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私は彼女に恋をした  作者: まどるか
16/30

◆6月.お風呂で見つけた



朱音 魚は苦手

 私の家のお風呂は、まあ、特別大きくもなく小さくもないといったところ。長方形の浴槽と、それと同じくらいの大きさの床部分がある。

 二人同時に入ったら、冬場なら寒くなってしまうけど、この時期ならば、なんら問題はないと思う。

 私は意識的に月葉から目を離して、身体を洗い流していた。ですが、なぜか月葉が私のことをじっと視てくるものだから、私は洗うことに集中できずにいる。

 私が髪を洗い流した頃にはもう、月葉は全身を洗い終え、湯船へと入った。


「一番風呂もーらいっと。朱音は洗うの遅いねー」

「月葉は髪が短いですからね。私の髪、これでも手入れは大変なんですよ」


 月葉のウェーブのかかった髪は天然もの。私は昔、いいなーと言っていた記憶がある。でも、私のストレートも月葉に羨ましいと思わせたから、私は私のこの髪も大好きになった。

 もちろん、一番は月葉だけど。


「・・・・・・」


 石鹸を手にとって身体を洗い始めると、視線が私に向けられる。少し待っても途切れることのない視線はもちろん、月葉からのもの。


「どうかしたのですか?」

「ん? なんで?」

「いや、だってさっきから私の身体を・・・・・・」


 はっ!

 もしかしたら見ていたのは別の場所なのでは……

 いや、そもそも見ていたのではなくてぼーっとしていただけとか。よく考えれば、いや考えなくても私の身体をまじまじと見る必要なんてないし。そっちの方が納得がいく。

 私の身体を見てた? なんて言うのは自意識過剰がすぎて恥ずかしい思いをするのは確実。

 でもなんて言って誤魔化せば・・・・・・。


「朱音? そんなに厳しい顔して、どうしたの?」

「な、なんでもないですよ! ただ、身体をじろじろと見るのはどうかなあと……。そう思っただけです!」


 間違えた。まずい。すごくまずい。頭の中で考えた内容を何一つ変えることなく言ってしまった。

 でも、冷静さを欠くわけにもいかない。次の月葉の言葉にたいして上手に返せば……って、何と戦っているのでしょうか私は。


「そんなに見てなかったよ。ちょっとは見てたかもだけど、ホントに。うん、ホントに」


 あれこの反応は・・・・・・?

 見ていたのは事実ということだよね?

 ならばとりあえず私が恥ずかしがる必要はなくなった。


「・・・・・・」

「朱音? なにかいってよ」


 月葉の無意識にやられただけでは癪です。振り回されたお返しにからかってやろう。


「そんなこと言って、実は凝視してたんですよね。ほくろの数でも数えようとしてたとか?」


 って、それは私だ!

 こんな発想、考えてる人にしか出てこないでしょ! 私のバカ。


「そ、そんなことするか! もう出る!」


 月葉は憤怒を表にするものだから、もう月葉が何を考えていたのかなんてわからなくなった。


「あ、……はい。タオルは出て右です」


 月葉が浴槽から出るために立ち上がったことで、月葉の全身が露になる。そのとき私はあるものを見つけた。


「そのあざはどうしたのですか?」

「え? あざって、どこ?」

「おしりの所です」

「え!? ど、どのあたりなの?」


 はっ!

 今度は私がおしりばかり見ていたと思われてしまったかもしれない。ここは弁明しないと。


「いや、見つけたのはたまたま視界に入ったからですよ! 別に、見ようとしたわけではないんです」

「わかってるよ。それで、どのあたり?」


 あ、全然気にしていないみたい。

 まあ、月葉の全身を目に焼き付けるように見ていたのだから、たまたま視界にというのは嘘なんだけど。


「えっと、ここです」


 そう言いながら指をおしりの山の近くをさしたとき、ちょうど月葉が動いたものですから、私の指は月葉の柔らかい山をつつくかたちになってしまいました。


「ひゃっ……! ちょ……、朱音! つつかないでよ!?」

「あっいえ、ごめんなさい。当たってしまっただけなんです」

「もう! 朱音、私がおしり弱いの知ってるでしょ! こういうのやめてよ!」


 そんなことものすごく初耳だけど、今後のために覚えておこう。

 ……って今後ってなに!? なに考えてるの、私!


「し、知りませんよ! 月葉が何処かって言ったから私は教えようとしたんですよ! それなのに」


 確かに下心だらけだったかもしれないけれど、いつも私の根底にあるものは月葉が心配ということで・・・・・・。


「あっ、ごめんね! そうだよね。朱音がそんなことするはずないもんね。謝らなきゃだよね。ごめんね」


 月葉はうわーんと泣きながら、私に許しを請おうと抱きついてきた。

 私の目にはいつの間にか涙があったみたい。

 でも、月葉。ごめんなさい。

 私には月葉に触りたいという気持ちが大いにありました。

 そしてごめんなさい。

 今、あなたの腕とか胸とか脚とかが私の肌に直接触れて、とてもどきどきしています。

 私の行き場に困ったフリーの腕は月葉の後ろへと回し、そこで離れないようにがっちりと組んで。押さえつけるのは月葉の体じゃなくて私の理性だ。

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