12話 王都道中の雑談
「王都だというのに、道が余り入り組んでいませんね。」
通常なら王宮へと続く道が一本道などありえないと訝しむリリム。これでは敵に攻め込まれた際、王宮まですぐにたどり着いてしまう。だがアガレス王国は東西北を山に囲まれ、南側に国は無く海が広がっている。そもそもここまで攻め込まれることを想定していないということだろうか。
「アガレス王国は民こそ国の資本。それを思想に掲げていてね。ここで戦われてしまってはその民に被害が広がってしまう。それならばさっさと王宮まで来てもらって、こちらの戦場で戦ってもらうほうがいいという考えなんだ。もちろん、それだけの精鋭騎士を揃えている。他国へ攻め入った歴史こそ無いけど、侵攻をそうやって何百年も防いできたらしいよ。」
現在、グラとリリムは王宮へ続く道を真っすぐ歩いている。本来ならばこれほどの美男美女が並んで歩いていれば、すれ違う人々も振り返り見惚れてしまうだろう。だが、見惚れる人はおろか、二人に気が付いている人すらいないだろう。
隠密系の認識阻害の魔法は近くにいる人にも効果があると、グラが説明しかけようとしたところで、そのくらいなら自分も使用できるとリリムも自身に認識阻害の魔法を掛け歩き出した。
魔法というのは多種多様に存在するが、それぞれに適正が無ければ使用できるのはせいぜい子供でも使えるような初期の魔法だけのはずなのだが、まあ1000年以上鍛錬しているというのならその程度の常識など通じるはずもないと苦笑する。
「君たちは逆に使えない魔法とかはあるのかい?」
お互い沈黙が苦手ということもなく、黙って歩くだけでも問題ないのだが、それでもグラの興味は尽きない。ルルは教え子に学ばせる教師のように、リリムは表情や仕草は特に出さす淡々と、だが嫌悪することもなく答えてくれるため、少し時間が空けばすぐ質問をしてしまっていた。
「そうですね・・・。私も姉様も空間へ干渉する系統の魔法は苦手ですね。おかげで細かく町によらなければならない日々です。」
そういえば転移魔法を失敗したと話していたな。あれも確か空間へ干渉する魔法だ。他には幻影を作り出したり姿を隠すような魔法。収納魔法もその一つであるため、旅人であるなら荷物の持ち運びのためにも絶対に習得しておきたい魔法だ。それが使えないとなってしまえば、衣服や着替え、お金や薬草など全て手持ちにしなければならず、荷運びの馬などがいるならともかく、とてもじゃないが旅などできないだろう。
だが、記憶が正しければルルもリリムも特に大荷物であることなどない上に、日によって服装が変わっていることもあった。おそらく苦手ではあるが、何とか最低限の荷運びができる程度には使えるのだろう。
そんなことを考えていると、リリムからも質問をしてくる。彼女たちの方から質問されるのは初めてではないが、質問内容は大抵彼女たちの知らないこと、土地に関することや住居や店などに関することが殆どだった。だが飛んできた内容は珍しくグラに関することだった。
「グラさんの使用できる魔法は感知と隠密系と仰っていましたよね?迷宮や遺跡などには行かれたことはありますか?」
古代人が遺したとされる遺跡には沢山の罠と財宝が眠っていると噂されている。多くの冒険者や傭兵は一攫千金を目指し、遺跡の罠や出現する魔物の前に散っていくか、浅い場所で素材を集めては売り払うその日暮らしのような日々を送っている。そして、世界ではまだ3か所しか踏破されておらず、その遺跡を踏破した団体は英雄だなんだと崇められている。
興味がない訳ではないし、グラ程の実力があれば少なくとも遺跡の罠に散ることはないだろう。だがそれでも、未だ挑んだことはない。
「仕事が忙しいっていうのもあるけれど、立場的に死ぬわけにはいかないし、罠を感知できたところで魔物に勝てるという訳じゃないからね。」
やや自嘲気味に伝えるグラを後目に、リリムは含みのある笑みを浮かべた。




