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神魔大戦 Hero&Forces  作者: 岸野 遙
スタートフェイズ
33/40

ローラ&お茶会

「レベルアップ、おめでとうございまーす☆」


「……は?」


 オレの両手を握りしめ、ぴょんぴょんと跳ねるローラ。

 その振動で大きな胸がゆっさゆっさと上下するのに視線―――見てねーし!


「ん、どうかしましたか?」

「いや、えっと……あれ?」


 胸は違うんだ、胸は。


 デュエルには勝利した。

 悪魔はやっつけた。

 その後―――


「って、レベルアップじゃねーだろ!

 相手が偽物で、デュエルは勝ったけど敵が迫ってきて、宙づりにされて―――」

「絶体絶命、ですよね」

「そうだよ!」


 なぜか微笑むローラに、思わず声を張り上げる。


「落ち着いて下さい。

 まずは、お茶にしましょう?」

「お茶にしましょう、じゃねーだろ!」


 今回の妄想空間は、白を基調とした家具の並ぶおしゃれな部屋に、レースのかかった丸テーブル。

 2組のティーカップから湯気が立ち昇り、茶うけとしてドライフルーツらしきものも添えられている。


「どうぞお座り下さい、竜太様。

 ここでこうやってお話できるのも、これが最後でしょうから」

「……」


 そうか。言われてみて気づいた。

 確かに、ここに来れるのも、これが最後になるのだろう。

 デュエリストとして、カードを扱うことが出来なくなるなら。


 そうだな。そう言われると、座って話すのも悪くないかもしれない。

 ローラは頑張ってくれたんだし、今度ゆっくり時間をと言われていたんだ。

 この先がないなら、せめて今、約束を果たさないとな。


「そういうわけで、レベルアップおめでとうございます☆」

「ん、ありがとう」


 腰を下ろし、紅茶に口をつける。

 華やかな香りと暖かさが、身体に染み入る。


「……おいしいよ」

「お口にあったなら良かったです」


 茶うけに手を伸ばし、小さく一口だけ齧る。

 それからまた、紅茶を啜った。



 何を言えばいいのか、よく分からない。

 ローラは、オレに悪魔と約束しろと言っていた。

 客観的に考えれば、それが正しい。

 オレだって、傍から見てたらそうしろと言うだろう。


「竜太様は」

「ん?」

「どうして、約束しなかったのですか?」


 だから、それを聞かれることは、ある意味で当然だと思った。


「悪魔に、言った通りだよ。

 ここでミーネちゃんを見捨てたら、身体は生きても、心が死ぬ。

 オレは、オレを許せないし、納得できなくなる」

「そのために、命を捨てるようなことになっても?」


「実は、命を捨てるってのに、実感がないんだよな」


 できるだけ、軽く言い、軽く笑う。


「本当はあの時に死んでたはずのオレが、今日までなぜか生きて。

 でも、みんなは死んでいて。

 その差が何なのか、考えても分からなかったよ」


 運とは、言いたくない。

 でも、運命とは、もっと言いたくなかった。


「……自分に納得のいく死に場所を、探してらしたのですか?」


 死に場所、か……

 それを探しているのだろうかと考えた時もあった。

 明確な答えは出なかったけど、


「違うと思ってるよ。

 それに、今回のは無駄死にもいいところだ。いい死に場所とは言えないだろ?」

「そうですね。

 誰かを守ったわけじゃなく、ご自分に拘った結果ですから」

「ははは、その通りだな。

 自分に拘ったか、まったくだ」


 そうだ、オレは自分に拘ったんだ。

 ありたい自分に。納得できる自分に。


「ありがとう、ローラ。なんかすっきりしたよ」

「……」


 紅茶を飲み干す。

 無言で俯くローラを、真っ直ぐ見つめる。


「今日知り合ったばかりだし、こんな最後で申し訳ないけど。

 ローラは頼れるパートナーだったよ」




「―――そんなの、あんまりですよ」

「え?」


 オレの言葉に、顔をあげたローラの瞳から。

 いつの間にか、涙が流れていた。


「あんまりです!

 私は、私は、ずっとあなたを待っていたんです!」


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