欲張り&新カード
「貫け、ポーンランス!」
殴りかかってくる盗賊と、迎え撃つポーン。
激しい衝突の末、盗賊はその場に倒れ、ポーンは掻き消えた。
『バトルの結果、ポーンと敵ユニットが相打ちとなりました』
ローラの実況に一つ頷く。
今デュエルスペースには、ユニットとしてポーンが一体、リザーブカードが一枚残っている。
「なんだ、こんなとこにガキが残ってたのか」
やべ、見つかった!
「ポーン、あいつに攻撃だ!」
いつものように先端を持ち上げ、敵に向かって突っ込むポーン。
だがしかしまだ距離がある、盗賊は槍を構えると声を張り上げた。
「おい、変なガキがいるぞ!」
槍を突き刺されたポーンがそのまま盗賊へ突っ込み、相打ちとなる。
しかし倒した見回りの呼び声に気づいた盗賊たちが、こちらへ向かってきて―――
「レベルアップ、おめでとうございまーす☆」
傍らのローラが、お子様ライスサイズの旗を振りながら微笑んだ。
いつの間に用意したのか……聞いたらまた逆襲されそうだから、聞くのはやめよう。
ちなみに、もう片手にはカードを持っている。
あれが今回のレベルアップ祝いだな、見るの楽しみだ。
「いいタイミングで上がったな」
「そうですね、私もびっくりです」
うんうん頷くローラ。
「実は、事前に上がってたけどカードを渡すのを温存してた……とかないよな?」
「そんなことより、この後どうされるかしっかり考えて下さいね」
全力でスルーしやがった!
まあでも、確かにローラの言う通りだ。この時間は有効に活用しよう。
「最後にちらっと、集まる盗賊たちが見えてたな。
5,6人は居たはずだ」
「はい。それと、見回りが一人ですね」
少なくとも6人。
「さらに、村人が人質にされそうな状況か。
どうしたらいいと思う?」
「村から急いで逃げ出すのがいいと思いますよ」
あっさりと、村人を見捨てるというローラ。
「敵を倒すだけならいいですけれど、目の前にいる人質を見殺しにするとか出来ないでしょう?」
「出来ないと思う」
いくら関係のない人とは言え。
目の前で刃物を突きつけられてる人間を見殺しにして戦いは……できないだろうなぁ。
自分の命の方が大事だし、自分が殺されるつもりはないけど。
だからって、殺されるのを見殺しにして平然としてられるとは思えない。
「第一、見殺しにできるとしても、それはしたくないよ。
オレは、器用な大人になりたくないし、自分に納得したい」
「わかりました。
であれば、逃げた方がいいと思います」
うん、理屈は分かる。
でもやっぱり、それも嫌なんだよなぁ。
「逃げたら多分、ミーネちゃん達も捕まるよな」
「……でしょうね!」
いきなり、あからさまに不機嫌そうな表情で。
むすっとしてます!と言わんばかりに、ローラが答えた。
ローラのよくわからない態度は置いておくとして。
ここで逃げたら、残った盗賊たちが村中を回って、きっと残った村人を探すだろう。
ミーネちゃん達が見つからない可能性もあるけれど―――見つかる可能性もあるんだ。
「自分も村人も誰も死なせず、盗賊を倒したい」
「……竜太様は、欲張りですね」
「うん……欲張りだな」
でも、妥協する前に、まずはやりたいことを考えたい。
だってオレは、気のいいオタクで。
潔癖な子供で。
絶対的な決闘者なのだから。
「ローラ、なんとかならないかな?」
「説明カードに、方法を尋ねるのですか?」
説明カードに、方法を尋ねるのか?
なんだか、とても深い意味な気がする。
問いかけたのは、何の気なしだけど。
オレは―――
「そんな難しいことを考えたわけじゃないさ。
ただ、ローラはオレの相棒みたいなもんなんだろ?
サポートしてくれると言ったし、オレ以上にオレのスキルについて理解している。
だから仲間に相談したんだよ」
これでも、とても頼りにしてるんだぜ、と。軽く付け足す。
「はあぁ……」
そんなオレに、なぜか大きなため息をついて。
「わかりました。
そうまで言われては、竜太様の期待に応えさせていただきますわ」
さも、やれやれだぜと言った態度で。
でも、とても嬉しそうな表情で。
ローラは、手にしていたカードをしまって、服の中から別のカードを差し出した。
「まずは、レベルアップのお祝いのカードです」
「今、なんかすり替えなかったか?」
「気のせいです!」
オレの疑問を力いっぱい否定し、誤魔化すためにわざわざローラがオレの手を握る。
すべすべの手に、優しい温もり。
どきどき―――なんかしねーし! なんだよう。誤魔化すなよう!
邪念を振り払うように、ローラから一歩離れてカードを見る。
「このカードは―――」
この状況下で。
オレの望みで。
ローラの返事で。
その意味が、このカードに込められてるのだとしたら。
「ありがとう、ローラ」
「ご自分がしたいと言った事、貫いて見せて下さいね?」
「ああ、オレに任せろ!」
ローラからもらったカードを翳す。
オレは、オレを貫いてみせるさ。
オレの手の中にあるカード。
それは、ありふれたスペルカードであった。
【迷子の軍勢】 レベル1 スペル




