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神魔大戦 Hero&Forces  作者: 岸野 遙
スタートフェイズ
28/40

観察&終戦

 引いたカードは、ポーンが1体とスペルが1枚。

 すぐに決着とはいかないが、試すにはちょうどいいスペルが来たな。早速使ってみることにする。


 わーいスペルだー、使ってみたらどうなるんだろー! 一秒でも早く見てみたいよね、どっきどきだね☆

 というわけではない。断じて違うし。


「あの悪魔に対し、スペル【スペルアロー】発動!」


 翳したスペルカードが発動し、3本の鈍く光る魔法の矢がそこそこな速度で敵悪魔に迫る。


「むむきゃっ、普通のぢゅつも使えるのでつか!」

「大丈夫だよ、このスペルで死ぬことはないから」

「!?」


 意趣返しとばかりに、相手のセリフを返してやりつつ。


 矢は身体を覆った翼に突き刺さり、弾けて消えた。

 表面上、効果は全くなさそうである。ダメージ、ちゃんと入ってるといいんだがなぁ。


 ちなみに、スペルの効果はこんな感じだ。

『対象のユニットに、1ダメージを与える。このスペルの効果でとどめを刺すことはできない』


「ちょっとひりひりちまつが、こんなもんぢゃやられまてんよ!」

「分かってる、そう焦るなよな。

 ポーン、あいつを攻撃だ!」


 いつものように、頭を支点に胴体が敵の方を向き。

 炎の雨をブロックした時とは正反対に、細く長くなるポーンの胴体。


「貫け、ポーンランス!」


 スペルアローよりさらに早く、ポーンもまた矢のように飛び出す。


「おおお!」


 躱そうとする悪魔を追いかけるポーン。

 悪魔が手から放った炎弾を受けつつ、切っ先がまたしても悪魔の翼に刺さって消えた。


「だいぶひりひりちまつ。

 なるほどなぁるほど、受けただめーぢいぢょうの何かを感ぢまつ。これいぢょうは食らわない方が良たとうでつね」


 ポーンの刺さった翼を、まるで水を振り払うようにぶんぶんと振り回す。

 そんな相手を後目に、オレはポーンを1体召喚してエンドした。


 呼び出されたポーンが、オレの眼前でほんの少しだけ浮いている。

 その様を、攻撃を仕掛けない様子を見て、悪魔は大きく頷くと。


「でもこれで、だいたいきみの力はわかったでつ」


 事もなげに、そう微笑んだ。




「まづ、力を使うには予備どうたとちて、手をこつるのと、手を掲げるあるいは術をたけぶのが必要なんでつね」


 手をこつる……こする、か。

 多分、左手のデッキからカードをドローしていることを言ってるのだろう。当たっている。


 デュエル中のカードについては、オレ以外からは全く見えないらしい。手札も場札も、デッキやマスターカードも。


「とちて、君にはほとんど魔力がないち、力を使うのにほとんど魔力を必要とちない。

 そのかわりに、ぢぶんのやりたいことが必づいつでもできるわけでない」

「随分とまぁ、分かったように具体的に言うんだな?」

「分かってまつからね。

 発する魔力量と揺らぎを見ればレートは分かりまつ。ゴーレムを呼ぶのも術を使って矢を飛ばつのも同ぢ魔力量でちた。

 さらに、ゴーレムを呼ぶかづもまちまち、2体で守ったり1体で守ったりもばらばら」


 いや、2体で守ったのは、1体でまとめて防御できるって思いつかなかったからなんだがなぁ。

 そんなことは、当然教える必要はないけど。


「そのくて、こちらが込めた魔力の量によらづ、ゴーレムは必づ攻撃を1回だけ防御ちて、消える。

 今の攻撃も、同様に1回攻撃ちて消える。

 1回だけ命令を出てるとか、1度攻撃を受けると必づ消えるとか、とういうていやくがあると見まちた」


 的確だな、こんちくしょう!

 視界の端で、ローラが険しい表情をしている。


……いたよ? 影薄いけど、ちゃんと傍にいるよ?

 ついでに、なぜか小型化して腰に刀のようにぶら下がったマグロもいるよ?


「色々な術を複合ちた代わりに、つきに力をてんたくできるわけぢゃない能力。

 でも力については、概念に近いひぢょうに強い力。ありえないレート値。

―――ふぉーつもち、ということでつか。なるほどなぁるほど」


 ?


「たて、だいたいきみの力は分かりまちた。

 ひぢょうにおもちろい力だと思いまつが、魔力量があまりに低いために、わたち好みではないことも分かってちまいまちた」

「そうかい。なら、このまま何もなかったことにして帰るか?」


 攻撃はされたが、今のところオレにも村人にも実害はない。

 このまま大人しく引きさがってくれるなら、喜んで見送ってもいいとは思う。


 今までのこいつは、完全に観察と遊んでいただけだろう。そのくらいはオレでも分かる。


「んー……

 たちかに、今日はおつかいもぶぢに終わり、思いがけないお宝もあり、わたちはとってもご満悦でつ。

 きみの力は好みではないので、ぶちのめちて持って帰る程でもないでつ」


 めんどくさそうに言ってくる悪魔。

 若干むかつく気もするが、実害のなかった相手に喧嘩を吹っかけて暴れる気はないんだ。

 うん、お帰りいただこう。


「わかった。

 じゃあオレも襲われたことは水に流すから、今日のところは大人しく帰ってくれないか?

 こっちも連戦で疲れてるんだよ」

「わかりまちた。楽ちかったので、まんどくちて帰りまつ。

 とれではみなたん、たようなら」


 よっこいしょ、と。

 悪魔が、屋根の上に置いてあった、何かを翼で抱え上げた。

 それは―――


「ま、待て! それはなんだ?」

「ん、これでつか?

 これが、ぼくのおつかいでつよ」


 悪魔が翼で抱え上げたもの。

 それは、ミーネちゃんの家で隠れていたはずの、行き倒れさんだった。


「……一つ、教えろ」

「はい?」

「その人と一緒に、獣人の親子が居たはずだが」

「ああ、いまちたねぇ」


 振り返った悪魔は、最初と変わらず笑みを浮かべている。

 翼と角がなければ、美少女か美少年か、とても魅力的な人間に見える、その姿。

 なんの悪意も悪びれもせず、無邪気な笑顔で、悪魔は。


「親は、やくとくによりきでつたてて見逃ちまちた」

「子供は!」


 オレの叫びに、翼を高く掲げて。


「ぢゅうぢんにはありえぬほど強大で、ちかも曇りのないとてもつんだ魔力。

 とってもわたち好みでちたので、おつかいのついでにいただいちゃいまちた」


 翼の内に眠る、行き倒れさんとミーネちゃんを示した。



「―――返せ」

「いやでつ」


 聞き返すことも、馬鹿にすることもなく。悪魔は平然と答える。

 だが、オレだっていやだ、絶対に許せない。


「その子は、オレの」


 ミーネちゃん。

 笑顔。ぬくもり。言葉。


 約束。


「オレの、友達になるんだ!」


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