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9 朦朧風邪ひき女子、中森小夜 -2-

「 blue blue blue かあ。ホントに真帆ちゃん、好きだねえ」

「うん。大好き」

 曲も詞も歌もアレンジも、作ってる人も全部好き。


 うなずいた私を見て、小夜ちゃんはへらっと笑った。

「真帆ちゃんくそ可愛い。恋は女を可愛くするのかあ」

 ちょっと待て小夜ちゃん。『可愛い』という美しい言葉に『くそ』という美しくない副詞を付けて私のことを表現するのはやめてくれませんか。


「私もいろいろコイバナ聞いて来たけど、真帆ちゃんのが一番面白い。また話聞かせて。あー、真帆ちゃんのイメージで何か作りたいな。キラキラしてる感じの……ライトブルーとライトグリーンで……。でも真帆ちゃんピアスしないしな……ペアリング……んー違う」

 難しい顔でひとりでブツブツ言っている。青柳先生みたいだな。


「ね。真帆彼って、アクセサリーとか付ける系?」

 真帆彼! すごく耳新しい名詞を聞いた。そうなんだけど、確かにそうなんだけど、照れるぞ何だか。


「ええと。あんまり付けてるとこ想像できない」

「そっかー。普段の服装って何系?」

「引きこもり系センスなしダサダサファッション」


 ワードローブは『お母さんが懸賞で当てた変な服』『お母さんが安売りで買って来た適当な服』『本人がネットで見つけた適当な服』が九割を占めています。着やすさ優先、デザイン軽視。


「外に出る時は?」

「ブランドスーツ上から下まで一式」

 それしかない。正に一張羅。


「何それ、落差ありすぎ」

 小夜ちゃんが突っ伏したままクスクス笑った。

 うん、私もそう思う。


「んじゃー、カフスボタンとか作ってみるかなあ。タイピンもいいなあ、クリップじゃなくてラペルピンで。真帆ちゃんもスーツ似合いそうだし、ネクタイとか絶対可愛いし。じゃあ真帆ちゃんの誕生日プレゼントにそれ作るわ」

「うん。嬉しいけど、先にしっかり風邪を治して小夜ちゃん」

「大丈夫大丈夫。でもやっぱり作る前に真帆彼の顔を見たいな。せっかくだから似合うの作りたい。写真……写メでいいから今度送って……ダサTじゃなくてカッコよくしてる時のヤツ……」

 言葉がだんだん途切れ途切れになり、声が小さくなっていく。

「小夜ちゃん? 小夜ちゃん大丈夫?」



 結局、小夜ちゃんはあまり大丈夫ではなかった。

 椅子に座っていられずにずるずる滑り落ちてしまうので、ホケカンに連れて行くことにした。

「あっ、中森さん具合悪いの? 俺が背負って行こうか!」

 と藤倉くんが嬉しそうに出しゃばって来たが、下心しか感じないので荷物持ちを言いつけ小夜ちゃんは私が背負った。


「うーん」

 小夜ちゃんを背負ってすっくと立った私を見て、藤倉くんはビミョウな顔をする。

「何」

「いや、女子がね? 西浦さんのことイケメンって言う気持ちがちょっと分かる気がしてねえ」

 分からなくていいよそんなの。


「行動がイケメンだよね。あと、生臭くないところがいいんだろうなあ」

 生臭かったら問題だろう。

「まあ、俺から見たらやっぱり西浦さんも可愛い女子なんだけどね」

 ふあ?!


 小夜ちゃん背負ってるのに、思わず振り返っちゃった。

「あのね藤倉くん。からかわないで」

「からかってないよ。ホントにそう思うもの。あと、男できてから色っぽくなったよね」


「それってセクハラ?」

「違う違う」

 藤倉くんはさわやかに笑う。

「モーションかけてるんだよ」

「ふざけるな藤倉」


「ええ。俺はすごく真面目だけどな」

「ふざけてるようにしか見えない。私、彼氏いるからね」

 あと、風邪ひいてる友達を背負って運んでる時にそんな話されるのもふざけてるとしか思えない。


「彼氏いるから余計に魅力的なんじゃないか。彼氏がいるってことは男に興味があるってことだし、他の男が自分のものにしたいと思うくらい魅力的な女の子を横から奪うっていうのもゾクゾクするし。何より彼氏持ちの子ってさ、女性ホルモンが出てるのかなあ。エロさが違うよね」

「分かった。アンタのことはこれから一種の変態と認識するわ」

「ひどいなあ、普通だよ。そりゃエロDVDは人妻凌辱ものとか好きだけど」

「うん、普通に変態だね。キモい」



「そういうわけで、俺に興味が出たらいつでも声をかけてよね。ご指名待ってます!」

 と爽やかに言って、藤倉(変態)は去って行った。ホケカンまで文句も言わずに(たわごとは言っていたが)カバンを持って付き合ってくれたことは評価する。


 しかし『好きなエッチの体位を教えて』とか言って来たことについては許さない。腹パンしようかと思ったが、小夜ちゃんを背負って二百メートル歩いた後だったので私の攻撃は機動性に欠けた。

 軽く避けられてしまって悔しい。今度会ったら殴る。



 そしてホケカンで体温を測ってもらった小夜ちゃんは、三十八度三分で全然大丈夫ではなかった。

 解熱剤を飲んで少し落ち着いたところを、私が自宅まで送っていった。小夜ちゃんママが恐縮してお礼を言い、お茶とお菓子を出してくださった。


 結局、講義には出そこなってしまったなあ。

 バイトもない日だし、このまま青柳先生のところに行くか。


 ……写真ねえ。一枚くらい一緒に撮りたいという気持ちは私にもあるんだけど。

 撮ろうって言ったらどんな顔するんだろう?


 やっぱり全力で遠慮されてしまうのかなあ。

 それとも意外にのって来る? どっちだろ。

 青柳先生も、読めないところあるからなあ。


 付き合ってもうすぐ一ヶ月。気が付くと、先生のことばっかり考えてる。


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