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神魔大戦 Hero&Forces  作者: 岸野 遙
プロローグフェイズ
7/40

妄想&幼女

 だだっ広い空間。

 目の前には、デュエルには向かない丸テーブル。向かいとこちらに椅子。

 それ以外、周囲には何もない。家具も壁も、人気ひとけも。


 おかしい、ついさっきまで……

 えっと、決勝で勝って? 優勝して、表彰……された、よな? 賞品ももらったような。


「ようこそ、山城 竜太さん。

 いえ、やましぃろりーたさん、の方がいいかしら?」

「やましい事など何一つないし!」


 反射的に叫んでから、目の前の相手―――怪しいローブ&フードのおばん|(推定)を見る。


「ここはどこで、何が起きてるんだ?」

「ここは……そうねぇ。

 まずは座ってちょうだい、説明するから」


 言われて、素直に腰を下ろす。


 何が起きてるのかよく分からない。さっぱり分からない。

 でも、直感が告げている。

 面白い事が起きた、と。


「これからの説明は、私の言葉ではなく、できるだけあなたが理解しやすい言葉で説明するわ。

 私の説明が本質と若干ズレている場合はあるけれど、理解しやすさを優先するのでそこは勘弁してちょうだいね」

「わかった」


 分かりやすい説明のために、用語とか変えるわけか。

 決闘者デュエリストとしてはよくある話だ。『このカードの強さは3ゴブリンだな』みたいな説明。


「まずここは、精神世界。物質も時間も作用しない、魂と思考だけの空間よ」

「……異世界?」

「違うわ。

 一番近いものは、決闘デュエル中のあなたの妄想世界かしら?」


「どっきーん!」


 な、ななな、なんでこいつ、オレの妄想世界を知ってるんだし!?


「基本的に、ここで起きたことは現実に作用しないけれど。

 その分、妄想次第でなんでもできるわ」


 なんでも! 妄想次第で!

 それを聞いた瞬間、オレは反射的に全力で


「幼女☆召喚!」

「ちょっ、いきなり変なことしないで!」


 オレの魂の叫びしょうかんまほうに、空間が揺らめき―――

 すぐに掻き消された。


「あのねぇ、ここは私の精神世界なの!

 人の精神世界に無理やり妄想具現化するとか、あなた非常識にも程があるわよ!」

「幼女のためなら、常識など不必要!

 オレは負けない、決闘者デュエリストとして全ての障害を跳ね除け勝利する!」


 幼女幼女幼女!


美衣音みいね魅莉亜みりあ真璃亜まりあ玖瑠栖くるす華惧夜かぐや瑠々菜るるな紗沙那さざな

 オレに力を、今こそ実体化してオレとパラダイスなひと時をぉっ!!」


 止まっていた空間が、再びいくつも揺らめきだす。


「ちょっと、やめてってば!」

「ぬおぉぉぉ、オレは負けない、負けないんだぁぁっ!」


 押し込める力を跳ね返し、揺らめきが大きくなる。

 少しずつ、ぼんやりと愛する幼女達の輪郭となり―――


「待って、エネルギーには限界があるの、そんなことされたら精神体のあなたも危険なの! 駄目!」


 フードおばんの絶叫で、揺らめきも何もかも、視界の全てが闇に包まれた。


「ぜ、ぜぇ、ぜぇ……はぁ……

 な、なんでそんなことばっかりするのよぉぉっ!」


 闇の中で、おばんが絶叫した。


「危険があろうと躊躇しない。己の心を偽らない」

「躊躇しなさい!

 あなた本当に危険だったのよ、この世界そんなに強度ないんだからね。

 なんで人の話を聞かないでいきなり無茶苦茶するのよ! しかも私の妄想強度を瞬間的にでも上回るとか、人間じゃないわよ!」


 姿が見えない闇の中だが、なんとなくツバが飛んできた気がする。

 オレはそれをとりあえず気にしないことにして、胸を張って答えた。


「カードを信じ、愛し、心を託して共に戦う。

 オレが、オレ達が、決闘者デュエリストだからだ!」

「そんな決闘者デュエリストいりません!」


「……なんだよう、いらないとか言うなし……」


 あ、ちょっとグサっときた。


「はぁ……疲れるわ。

 いい? 空間を戻すけど、妄想具現化はもうしないでね?

 次にしたら、何の説明もせずに話を打ち切ってこの世界から叩き出すからね?」

「くぅ……承知した。今は妄想チャレンジはしない。

 もう一度する時は宣言してからする」

「宣言してからじゃなくて、私の許可を取ってからにしてちょうだい!」

「……わかった」


 ばれたか。ちょっと悔しい。

 でも、こんだけ大変そうな姿を見ると、ちょっとだけ悪いことしたのかもしれないなーって思ったし、まずは説明を聞こう。


「ふう……これでようやく話を進められるわ」


 おばんの言葉に、戻る視界。

 変わらぬ何もない空間……と思いきや、今日?のトーナメントで使っていた、待機用の決闘デュエルスペースになっていた。


「ついでに、余計な妄想されないように、空間も変えておいたわ。

 この方があなたには馴染みやすいでしょうしね」

「ああ、落ち着くな。ありがとう」


 我が戦場に帰ってきた気がするね。

 なんとなく黒鶴を締めなおし、居住まいを正した。


「さて、話を進めるわ。

 ここが妄想世界という話はしたわね。

 ここで話をした後、あなたにはブレンフォリナ―――異世界へ渡ってもらいたいの」


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