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私は彼女に恋をした  作者: まどるか
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4月 きらきらと

朱音 好きな食べ物はケーキ(特に苺ショートケーキ)

月葉 好きな食べ物は朱音のお弁当(交換するとき食べさせてもらうのがベスト)

 朱音の理想。それは華やかな高校生活を送ること。そしてその華やかの定義は朱音にとっては恋の成就である。


「お願いします、お願いします、お願いします、お願いします……」

「朱音~、そんなに私と一緒のクラスになりたいの~?」


 私の幼馴染みであり一番の親友である月葉が隣でニヤニヤとわざとらしく笑う。こういうときは無視しても構わない。

 今日は初めて自分たちの教室に入る日。私は月葉とともに学校に来て、昇降口にある紙を見つけた。

 あの場所にクラスが書かれている。


「あっ、貼り出されてるよ!」

「つ、月葉‥‥見てきてください‥‥‥」

「え~、一緒に来たんだから一緒に見ようよ」

「で、でも‥‥‥」

「いいからいいから♪」


 月葉はどうしてこんなに余裕があるの?

 私はこんなに取り乱しているというのに。

 考える間もなく月葉は私の手をひいてクラス発表の紙の前に立った。

 私は貼り出された紙を心音を激しくしながら見た。


「え……と。あっ。月葉! ありましたよ、五組です。一緒のクラスですよ!」

「あ、ほんどだ~」


 私の名前の真上に、月葉の文字が書かれていたのを見たとき、私は大いに喜んだ。

 でも月葉はというと、やったーのひとつも言わない。私との温度差に少しへこむ。


「……ねえ月葉」

「なあに?」

「私と一緒のクラスじゃ嫌ですか?」


 目から溢れそうになるのを必死に抑えながら、でも聞いておかないと不安で押し潰されて死にそうになるから。

 だから止められない。私は聞かなくてはならない。


「嫌なわけないよ」


 さらっと月葉がいってしまう言葉がこの上なく嬉しいのは、それだけ私は彼女に恋をしてるからなのだろう。

 私はその言葉だけで救われて、でもそれが納得いかなくて月葉にさらに言及する。


「それならどうしてですか? 私がこんなにドキドキしてて、月葉と一緒がいいって思ってるんですよ。私ばっかり月葉といたいみたいじゃないですか!」


 ああ、私って絶対面倒くさい子だ。せっかく一緒になれたんだから、少しくらい止められればいいのに。

 どうしても、私の想いを押しつけたくなってしまう。それ以上を願ってしまう。


「きいて。朱音」

「は、はい……」

「私はね、わかってたの。絶対一緒になれるんだってこと。だって1回しか私のいいように動いてくれなかったんだよ」

「な、何がですか?」

「神様」


 声のトーンがひとつ落ちた月葉の言葉は一々重い。この言葉には色々な嘆きが含まれているように感じた。


「……1回ってなんですか?」

「え、そこ聞く!?」

「ダメでしたか?」


 話したくない内容とか……


「ダメじゃないけど……、秘密かなぁ」


 月葉が話してくれなければ、私が知るよしもない。

 秘密と言われたら一歩引き下がる。これが私たちの距離なのだ。


「えっと、月葉」

「なあに?」

「これからも私を、どうかよろしくお願いしますね」


 月葉は私の前でたくさん笑ってくれる。それが私の生きるちからになる。

 月葉は今も笑ってくれた。


「うん! よろしくね」


 そしてその日のうちに、私たちの学科が一クラスしかないことを私は知ることになるのでした。

高校入学時の二人

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