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12 吸血鬼の講義


「あ、あれ? すいませんスケルトンさん、浄化に失敗しちゃったみたいで…」


 依頼の三日目。

 これまで同様礼拝堂で浄化を行うアズマリア。


 本日三体目のスケルトンを浄化予定だったが、《浄化(ピュアリフィケイション)》を行使され光に包まれたもののそのスケルトンはその場に残っていた。

 若干、バツが悪そうにも見える。


「う~ん、多分込めた精神力が少なすぎたんだと思う。

 あんまりテキトー過ぎる祈りだと浄化されないというか…満足出来なかったんじゃない?

 力を込めすぎるのも問題だけど、抜きすぎてもダメってことだね」


 依頼人兼見届け人兼指導役と化したヴァルの助言。


「すいません…もう一回いきますね。《浄化》!」


 目の前のスケルトンに謝罪し、もう一度奇跡を行使すると今回はいつもと同じように燐光を発しながら消滅していった。


「………うう、なんだか申し訳ない気持ちです。」


 浄化後の祈りを終え、先程のスケルトンへの後ろめたさを吐露する。


「まあ、ちょうどいいくらいの祈り加減を探してたところだからね。ある意味二回祈ってもらったようなもんだしお得だったかもよ?

 マジメな方のアドバイスだと、さっき失敗した時の祈り・精神力に少し嵩まししてやるぐらいでスケルトンさんの浄化に関してはほぼ失敗はなくなると思うよ。失敗とは思わずに下限を確認出来たって事でいいんじゃないの。

 一応スケルトンさんにも個体差はあるから絶対ではないけどね」


 落ち込むアズマリアにアドバイスを行うヴァル。


「はい、それでやってみます。

 でもスケルトンさんの個体差ってどういう風に出来るんですか?」


 同じような白骨達にどのような個体差があると言うのだろうかと疑問に思うアズマリア。

 骨格の違いとかだろうか?


「あ!! 装備とか服の破れ具合とかですか!?」


「…いや、外見じゃなくてね。

 ちなみにあれは生前の装備を持ってるってだけ。なんか知らんけど、アンデッドになると生前の持ち物をなかなか手放さないんだよね」


「さしでがましいようですが、その件については先代より『自己証明の為ではないか』との説が提唱されて主流になっています。

 四十年ほど前でしょうか。先代が私兵の装備について統一規格を作ろうとした際に死霊魔術(ネクロマンシー)を用いて書面による意識調査を行ったのですが大多数が武器や鎧、衣服を手放す事に反対したそうです。

 その際に反対の理由として『自前の装備を手放したら自分が自分であると証明できない』と大多数が回答したとか」


「え…あの、スケルトンさん達って難しい思考って出来ないんじゃ…」


「この場合は先代の死霊魔術により思考能力が向上しています」


「ふーん、統一規格に対するアンケート調査か…おんなじ装備で連帯感でも出そうとしたのかね?

 親父殿(おやじどの)も色々試行錯誤してたんだね」


「坊っちゃまが一時帰宅されて再び旅立った後の出来事ですね」


「当主な、当代とかでも可。

 にしても…あの頃かぁ………」


「………話には続きがありまして、統一規格は黒の装備でまとめたかったそうです。

 この領地全体の名前も『漆黒騎士団(シュバルツリッター)領』に変更したいとおおせでしたね。

 一部からは熱狂的な支持を得ていましたが、女性陣全員と男性陣の半分以上からの忠言でお蔵入りとなりました。

 もちろんワタクシもです」


「…親父殿」


 長々と口を挟んで申し訳ありませんと一礼して下がるミザリー。


「まあ、勉強になったよ。『自己証明』ね」


「ヴァル様は死霊魔術って使えないんですか?」


 話の流れからしてヴァルは死霊魔術という分野については詳しくないのかと感じたアズマリア。


「ん~、死霊魔術ねぇ…正直あんまり得意じゃない。

 アンデッドを意図的に作るとかは出来る、しないけど」


 正直意外だ。なんとなく魔術全般が得意なのかと思っていた。

 本人から『魔術』が得意だと聞かされた記憶があるが得手不得手はあるらしい。


「坊っちゃまは攻撃的な魔術を好みますから。

 あとは、人の世に紛れていましたので変装や擬装、魅了の魔術が得意でしょうか」


「ああ」


 そちらならば覚えがある。

 そう言えば最初に出会った時にやけにこだわっていたが、そういう経緯があったのかと腑に落ちた。


「…とりあえず話を戻そう。

 スケルトンさんの個体差の話ね。ちなみにこれレイスさんやゾンビくんにも当てはまるから。


 一つは素質、才能って言ってもいいかも。

 もうこれはしょうがない。人の世界にもあるでしょ。生まれもったというかこの場合は死んでもった素質だね。スゴい素質持ちだとアンデッドになってから一気にグールとかリッチに変容しちゃう。

