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私は彼女に恋をした  作者: まどるか
13/30

■6月.悪魔はずっと住んでいる

月葉視点


月葉 姉の名前は沙羅

 私の中に悪魔が眠っているとしたらどんな悪魔だろうか。

 私の夢を奪う悪魔? 私を傷付ける悪魔? やがては私を殺してしまう悪魔?

 私の願いを叶える悪魔はどこにいるのだろう。

 少なくとも、今の私の心を支配する悪魔は、これらの悪魔とは違って、もっと私の心を揺さぶるような類いのものだ。そうやって用心しておかないと、私の心を見失ってしまいそうになる。

 私は昔から病弱で、病に伏すことも多かった。皆勤賞を目指そうと、入学前に意気込んでいたものの、結局この様だ。

 私の悩みは重いように聞こえてしまうと思うから、あまり口には出さないようにしている。


 皆が部活へ行ったり帰ったりした後の教室で、私は朱音に誘われた。


「月葉は明日は空いてたりしませんか?」

「んー? 暇だよ。どうしてー?」


 私は動かしていたシャーペンを止めずに返事をした。休んでいた頃のノートを写させてもらっていたのだ。


「いいえ、あのー、明日は休みですよね。私とデートしましょうよ」


 確かに明日は休みだ。今日が金曜日だから明日は土曜日。いつも当たり前のように訪れる週二日の休みの一日目。いや、正確には日曜から週は始まるんだっけ。

 デート、デートね。


「ええと・・・・・・・なにするの?」


 私は表情を保つので精一杯だ。普段から笑っているのが救いとなった。


「この前の撮影旅行のときのようになってはいけないので、ちょっとだけ映画でも観て、そのあとは……月葉はなにか、したいことはありますか?」


 やりたいことなんか欲望だけ振るってみればいくらでも思い浮かぶ。好きと伝える行動を頭の中に浮かべると、ちょっと恥ずかしくなる。


「体力のことも考えちゃうと、ないかなぁー」


 少し返しにくい言葉だったかなと、言ってすぐに少し後悔した。

 私のシャーペンはまだ動き続けてはいたが、ノートに記されていた授業内容を写していたはずなのに、私のノートにはいつの間にかやりたいことがただ綴られていた。

 あわててノートを閉じながら、これが見られていないか心配になったから朱音の方をちらりと見ると、私に背を向けて教室の後ろにある黒板に目を向けていた。


「体力のことですか。そうですよね。なら私の家で遊びますか? 高校生になってからは一度もなかったですよね」


 お家デート。お家デートだねこれは。

 いや、デートというのがもしかしたら私の幻かもしれない。あれだけ想像を働かせれば、暴走も仕方がないことだ。


「いっそのことお泊まりというのはどうですか? お泊まりデートです」


 デート!


 今絶対デートって言った。こういう言葉をいつも恥ずかしがって言わない朱音が言った。妄想ではなんども聞いたけれど、本当の本当。現実の声だ。


「言質とったよ」

「言質? 私なにかまずいこと言いましたか?」

「い、いやこっちの話」


 外の天気はどうだろうかと確認するまでもなく、大きな音を立てながら雨は地面に打ちつけている。

 写真部の部員らしくこのあと写真を撮るのもありかと思ったが、花を撮ったりするのは今日は厳しそうだ。


 もちろんオーケーと返事をして、私の頭の中は明日のことでいっぱいになる。


 朱音が自分でこんな誘い方をするとは思えない。こんな誘い方を勧めたのは、奈由菜か柚子里のどっちかだろう。

 もしかしたら今も教室の外から覗き込んでいるかもしれない。今度問い詰めてみよう。

 ああ、結局ノートは写せていない。まあ、また来週にでも頼もうかな。

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