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26 吸血鬼の観戦


『いてててて………

 最初見た時は、正直どうかな?って思ってたけどあの女、つええなぁ』


『見切りと速さは大したモノであったな。ああも簡単に我が鉄球を見切られるとは…いや、完敗完敗』


『ああ、今回も僕の背中に背負った魔大砲の出番、なかったなぁ…』


『ああ、それ、当たるとスゲェんだけどな……当てるまでがな』


 ワイワイ…ガヤガヤ…


 決闘場の陣幕の隣に設置された控え室で敗退した死霊騎士達が談笑していた。


 控え室には酒や食べ物も用意してあり、さながら打ち上げ会場のようだ。


 その中にまじって普通に居るアズマリアとヴァル。ケイの様子を伺った後、こちらに移って来ていた。


「あの、負けたと思われる死霊騎士さん達が和やかに感想を言い合ってるんですけど…」


「まあ、試合後の反省会みたいなもん。体育会系の連中にはよくある光景だよ」


 アズマリアからするとそういう意味で聞いた訳ではなかったのだが。


「いや、決闘で負けたら普通死んじゃったり、消滅したりとかするんじゃないんですか?」


「ああ、決闘場には『不殺の結界』が張ってあるから。一人一回までなら致命傷でもギリギリ生還出来んの。

 だからあの聖騎士殿も間違っても死ぬことは無いから、安心して決闘が終わるのを待とうよ。ここで飲み食いしながらさ」


「そ、そうですか…」


 ちなみに、二人とも目の前にはすでに自分の分のジョッキと料理を確保していた。


 アズマリアがジョッキの中身に口をつけながら周囲の様子を見ると、どの死霊騎士も楽しげに騒いでいる。 


「は、はあ…負けたら浄化っていうので、悲愴感みたいなモノにあふれてるかと思ってたんですけど…」


『ム!?』


 ふと漏れた独り言だったのだが、それを聞きつけた死霊騎士がいたようだ。アズマリアの座るテーブルに近付いてくる。


『イヤイヤ、神官殿!! 我らも曲がりなりにも騎士を冠する者、一度こうと決めたことにグジグジと思い悩んだりはしませぬよ。

 おっと、ジョッキが空いておりますぞ!? おつぎしましょう!!』


「あ、すいません…ご返杯を」


『おお、これは申し訳ない♪ 手酌や男同士も悪くはありませんが、やはり女子(おなご)に酌をしてもらうと酒が美味いですな♪

 お、主殿も一杯いかがです? おやおや、ジョッキに新しい酒の入る隙間がありませんな!? こりゃまた失礼いたしました』


「はいはい、はよ行け」


 ヴァルにシッシと手を振られ、返杯されたジョッキを持って元の席に戻っていく死霊騎士。同僚から『神官ちゃんと話したのか?』『いいな~』『酒ついでもらった♪』『俺にもそれ飲ませろ』等と囃し立てられている。