 

 もう一つは成長、と言うか時間経過による変化かな。

 アンデッドになった後に無念や妄執、怒りや絶望を保ってると強力な個体になりやすい。スケルトンの枠を越えると死霊騎士とかワイトって呼ばれるようになって自我もハッキリしてくるね。

 どっちも根幹は闇の魔力との結び付きなんだよね」


 アンデッドの魔物に対する講義みたいになってきたなと思うアズマリア。

 神官学校での座学を思い出し傾聴する。こういった話を聞くのはキライではない。


 ヴァルも興がのって来たのかアズマリアを座らせて講師のように前に立って弁舌をふるっている。

 どこから持ってきたのかミザリーが板書用に鉄板(ブラックボード)石灰(チョーク)を用意する力のいれようだ。


「今関係があるのは後者だね。

 さっきも言ったように前者は一足飛びに上位種になってるからスケルトンにとどまってる事はない。

 で、後者の場合怨念とかを持ち続けなきゃいけない訳だけど、これが結構難しいんだよ。瞬間的ならともかく、持続的にそういう暗い感情を持ち続けるってよほど明確な目的意識がないとね。

 大抵はアンデッドとして過ごすことに慣れてその環境に適応しちゃう。つまりは時間が解決しちゃうってことだね。それまでに培った力が個体差になるんだけど、スケルトンさんにとどまってるって事はそれなりの力しか持ってないという証明な訳で、多少のバラツキはあってもそれなりの範囲からは逸脱しない…と。

 死霊騎士とかになれる意識高い系スケルトンさんは非業の死をとげた騎士とか冒険者が多いかな。怨念の矛先が具体的な国名とか個人に向いてる傾向があります」


「なるほど…」


 板書に縦グラフや折れ線グラフを描いて説明するヴァルだが、アズマリアには意味がわからない。

 言葉での説明はなんとなく理解できたのでとりあえず頷いておいた。


「と、以上がスケルトンさんの個体差が出来る仕組みです。

 なにか質問は? 

 今なら別の質問も受付ますよ」


 講師の演技に熱が入るヴァル。

 生徒役のアズマリアもノッていく。


「はい! ヴァル先生、気になっていたのですがスケルトンさんの数に比べてレイスさんやゾンビさんが少ないのは何でですか!?

 以前聞いてから気になっていました!!」


「い~い質問ですね~。

 レイスさんは別なのですが、実はスケルトンさんとゾンビくんは基本同じなのです。

 考えてみてください。死体を放っておくとどうなりますか?」


「え~と、亡くなって……その、腐敗します?」


「正解です。

 アンデッドになると肉体は死んだ状態になりますので、肉は腐り液状化しやがて腐り落ちます。アンデッドになると通常より多少長持ちしますけどね。

 後に残るのは白骨でスケルトンさん。ゾンビくんはスケルトンさんの期間限定の状態な訳ですね。

 余談ですがゾンビくんの間は怨念とか無念とかが長続きしやすいです。肉があると希望があるのか、骨だけになると諦めの境地に至るのかはわかっていません」


「なるほど、最終的にスケルトンさんになっていたのですね。

 じゃあ、このお仕事中にゾンビさんの浄化を行う事もあるんですね」


「そだね、スケルトンさん達は無作為に呼び寄せてるから当たることもあると思うよ。

 …さて、そろそろ再開する?」


「そうします、今日はまだ三体のスケルトンさんしか浄化出来てないですから…」


 下ろしていた腰を上げて浄化を再開するアズマリア。


 ヴァルも下がって見守りに徹っし、ミザリーは講義の道具の片付けを行う。


 この日は中天までに二十五体のスケルトンを浄化することに成功する。

 朝から十二体、《霊薬(ポーション)》を服用してから十三体。


 このあたりが今のアズマリアの《浄化》の効率の限界のようだった。


 そして昼の食事を済ませた後、先に話題に上がったゾンビが浄化の対象として現れる。


「え、あ、アナタは………」


 そして、それはアズマリアの見知った人物であった。

 



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