10 ネット弁慶、りょー -1-
18:51 りょー
彼女が可愛すぎてつらみ。
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18:53 清司
【悲報】りょーさんのノロケタイム今日も始まる
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18:53 りょー
だってホントに可愛いんだよー。
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18:54 清司
マジうぜえ(笑) 毎日毎日(笑)
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18:53 坂上2世
そんな可愛いの? 顔見たい
写真のっけて
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18:53 りょー
嫌です。
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18:55 坂上2世
じゃあ自慢すんなや、ばーか
……こいつはブロックだな。
と良馬は思う。思った時には指が動いて『坂上2世』をブロックしている。
写真なんか載せるわけないじゃないか。こんな可愛い彼女は自分だけのものにしておきたい。他の男になんか見せたくない。
また通知が鳴る。
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18:59 みさぴょん
こんばんはー。スマホばっかり触ってると、彼女怒らない?(笑)
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19:00 りょー
こんばんは。疲れてるみたいで今寝ちゃってる。寝顔可愛いつらみ。
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19:04 みさぴょん
そうなんだ(笑) 襲っちゃダメだよー。
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19:04 りょー
マジ襲いたい……。
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19:08 みさぴょん
ヤバいね(笑)
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19:08 りょー
ヤバいです。
ちょっと前まで主にゲームの感想なんかを呟くアカウントだったのだが、最近は完全に『彼女自慢垢』になってしまった。
ウザいとかしょっちゅう言われるし、前は楽しくやりとりしていたのに嫌な態度をとってくるようになった相手も多い。フォロワーも減った。
でも仕方がない。今、他に呟きたいことが何もないのだから。
彼女が出来る前なら、自分だってノロケばかり呟いているヤツはウザいと思っただろう。
だから人が減るのは仕方ない。でも暴言を吐かれるのは嫌だから、そういう相手はブロックする。
それに呟きの傾向が変わってからフォローしてくれるようになった人もいるし。
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19:17 みさぴょん
襲うのはダメよ。無理やりは嫌われちゃうからね(^▽^;)
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19:17 りょー
はい……自重します。
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19:19 みさぴょん
よしよし
この相手もそうだ。年上女性っぽい(だがネットでのことなので確証は何もない)が、穏やかな人柄のようなので話しやすく相談もしやすい。こういうタイプの相互が増えたような気がする。
実年齢より子供扱いされている感じもするが、タイムラインが穏やかで前よりストレスがかからない気もする。
隣りでソファーにもたれて眠り込んでいる彼女を見た。
発熱した大学の友達を家まで送っていって疲れたとかで、自分のところに来るとすぐに眠り込んでしまった。
残念な気もするが、無防備な寝顔をずっと見られるのはちょっと嬉しい。ずっと見ていると本気で襲いたくなってくるところが困るが。
歌詞でも作ろうか、と彼女の顔から目をそらして考える。
勢いで曲の方の公式アカウントに『新曲作ってます』みたいなことを書いてしまったので、ファンがかなり期待してしまっているようだ。
あの日は舞い上がってしまっていて失敗した。急かされるのが嫌いだから、いつも発表するまで何も言わないことにしているのに。
タイトルも考えないと。
自分内タイトルを彼女に話したら、『くそダサい』と言われた。それは自覚している……。だが感情で曲を作る方なので、自分内仮タイトルはいつでもその曲のテーマそのものだ。
最初にバズった曲の自分内タイトルは『てめえらみんな死んじまえの歌』だった。
さすがにそれでは発表できないと思うので、いつも最後に頭を振り絞ってカッコ良さそうなタイトルを無理やりつける。後でネットで『カッコつけすぎ』『中二病』とか言われているのを見ると死にたくなる。
曲を作るのは好きだが歌詞をつけるのは苦手だ。だいたい後で見返すと恥ずかしくて自分でのたうち回るようなものが出来る。
CD を出そうという話が来て、今まで発表したもので特に評判が良かった曲を十曲ほどセレクトして音楽会社のスタジオで新録した時は地獄だった。どうしてあんな無駄にカッコつけた歌詞を書いたんだ、過去の自分。それを初対面の技術者さんたちの前で歌うとか……恥ずかしすぎて死ぬかと思った。
実際、歌えなくて山ほどリテイク出して舌打ちされた。担当者が自分のファンで、一所懸命盛り上げてくれたので何とか最後まで頑張れたけど、もうやりたくない。
そこそこは売れたので二枚目を出しませんかと言われているが、逃げ続けている。家で勝手に音源作ってネットに流すだけなら何とか出来るのに。
……思い出しているうちに気分が沈んできてしまった。彼女の寝顔を見てリセットしよう。
可愛い。可愛すぎてつらい。襲いたい。
リセット終了。
どこから作るか。サビから作るか? 核はサビだから、やっぱりサビから始めるか。
真帆ちゃん大好き愛してる……ってそのままじゃダメだなやっぱり。
彼女も自分のファンだと言ってくれているし、ガッカリさせないようにしないと。
ちゃんと、彼女が喜んでくれるような感動的な歌詞に仕上げないと……
ふと気が付いて顔を上げると、三時間経っていた。歌詞作りに熱中し過ぎてしまったようだ。うまくいかないからムキになりすぎた。……あれ? 彼女は?
