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神魔大戦 Hero&Forces  作者: 岸野 遙
スタートフェイズ
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22/40

欲張り&新カード

「貫け、ポーンランス!」


 殴りかかってくる盗賊と、迎え撃つポーン。

 激しい衝突の末、盗賊はその場に倒れ、ポーンは掻き消えた。


『バトルの結果、ポーンと敵ユニットが相打ちとなりました』


 ローラの実況に一つ頷く。

 今デュエルスペースには、ユニットとしてポーンが一体、リザーブカードが一枚残っている。


「なんだ、こんなとこにガキが残ってたのか」


 やべ、見つかった!


「ポーン、あいつに攻撃だ!」


 いつものように先端を持ち上げ、敵に向かって突っ込むポーン。

 だがしかしまだ距離がある、盗賊は槍を構えると声を張り上げた。


「おい、変なガキがいるぞ!」


 槍を突き刺されたポーンがそのまま盗賊へ突っ込み、相打ちとなる。

 しかし倒した見回りの呼び声に気づいた盗賊たちが、こちらへ向かってきて―――




「レベルアップ、おめでとうございまーす☆」


 傍らのローラが、お子様ライスサイズの旗を振りながら微笑んだ。

 いつの間に用意したのか……聞いたらまた逆襲されそうだから、聞くのはやめよう。

 ちなみに、もう片手にはカードを持っている。

 あれが今回のレベルアップ祝いだな、見るの楽しみだ。


「いいタイミングで上がったな」

「そうですね、私もびっくりです」


 うんうん頷くローラ。


「実は、事前に上がってたけどカードを渡すのを温存してた……とかないよな?」

「そんなことより、この後どうされるかしっかり考えて下さいね」


 全力でスルーしやがった!

 まあでも、確かにローラの言う通りだ。この時間は有効に活用しよう。


「最後にちらっと、集まる盗賊たちが見えてたな。

 5,6人は居たはずだ」

「はい。それと、見回りが一人ですね」


 少なくとも6人。


「さらに、村人が人質にされそうな状況か。

 どうしたらいいと思う?」

「村から急いで逃げ出すのがいいと思いますよ」


 あっさりと、村人を見捨てるというローラ。


「敵を倒すだけならいいですけれど、目の前にいる人質を見殺しにするとか出来ないでしょう?」

「出来ないと思う」


 いくら関係のない人とは言え。

 目の前で刃物を突きつけられてる人間を見殺しにして戦いは……できないだろうなぁ。

 自分の命の方が大事だし、自分が殺されるつもりはないけど。

 だからって、殺されるのを見殺しにして平然としてられるとは思えない。


「第一、見殺しにできるとしても、それはしたくないよ。

 オレは、器用な大人になりたくないし、自分に納得したい」

「わかりました。

 であれば、逃げた方がいいと思います」


 うん、理屈は分かる。


 でもやっぱり、それも嫌なんだよなぁ。


「逃げたら多分、ミーネちゃん達も捕まるよな」

「……でしょうね!」


 いきなり、あからさまに不機嫌そうな表情で。

 むすっとしてます!と言わんばかりに、ローラが答えた。


 ローラのよくわからない態度は置いておくとして。

 ここで逃げたら、残った盗賊たちが村中を回って、きっと残った村人を探すだろう。

 ミーネちゃん達が見つからない可能性もあるけれど―――見つかる可能性もあるんだ。


「自分も村人も誰も死なせず、盗賊を倒したい」

「……竜太様は、欲張りですね」

「うん……欲張りだな」


 でも、妥協する前に、まずはやりたいことを考えたい。

 だってオレは、気のいいオタクで。

 潔癖な子供で。

 絶対的な決闘者(デュエリスト)なのだから。


「ローラ、なんとかならないかな?」

「説明カードに、方法を尋ねるのですか?」


 説明カードに、方法を尋ねるのか?

 なんだか、とても深い意味な気がする。


 問いかけたのは、何の気なしだけど。

 オレは―――


「そんな難しいことを考えたわけじゃないさ。

 ただ、ローラはオレの相棒みたいなもんなんだろ?

 サポートしてくれると言ったし、オレ以上にオレのスキルについて理解している。

 だから仲間に相談したんだよ」


 これでも、とても頼りにしてるんだぜ、と。軽く付け足す。


「はあぁ……」


 そんなオレに、なぜか大きなため息をついて。


「わかりました。

 そうまで言われては、竜太様の期待に応えさせていただきますわ」


 さも、やれやれだぜと言った態度で。

 でも、とても嬉しそうな表情で。

 ローラは、手にしていたカードをしまって、服の中から別のカードを差し出した。


「まずは、レベルアップのお祝いのカードです」

「今、なんかすり替えなかったか?」

「気のせいです!」


 オレの疑問を力いっぱい否定し、誤魔化すためにわざわざローラがオレの手を握る。

 すべすべの手に、優しい温もり。

 どきどき―――なんかしねーし! なんだよう。誤魔化すなよう!


 邪念を振り払うように、ローラから一歩離れてカードを見る。


「このカードは―――」


 この状況下で。

 オレの望みで。

 ローラの返事で。


 その意味が、このカードに込められてるのだとしたら。


「ありがとう、ローラ」

「ご自分がしたいと言った事、貫いて見せて下さいね?」

「ああ、オレに任せろ!」


 ローラからもらったカードを翳す。

 オレは、オレを貫いてみせるさ。


 オレの手の中にあるカード。

 それは、ありふれたスペルカードであった。




【迷子の軍勢】 レベル1 スペル


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