ナイトメア
読んでいってね
「かーずやくん♪」
「え?」
真横から声が聞こえたので振り向く。
隣には、黒髪ロングの可愛らしい女の子が。白いふわふわとしたパーカーに薄ピンクのワンピースを着ている。
「今日のデート私が行く所決めていい?」
「はい?」
そして突然すぎた。
デートという単語に戸惑いを見せる。それに、見渡せばここは地元の公園だ。
「デート…?」
「そう!いつも和也君が決めてるじゃん、だから次は私がと思って」
「はぁ…」
彼女ができた覚えがない和也だが、今こうして彼女といるのだからいるんだなと思い込み、話に乗った。
「いいよ、決めても」
「やった、ありがとう!実はもう決めてたりするんだ~♪」
「そっか」
ニコニコしてる彼女を見て、和也まで微笑ましく思えてしまう。
「じゃあ早速行こっか」
「うん」
そうして歩くこと約10分。市で結構人が集まる町へ来た。都会とは言わないものの、ある程度の物はかなり揃っている。
「どこ行くの?」
「え~?内緒~♪」
「何だよもう」
二人して笑いながらふと思った。
彼女の名前って何だっけ、と。そもそも知ってるのか?思い出せそうにもない和也は少し焦る。
「楽しい所だと思うよ~」
「ならいいけど…」
場所よりも名前。直接「名前何?」って聞くわけにもいかない。じゃあどうする。どこかで知れるタイミングなどがあればいいものの…、
「あっ」
「ん?なあに?」
「あっ、いや、違う違う。何でもないよ」
「なーんだ」
彼女は和也の腕にしがみつく。
和也は携帯にアドレスなりなんなりとあるだろうと思い、ポケットの中に手を入れて探した。やはり入っていた携帯を取りだし、さりげなく電源を点けた。
右腕に彼女が腕を組んでいるので左手で携帯を操作するが、利き手じゃないせいか上手く操作ができない。
メールの登録欄を見てみると、それらしき名前がないなと思いながら探してみると、彼女のだと思われる名前があったのだが、そこには『みっちゃん』とあった。
(あだ名じゃ名前わからねーよ!)
なぜ俺はあだ名で登録してしまったんだよと言い聞かせるが、そもそも彼女のアドレスを登録した覚えすらない。
「何見てるの?」
彼女が和也の携帯画面を除く。
「え、あっ…とぉ…ちょっと誰かからメール来たなと思って」
「そっか!…そういえばさ、私の名前気に入らなくなったんだ~」
「名前?何で?」
これはチャンスかと内心喜ぶ。
「だって亜魅だよ?亜魅の亜って悪い意味だって聞いてから名前変えたくなっちゃって」
「あみ…か。そんな漢字で人生変わるとかじゃないならいいんじゃないの?」
「うーん、それもそうかな。そういうならいいや!」
「いいよいいよ」
満面の笑みを浮かべた。
(よく笑うなぁ…)
次第に彼女に惹かれていく。
名前を知れたからとりあえずやっていけるだろうと判断し、思いっきり楽しむことに。
「よし、和也君!そろそろだよ」
「おっ、楽しみだなぁ」
彼女は和也の手を握りリードしてくれている。
急ぎ足で歩くこと数十秒。彼女は立ち止まる。
「ここ入って行くからね」
「え、ここ?」
「そう!」
そこは細い小路だった。二人並ぶのがやっとの細い通路。空からの光はなく、暗くて、少し肌寒い。そして何より、とても臭い。こんな所に店などありそうにもないが、それともここを抜けると目的の場所へ着くのか。
「臭くない?」
「そんなの我慢我慢!奥の方にいい所あるからもう少しの辛抱ね~」
「はいよ」
臭いのを我慢しながら歩くこと数分、彼女が、
「はい、行き止まり!」
「は?」
堂々と行き止まりと言われても。あっけらかんと和也は彼女を見る。
「今から…楽しいことをしましょうか」
「!?」
突然彼女の表情が変わった。死んだような目をしており、八重歯を見せ付ける。
「ちょっ」
そしてそのまま和也を壁に押し付けた。
「大好きだよ和也君…」
和也の右手を手に取った。
「何するんだよ…」
「私のできる限りの、和也君に対する想いを伝えるの」
そう言って親指を摘まみ、手の甲に向けて思いっきり折った。
「うぐっっ…!」
「次~」
次は人差し指を、中指を…と次々に躊躇いもなく折っていく。
「ああああっ…」
「どう?伝わったかな、私の想いが」
「いや…何も伝わんねーな.......止めろ、今すぐ…止めろ…」
「嫌だ」
次は左手を手に取る。
「今からお喋りするね」
そう言って左手を撫で回す。
「今和也君は夢を見てるんだよ。でもね、気付きそうで気付いてなくて、明晰夢を見てない状態なの」
「ああっっ」
親指以外の全ての指を掴み、全てを握り潰した。
「でね、和也さ…私の事知らなかったでしょ。まぁ、知るわけないんだけどね、初対面だもの」
「え………」
息を荒くしながら、必死に彼女の話を理解しようとしている。
「まぁ、そんなことはどうでもいいのかな。今なんでこんなことされてるか知りたいもんね」
和也の二の腕を握る。
「それはねぇ…和也君の友達の琢磨君いるでしょう?琢磨君もこの夢見て死んだの。琢磨君は腹を思いっきり抉られて死んだんだけど」
「た…くま……」
「そうそう。今和也君が見てるのは悪夢よ、だから和也君も死ななきゃいけないじゃない。だから今こうしてウォーミングアップしてるの」
「うああああああっっっ!!!」
握っていた二の腕を折った。血がドッと出て、骨が剥き出しに。こんなにも残酷な光景を見たのは初めてだ。
「これでウォーミングアップ終了かな。じゃあ本番行きます」
「あぁ……あ……うぐ………」
「私に決めさせてくれたから、もうとっくに殺り方は決めてるんだ♪」
彼女は和也の頭を触る。
「改めて見ると良い顔立ち…」
「このっ………」
抵抗したいのに手が動かない。右手はないし、左手あっても動かない。
「ちょっと…」
手が無理なら足をと、足を彼女の方へ蹴り出す。
「痛いなぁ~…なんて言うとでも思った?夢の中だから痛くないよ。和也君を除いて」
すると徐々に頭に当てていた手の力が入っていく。
「やめろっ…」
「さーん…」
「やめろって!!」
「にーぃ…」
「聞けよ!やめろっていってんだろ!」
「いーち…」
「おいっっ!!!聞けっ……」
「バーン」
頭を思いきり両手で潰した。
気絶する人はするであろう光景が繰り広げられる。血以外にも何が出ているんだと思うほどのものが出てきている。頭蓋骨も割れたので、かなり大きい効果音がなり響いた。
「さよなら、私の愛しき彼氏」
地面に倒れ込んでる死体を放っておいて、彼女はその場から消えた。
「和也!いつまで寝てるの遅刻するよ」
返事はない。
「和也?」
母親は布団をはぎ取ると、そこには…
「うわあああぁぁぁっっ!」
絶叫する程の状態に。
首から上が粉々になっており、布団やらなんやらは血で染まっている。右腕はなく、両手もない。無惨な姿で和也は永遠の眠りについたのだ。
少なくてすみません
当初は短編のつもりでした