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神魔大戦 Hero&Forces  作者: 岸野 遙
スタートフェイズ
34/40

ローラ&告白

「……そうなの?」

「そうなんです!」


 こ、こええ。

 思わず返したオレの呟きに、噛みつくように顔を寄せるローラ。


 ちょっと椅子を引いて、逃げる体勢を整える。

 うん、これは戦術的だ。ここは逃げてもいいところだと思うし、まだ体制を整えるだけだし。


 そんなオレにお構いなく、顔を寄せてローラは続けた。


「精霊となった私は、単独で世界に存在することはできません。

 ただひたすら、あなたがこの世界に来るのを、あなたに会えるのを待っていたんです」

「う、うん」

「何もない空間で、これまでずっと、ただあなたのことを考えて過ごしてきました。

 女神さまに与えられた『妄想』という行為だけを繰り返し、ひたすら待ち続けました」


 そういや、あのおばんは妄想の女神だったっけ。

 まだ半日しか経ってないが、もう数ヶ月も前の事のようだ。


「竜太様のことは、変態だとか、幼女愛好家だとか、変態だとか、変態だとか、色々聞いてましたけど」

「待てぃ、幼女愛は変態じゃねーし!」

「それでも!

 私にとってはあなたしか居ないんだから、会いたくて、期待して、不安で、でも会いたかったんです!」


 オレの全力の突っ込みを、耳栓でもしているかのようにスルーして叫び続けるローラ。

 まあ、オレの突っ込みも無粋か。うん、我慢しないと。


「出会えた竜太様は、いきなり私をややおばんとか呼んだり、幼女召喚とかカードだけ期待してるとか、とにかく酷い人で」


 うん、黙ってます。目を逸らして顔を背けて黙ってますよー。


 と思ったら、ローラの手が頬に添えられ。

 ぐきり、と首を直されて顔を覗き込まれた。


……お、オレの突っ込みには反応しないくせに、よそ見にはきっちり反応するんじゃねぇよぅ。


「でも、ちゃんと向き合って謝ってくれたり、私を相棒として頼ってくれたり。

 駄目なところばかりだけど、ちょっとはいい所もあって」


 涙を流しながら至近距離で見つめ合って、駄目なところばかりと言われるってのはどうだろうか。

 と突っ込みたいが我慢。


「期待していたかっこいいヒーローじゃないけれど、聞いていた通り芯のしっかりした人で。

 これからずっと一緒に生きていく、私の生涯を捧げる、それもいいかなって想えていました」

「……生涯か」


 人としては、いきなり重い話だなと思うけれど。

 ローラにとっては、オレの説明役になる以外に生きる選択肢がないなら、それがそのまま生涯ってことになってしまうんだろう。


「そうです。

 私には選択肢がないから、良くても嫌でも、竜太様と一緒に居るしかないって分かっているけれど。

 どうせずっと一緒に生きるならば、素敵な人がいい、好きになれる人がいいって願っていました」


 ローラの両手が、存在を確かめるように、至近距離からオレの頬を撫でる。

 いつの間にかテーブルと茶器は消え、オレ達の間を阻むものはなくなっていた。


「……オレは、ローラにとって、その、大丈夫だったのか?」

「駄目に決まってます!」


 うわ、全力否定されたし!


「幼女のことしか考えてないし、人の気持ちは分かってくれないし、ややおばんとか言うし」


 顔を動かせないから、目線だけ逸らして黙ってますよー。


「思考がデュエリストでカードコレクターだし、私のことちゃんと見てくれないし」


 目を逸らしたオレに構わず、思いの丈をぶつけるローラ。


 まだ涙は止まっていないけれど、どこからか射す光に煌めくのが綺麗だなと思った。

 涙も横顔も、顔のパーツの全ても。


「勝手に、死のうとするし!」

「死ぬ……わけじゃないんだけどな」

「でも、一緒です!」


 一緒か……

 まあ、そうだよなぁ。命はあっても、死ぬのと大差ない状態だよな。


「せっかく……せっかく、出会えたのに。

 やっと出会えて、一緒に過ごせて。好きになれそうかな、ずっと一緒に居てもいいかも、そう想えたのに!」

「駄目に決まってるのに、買いかぶり過ぎだろ」

「そうじゃないです! 竜太様は駄目だけど、素敵なところもちゃんとあります!」


 あー、なんだこれは。

 美少女が至近距離で泣きながら褒めてくるとか、なんなんだよこれは。


 恥ずかしいというか、とにかく顔が熱いし。

 辛いわけじゃないけど、なんか、ひたすら落ち着かないし。


「だから!

 勝手に死ぬとか決めて、私はそれが許せないんです!」


「わ、わかった、わかったから落ち着いて、お茶のお代わりをお願いしよう。な?」

「わかってません!」


 ローラは怒りながら、頬から手を離し。


 強く、強く。

 しなだれかかるように、オレに抱きつき胸に顔を埋めた。


「本当に……分かってないんだからぁ……」

「んー、あー……うぅ」


 ど、どうすりゃいいんだ。

 泣きじゃくるローラに、オレは何を言ってやれるんだろう。


「えーっと、その……ごめん」


―――何も言わなくてもいいか。ただこうして、頭を撫でてやれば。


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