 騎士というより近所のおっさんの宴席のような雰囲気だ。


「コイツらいつもこんな感じだからね。俺が領主になる前から馴れ馴れしいんだわ。絡まれないように気を付けな」


「あ、はい」 


 そんな注意を受けていると、新たな死霊騎士が入ってくる。他の死霊騎士達に比べ軽装の鎧、冒険者達が好んで使うような装備だ。


 なんか見覚えがあるなぁと思っていたら、さきほどケイに負けて踏まれていた死霊騎士だった。


『新たな負け犬の登場だ~』

『よっ!! 記念すべき十敗目!!』

『うっせ!! お前らも同じだろうが!?』

『お先いただいてまーす』


 控え室に入ると同時に揉みくちゃにされ歓迎?の言葉をかけられていたが、ヴァル達に気付くと挨拶するために近付いてくる。


『若、こちらにいらしていたのですか』


「やあ、お疲れさん。だいぶグリグリされてたけど大丈夫? 変な扉が開いてない?」


『ハハ、大丈夫ですよ。あの程度、死因のオーガキングにグリグリされた時に比べれば何も感じません』


「そりゃそうか。そんときゃ、あの世の扉がひらいたんだもんな」


「『ハハハハハ♪』」


 よく分からない返しをされ困惑するアズマリアだったが、ヴァル達にとってはお約束の挨拶みたいなモノのようで笑いあっている。


「『地竜の(あぎと)』だっけ? その魔剣ならワンチャンあると思ったんだけどねぇ」


『残念ながら、私の魔力では鎧を貫くほどの硬度は無理ですからね。生前から不意打ち専用の一発技です。

 若に譲りますので使ってみたらどうです? 若の魔力ならミスリルでも切断できますよ』


 死霊騎士の腰に差された剣を指差しながら会話をするヴァルと冒険者風の死霊騎士。どうやら魔剣のようで、その効果について話しているらしい。


「……ん~、考えとく、で、次の対戦相手は誰? 聞いてからこっちに来たんだろ?」


『あ~、シズク殿です…残念ながら、今日はここまででしょうね』


 どうやらなんらかのやり方で次の対戦者が決まったらしい。そして、冒険者風死霊騎士の見立てではケイよりもその対戦相手の方に軍配が上がるようだ。


 特に応援していた訳ではないのだが、顔を知っているだけでなんとなくケイを応援したくなってしまったアズマリア。


「お、今日一の対戦カードになりそうだね!? せっかくだから全員で見ようか」


 ヴァルはそう言うと、短く詠唱を行う。


『おわ!? なんだっ!?』


 すると控室の壁面に何やら絵のようなモノが浮かび上がった。壁近くにいた死霊騎士が驚いて声を上げる。


「あ、これって…ケイさんですね。動いてる!?」


「投影魔術だね。

 使い魔のコウモリをさっきの決闘場に置いてきてあって、そのコウモリが見てる光景と音を魔術で再現してるの。

 要は離れた場所で起きてる事を見聞き出来る魔術ね」


『『『「おお~!!」』』』


 その魔術の便利さに、アズマリアと死霊騎士達から称賛の声が上がる。


「それじゃ、皆で勝負の行方を見守ろうか」


 酒とツマミを手にケイの闘いっぷりを観戦するヴァル達であった。



■■■



 そんな風に見られているとは知らぬ女騎士ケイ。決闘場にて対戦相手の女死霊武士シズクと向き合っていた。


『少しくらい休憩をとってもいいんですよ?』


 それを聞いたケイは一瞬顔をしかめながらも、その意見に同調した。


「…すまないが少し時間を貰うぞ」


 連戦で高揚していたケイだったが、冷静に考えると連戦による疲労に加え、先の一戦によるダメージが蓄積してしまっている。

 後先を考えない猪突猛進気味な印象のケイだが、こと戦闘に関しては正しい判断が出来るようで回復に勤しむようだ。。


「…おい、一つ聞きたいんだが、決闘の途中だが《奇跡》を使ってもかまわないか?」


『? どういう事でしょうか?』


「《治癒(ヒール)》を使って傷を癒してもいいか?と言うことだ。これでも聖騎士だからな、幾つかの《奇跡》を授かっている」


 聖騎士は神官と同様に神の奇跡を授かっている。それ故、教会付きの騎士となっているのだ。


『そういう事でしたらどうぞご自由に。

 なんなら決闘中に使っても構いませんよ?』


「……いいのか? 剣と剣の勝負だと思っていたのだが…」


『《奇跡》も《魔術》も本人の力ですから、使うなと言う方が無粋でしょう。さきほどの土の刃も魔剣の力とは言え、魔術の一端ですしね。

 とは言え、遠距離から一方的に攻撃するような展開は遠慮したいですが』


「そこまで達者ではないし、信仰もさほど厚くない。どちらかと言えば剣に重きを置いているしな。

 《奇跡》の効果も本職の神官ほどではないし、応急手当て程度のモノだ。《治癒(ヒール)》」


 そう言って背中に手を当てて《治癒》を行使するケイ。一度ではなく二度、三度と使っているところを見ると確かに大した効果はないのかもしれない。

 ちなみに、この場面を映像で見ていたアズマリアは羨ましそうにしていた。


「よし、とりあえず………よし、動かしても影響は無さそうだ」


 軽く素振りやステップを踏み、動きの確認をするケイ。ダメージを負っている場合、損傷箇所に違和感があったりするのだがそれもなさそうだ。


「待たせたな、始めようか」


『よろしいのですか? もう少し休んでもいいのですよ』


「気遣い無用だ。それに、どちらかと言うと……早く貴女と闘いたくてウズウズしている。

 治療の時間も惜しいほどだったが、貴女には万全で挑まなければならない気がしてな」


 そう言ってケイは細剣(レイピア)を片手で持ち、右中段に構える。


『そうですか、ご期待に沿えるといいのですが』


 対するシズクもスラリと滑らかな動きで刀を抜き放ち、顔の横に構えて腰を落とす。俗に言う霞の構えというヤツだ。


『お師様、合図をお願いいたします』


 さきほどまでシズクが審判役を務めていた為、その代わりとして頭領らしき男が歩み出てくる。どうやら、以前シズクの話に出てきた剣の師とは彼の事らしい。


『おう、双方とも死力を尽くせや!!

 用意はいいかぁ!?』


 すでにお互い以外は目に入っていない様子の女剣士二人。


『いいみてぇだな、んじゃ……………始め!!!!』


 




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