表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/18

高校受験1

雪村の手紙にはこう書かれていた。

『花屋、私高校決めたよ。青葉学園にする!

1つ上の先輩が通ってるの。絶対そこに入るんだ!』

どうやら転校先で仲良くなった年上の友達と同じ高校に行きたいらしい。

青葉学園は偶然にも俺も受験を考えている高校だった。俺の家から距離は遠いが、3食付きの寮に安くで入れ、偏差値もちょうどいい。そしてなにより野球部が中々に強い。俺は小学校から今まで野球を続けてきたのでそこは大きなポイントだった。

「青葉に行けば雪村に会えるのか……。」

手紙に向かって俺は尋ねる。


雪村には会いたいと思う。だけど、同時に会うのが怖い。雪村が本当に楽しく生活しているのか手紙だけではわからない。雪村が嘘をついて手紙の中では明るく振る舞い、本当は辛い生活していたらどうしよう。

俺は小学生の雪村しか知らない。今の雪村は俺のことを恨んでいるかもしれない。


俺はいつまで経っても自分勝手だ。俺は本当は雪村のことを心配しているんじゃない。俺が雪村にしてしまったことを直視したときに耐えられる自信がないだけだ。


だけど、雪村に会いたい。

志望校が一致したのは偶然だ。でも、ただの偶然だとは思いたくない。


俺は初めて雪村に返事を書いた。

『俺も青葉学園の受験を考えている。野球部が強いんだ。家から遠いから寮に入ろうと思う。』

色々考えて言葉少なになった。

引っ越す前では、気軽に冗談も言える仲だったが、手紙を書くとなると気恥ずかしく言葉を書き起こせなかった。よく毎回毎回雪村は手紙を書けるなと少し尊敬した。

合格したら会えたらいいとかは書かなかった。雪村もそう思ってくれているか自信がなかった。


中学三年生の12月も半ばを過ぎた頃、ちょうど雪村が引っ越した季節と同じ頃、俺は手紙を投函した。


雪村から返事は来なかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