彼女は今日も、列車と呼ぶのもおこがましいモノに乗っている
ガタゴト、ガタゴト。
揺れる車体、流れ行く車窓の景色。
走り抜ける青々しい木々の合間から覗く、キラキラと仄かに暗く輝く黒い水面。
ぱちり、瞬きをひとつ。
あの色を、あまり観てはいけない。吸われ、吸い込まれる。意識を刈り取られてしまう。
私はもう一度だけ瞬きをして、前に向き直った。ボックス型の席の真向かいに、相席者はない。
そもそも、この列車と呼ぶにもおこがましいモノに乗り合わせる者などの数は知れていて、対外が顔見知りであり、赤の他人である。
そんな彼女の、たわいない日常の話。一話完結型。不定期連載。あまり怖くない、はず。
揺れる車体、流れ行く車窓の景色。
走り抜ける青々しい木々の合間から覗く、キラキラと仄かに暗く輝く黒い水面。
ぱちり、瞬きをひとつ。
あの色を、あまり観てはいけない。吸われ、吸い込まれる。意識を刈り取られてしまう。
私はもう一度だけ瞬きをして、前に向き直った。ボックス型の席の真向かいに、相席者はない。
そもそも、この列車と呼ぶにもおこがましいモノに乗り合わせる者などの数は知れていて、対外が顔見知りであり、赤の他人である。
そんな彼女の、たわいない日常の話。一話完結型。不定期連載。あまり怖くない、はず。
鈴の音の芥
2016/05/09 00:07