エレナは、彼にどこまで伝えているのですか?」
「特には、何も伝えていませんわ。」
彼女ら二人の関係を話す上で何か重要な情報があるらしく、それをグラへ伝えているのかどうかで、どこから話すかが変わってくるようだ。そして、何も伝えていないことを聞き、まずはエレナのことから話し始めた。
「エレナは、魔力量も魔法技術も優秀なのですが、彼女の最も異端な力は"記憶の転写"が出来るというところです。」
魔法神と呼ばれるくらいなのだから、魔力量も多いのは理解できるが、記憶の転写というのは聞いたことがない。
「私も、そんな力を持っているなんて子供の頃は知らなかったのだけれどもね。今から28年前、当時9歳だった私は海外へ短期留学をしていた時にリリム様に出会ってね、そこで、リリム様とルル様にこの力を覚醒させてもらったの。」
「触れた相手の記憶を知ることが出来る力。それは相手の知識であったり、秘密であったりを知ることが出来る力・・・。当時私と姉様は彼女に何か秘めた力があると気が付き、興味本位ではありましたがそれを覚醒させました。そして彼女はその力で私の記憶を転写し・・・、その場に倒れ込み血を吐き高熱にうなされ7日間ほど生死の境をさ迷っていたのです。そのまま死ねばよかったのに生き返ってしまった彼女は私の記憶を利用し様々な力を身につけたという次第です。」
さらりととんでもない毒を吐くリリムに対して、やはり素知らぬ顔をしながら母が話を続ける。
「数秒触れただけで何百年分もの記憶が一気に入ってきたのだもの。大変だったわ。それでも、それだけの年数を掛けて知り得た知識を9歳の時点で身に着けることができたのだもの。さすがに、魔法戦闘となったらルル様はもちろん、リリム様の足元にも及ばないのだけれどもね。」
そんな訳で、リリム様は私の師匠なのだと叫ぶ母とそれを否定するリリム。気が付けば給仕をしていた召使は紅茶だけ入れて部屋から出て行っていた。
それはさておき、母がそんな力を持っていたことなど知らなかったが、話を聞いてこの離宮から殆ど外出しないのも理解できた。触れただけで相手の記憶を知ることができるなんて、そんな力を持っていると知られたら誰にどう利用されるかわかったものではないし、母自身そういった使われ方にひどく抵抗があるのだろう。そして、出陣の際に母が常に単騎だったというのもその力のせいだろう。想像もできないような苦痛と苦悩を抱え、それでもこれほど優雅に生きている母の強さは見習いたい。
話す力に勢いがついたのか、その後も二人は日を跨ぐまで喋り続けていた。そんな話の中で、何百年か前にも一度この国へ訪れたことがあり、その時の国王が今の僕に見た目も魔力反応もそっくりだったため僕が王族ではないかと気が付いたと伝えられた。そして、山の麓で待ちぼうけしている際にそんな話をルルともしたらしい。最もルルはこの国へは1度も来たことがなかったため王族であることにはピンとこなかったらしい。後は、リリムが実は甘いものに目がないとか、小説のような物語が好きだとか、そんな他愛もない会話を繰り返していた。
余談ではあるが、リリムが母のことをこれほどまでに嫌悪している風な態度をとるのは、母が留学中、ルルにベタベタしていたことによる嫉妬らしい。ルルの記憶も転写しようとしていたのか、あるいは単に好いていただけなのかは不明だ。ちなみにルルの記憶は転写できなかったらしい。能力が覚醒した時点ですでに転写を防ぐ術式を開発し自身に掛けていたというのだから、やはりルルは格が違うようだ。




