高校受験1
雪村の手紙にはこう書かれていた。
『花屋、私高校決めたよ。青葉学園にする!
1つ上の先輩が通ってるの。絶対そこに入るんだ!』
どうやら転校先で仲良くなった年上の友達と同じ高校に行きたいらしい。
青葉学園は偶然にも俺も受験を考えている高校だった。俺の家から距離は遠いが、3食付きの寮に安くで入れ、偏差値もちょうどいい。そしてなにより野球部が中々に強い。俺は小学校から今まで野球を続けてきたのでそこは大きなポイントだった。
「青葉に行けば雪村に会えるのか……。」
手紙に向かって俺は尋ねる。
雪村には会いたいと思う。だけど、同時に会うのが怖い。雪村が本当に楽しく生活しているのか手紙だけではわからない。雪村が嘘をついて手紙の中では明るく振る舞い、本当は辛い生活していたらどうしよう。
俺は小学生の雪村しか知らない。今の雪村は俺のことを恨んでいるかもしれない。
俺はいつまで経っても自分勝手だ。俺は本当は雪村のことを心配しているんじゃない。俺が雪村にしてしまったことを直視したときに耐えられる自信がないだけだ。
だけど、雪村に会いたい。
志望校が一致したのは偶然だ。でも、ただの偶然だとは思いたくない。
俺は初めて雪村に返事を書いた。
『俺も青葉学園の受験を考えている。野球部が強いんだ。家から遠いから寮に入ろうと思う。』
色々考えて言葉少なになった。
引っ越す前では、気軽に冗談も言える仲だったが、手紙を書くとなると気恥ずかしく言葉を書き起こせなかった。よく毎回毎回雪村は手紙を書けるなと少し尊敬した。
合格したら会えたらいいとかは書かなかった。雪村もそう思ってくれているか自信がなかった。
中学三年生の12月も半ばを過ぎた頃、ちょうど雪村が引っ越した季節と同じ頃、俺は手紙を投函した。
雪村から返事は来なかった。