まだ眠っていた。しかしいくらなんでも眠りすぎではないだろうか? 三時間も放っておいてから言うのもおかしいが、急に心配になってきた。
彼女はいつも自分に気を遣ってくれている。疲れている時にウトウトすることはあっても、こんなに長く眠ってしまうなんて今までになかった。
「真帆ちゃん?」
声をかけてみる。
「ん……」
呻き声のような反応がある。だが目を覚まさない。そういえばいつもより顔が赤いような気がする。
送っていった友達が重い風邪をひいていて、それを良馬にうつしてしまったら悪いからと彼女はずっとマスクをしていた。だから気付かなかったのだが、改めて見るとかなり赤い気がする。
「真帆ちゃん? 大丈夫ですか?」
額に触ってみた。熱かった。
……熱?
送って行ったという友達の風邪がうつった?
良馬はうろたえた。どうしたらいいか分からない。
病院か。病院に連れて行けばいいのか。しかし、この時間ではもう閉まっているのでは。
救急車? 救急車を呼べばいいのか?
確か番号は……でも何と説明したらいいのだろう。どう言ったら来てくれるんだろう。
あ、保険証……彼女は保険証を持っているのか? 持っていなかったら救急車は来てくれないのだろうか?
パニックになった彼はとりあえず携帯を取り上げて、慣れた行動をした。
22:21 りょー
彼女がすごい熱。どうしよう。
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22:22 杉崎
おや。心配ですね。
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22:23 みたく
夏風邪はやってるみたい
お大事に
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22:25 ひろし@仕事行きたくない
今日、彼女お泊り? 残念ーーwww
役に立つ返信がひとつも来ない。そういうのが欲しいんじゃないんだ今は。
と思った時、次の返信が来た。
[返信]
22:29 みさぴょん
彼女さん、熱って何度くらい? 体温測った?
……あ。体温計。
焦っていて思いつかなかった。確か、体温計はどこかにあったはず。ベッドサイドの抽斗だっただろうか。
体温計を持ってくる。
「真帆ちゃん。真帆ちゃん。熱、測ってみてください」
「うん……」
彼女は薄眼を開けて体温計を受け取った。胸元のボタンを少し開けて、腋の下に体温計を挟む。少しエロい。
しばらくして体温計が鳴った。
22:40 りょー
38度7分。熱高い。どうしよう。
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22:42 みさぴょん
りょーさん、落ち着いて。解熱剤はある? 彼女さん飲めそう?
あと、スポーツドリンクとかあったら飲ませてあげて。
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22:42 りょー
解熱剤はないです……スポーツドリンクも……。あ、ミネラルウォーターだったら買い置きが。
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22:49 みさぴょん
じゃあとりあえず水を飲ませて。冷たいタオルで腋の下を冷やすといいよ。
あと突っ込んだこと聞いても良ければだけど、同棲? それとも彼女さん、家族と住んでる?
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22:49 りょー
あの、彼女はご家族と住んでます……。
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22:55 みさぴょん
じゃあ応急処置したらご家族と連絡とって。泊めるのか迎えに来てもらうのか協議して。
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22:55 りょー
あっでも僕、彼女の家族の連絡先知らない……。
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23:01 みさぴょん
彼女さん、全然意識ないの? だったら救急車。そうじゃないなら本人から連絡してもらえばいいよ。
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23:01 りょー
でも時間……遅い……。
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23:03 みさぴょん
それは気にしなくてもいい! ほら、さっさと動く!
みさぴょんさん、頼りになる。
叱咤されてしまったが、パニックになっていた良馬としては指針を得てホッとした思いだった。




