表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神魔大戦 Hero&Forces  作者: 岸野 遙
スタートフェイズ
29/40

ポーン&概念

「きみはおもちろかったでつけど。

 わたちのぢゃまをつるなら、おたらばでつ」


 手を振るう悪魔の眼前に、数十規模の火の玉が浮かび上がる。


「ネタの割れたきみには、もう用はないでつ」


 ひらりと振るわれた手に従い、いくつもの火の玉がオレ目掛けて降り注いできた。


「ポーン、ブロック!」


 その身を盾に、攻撃を受け止めるポーン。

 爆発が巻き起こり、やがて攻撃が終わって煙とともにポーンが姿を消し―――


「とれでは、だいにぢん~」


 まだ半分は残っていた火の玉が、ポーンの居なくなったオレ目掛けて降り注ぐ!


「く、何回も攻撃するんじゃねぇ!」


 くそう、同じユニットが1ターンに複数回の攻撃はできないっての!


 敵の攻撃を必死でかわす。

……と言うかかわせたのは最初の数発だけで、一発くらってしまえば後は盾を構えて身を縮めることしかできない。


「つ、ぐうぅぅ」

「おや、ちぶといでつね」


 身体中がびりびりと痛い、身じろぎするだけでも叫び出しそうになる。

 でも、駄目だ。こんなところで負けてられない、オレはミーネちゃんを助け出して友達になるんだ!


「ターンスタート!」


 オレの叫びに従い、カード達が光を放つ。

 引いたポーン2体を呼び出す。これでターンエンドだ。


「今度は2体でつか。

 ならこちらは、5回くらい攻撃ちまつかね」


 あいつの周囲に巨大な火球が5つ浮かぶ。

 一発一発が、戦闘の最初に使われた、ポーンを一撃で消し飛ばしたサイズ。



……相手は複数回攻撃してくる、どうすればいい?

 エリート&フォースのルール上、1ターンに攻撃は1回だけだ。だからこそ、どれだけ強力な攻撃であっても、ユニット1体を犠牲にすれば凌げるんだから。

 攻撃力5のユニットが、攻撃力1ずつ5回に分けて攻撃してきたら、そりゃぁゲームが成り立たない。

 ポーンで2発防いでも、あと3発でオレや村人を攻撃可能だとか詐欺もいいところだ。


 そうだ、ゲームが成り立たないんだ。

 オレはエリート&フォースのルールに則って戦っているんだから、オレと戦う以上は同じルールを守ってもらわなきゃ困る。


 現実とカードゲームのルールの境目がよく分からないなら、オレが好きに決めてやる!


「ポーン、このターンのあいつの攻撃をブロックだ!」


 果たして、オレの指示を正確に受けたポーンの1体は。

 オレの次のターンが開始するまでのあいつの攻撃を、全て受け止めてから消滅した。


「なんと、ここにきてゴーレムの耐久が上がったのでつか!

……いや、わたちの攻撃つべてをふてぐ、という概念にちたがったということでつね。なるほどなぁるほど」


 なんだよ、オレが一生懸命考えたことを、一瞬で見破るなよ!


「でもこれは、あまりおもちろくないでつねぇ。

 との概念の使い方を覚えられると、ひょっとちてわたちでも、くてんつるかもちれまてん」

「苦戦じゃなくて、オレが倒してやるし!」


 ネクストターン。

 ドローは2枚。引いたポーンを召喚し、引いたリザーブカードをセットする。


「あいつを貫け、ポーン!」


 オレの意思に従い、槍状に変形するポーン。それに対する悪魔は


「おお怖い、あまりいぢめないで欲しいでつ」


 そう言いながら、翼で捕まえた行き倒れさんとミーネちゃんを盾のようにこちらに向けた。


「くっ」


 慌てて攻撃を取り消し、何もできずにターンエンドを宣言する。


「盾は便利でつね!

 たて・・、わたちの攻撃は、っと。

 概念ゴーレムは厄介でつが、こういう絡め手ならだいぢょうぶでちょう」


 振るう手にあわせ、オレの周囲……村人も含めて村の中の一角が、炎の壁に包まれた。


「今たら逃げるとかつまんないのはなちでつよ?

 との炎の輪はゆっくりとてばまりまつから、ぢかんかてぎもごぢゆうに」


 カード的には、フィールドカードか継続効果のスペルカードだろうか?

 だとすると、ユニットでは手が出せない。

 スペルやリザーブでなんとかするしかないだろう。


 だが、相手が行動してくれたおかげでオレのターンが回ってきた。

 ドロー。またポーンを1体召喚して……



 どうする。

 あいつが、ポーンのことを概念がどうとか言っていたな。

 確かに攻撃も防御も、カードのルールに従い処理されている部分がある。


「攻撃ちてこないなら、こちらからいきまつよ!」

「―――いや、今はこちらの攻撃ターンだ。

 ポーン、二人を傷つけないように、あの悪魔を攻撃だ!」


 きっと、回転したり分裂したりすれば、二人を避けて悪魔だけ攻撃できる! はず!


 オレの意思を受けたポーンが、その身体を細く尖らせ突き進む。


「と、とんなのづるいでつ!」


 そのまま突き進み、盾と翳された二人に触れる直前でポーンが細かい破片に分かれた!


「く、くの!」


 盾にされた人質と、迎え撃つ炎。

 それらを避けて、細かく割れたポーンが回り込むように相手の身体に降り注いだ。


 ポーン、すげえ!

 ポーンのすごさに感動しつつ、こっそりとターンエンド。


「きたないでつ、ぐぬぬ……」


 血が出るわけでもなく、見た目上はさしたるダメージはない。だが―――


「やばいでつ、なんだかひぢょーにこれいぢょうくらうのはやばい気がつるでつ。

 こうなったらなりふり構わぬでつ、とのゴーレムを片付けるでつ!」


 悪魔が再度二人をこちらに向けて、空いた手を伸ばした。


「ああ、盾ではないでつよ?

 君がわたちを攻撃ちたら、この二人の腕を千切りまつ」

「なっ」


 盾ではなく、人質。

 あいつにとっては大事らしい二人を、平然と。


 いや、そもそも本当に大事だったら盾にしていないよな。

 命だけは大事なようだが……だからって怪我させていい理由にはならない。


「との概念ゴーレムの力を考えると、もちかちたら攻撃を何回たれたらとかありとうでつ。

 この二人がだいぢなら、今つぐとのゴーレムを片付けるでつ!」


 言いながら、無造作に炎に包まれた手を伸ばし。

 ミーネちゃんのひとまとめにした茶色い髪を握ると、燃え上がる手でぶちりと焼き千切った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