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神魔大戦 Hero&Forces  作者: 岸野 遙
スタートフェイズ
15/40

行き倒れ&お友達

 ソファに寝かされていた行き倒れさんは、眠り姫もかくやという程の美人おばんだった。

 肩にも届かぬほど短いながら、燃え盛る炎のように目を引く髪。

 健康的な肌の上にあっても鮮やかに、長いまつ毛の先まで真っ赤だ。

 寝ているのでよく分からぬが、背もそこそこある感じか?

 昔のオレと同じくらいあるかもしれない。

 スタイルは、まさしく細くすらっと。控えめな胸をかすかに上下させていなければ、彫刻のようだと思ったかもな。


 おばんなのが惜しい。

 いや、惜しくないが。おそらく二十歳前か、もう5年くらい若ければと思わなくもない。


 服装は動きやすそうなズボンスタイルだし装飾品の類はないようだが、衣服に疎いオレでも分かるくらいには上質な生地のようだ。

 男装ではないが、かっこいい感じ?


……オレと比べる必要はない。

 性別も違うし年齢も違うし。比べる必要はねーし!


「盗賊かもしれないとか、不安じゃないの?」

「そりゃぁもちろん不安よ?

 でもまぁ、こんだけ綺麗な恰好で盗賊ってこともないだろうし、一人拾うも二人拾うも同じじゃない?」

「う……すみません」

「あはは、いいのいいの。人間当番だからね」


 翳りなく笑うお姉さんには、頭を下げるのも違うかなぁ。

 なんとなく愛想笑いを浮かべつつ、オレもそばの椅子に腰を下ろした。


 どうでもいいが、年齢的にはお姉さんの方がおばんよりずっと上である。

 呼び名が変だとかは気にしたらいけない。

 世話になってる恩もある。

 仲良くしておかないと、ミーネちゃんとの関係性に支障をきたすかもしれないし。


「でも獣人って、人間に狙われてるんだよね?」

「そうねぇ……

 全部が全部ってわけでもないけど、盗賊とかに捕まれば奴隷にされるわね」

「そのわりに、お姉さんは人間を恐れてない感じがする」


 オレの言葉に笑うと、小さく頷いて


「ミーネの母親、義理の姉は人間なのよ。

 もうずっと会っていないけどね」


 ミーネちゃんはハーフだったのか。

 それって


「そ、その」

「ん、どうしたのミーネちゃん?」


 オレの思考を遮る可愛い声に、顔を向けて問いかける。


「わっ、わたしがハーフだから、その」


 恥ずかしそうに、ちょっと辛そうにもじもじする。

 かわええ。


「その……やっぱり、変、かなぁ……?」

「え?」


 変って、何が?


「ハーフだから、その、気持ち悪いとか、不吉だとか」

「はああ!?

 どこのどいつだそんなふざけたことを言ったやつは!」

「きゃわっ」

「ハーフだとかで、そんなことを言ったやつがいんのか。

 オレのミーネちゃんになんてことを、許せん!」


 思わず立ち上がったオレに、慌てたミーネちゃんがおろおろと握りしめた手に触れた。


 あ、なんかすごい幸せだ。

 幸せ過ぎてオレの怒りのオーラが霧散していく……これが天使ということか。


「だ、大丈夫だから、落ち着いて、ね?」

「そうだよリュータ君、あたしが殴ったから心配しなさんな」


 なんか斜め上な援護の気がするぞ、それ。

 でもおかげで冷静になれた気もするし、とりあえず座る。


「ミーネちゃん!」

「は、はいぃ」


 ミーネちゃんの手を取り、顔を覗き込む。

 声が上ずって落ち着かなさそうなミーネちゃんも可愛いが、今はぐっと堪えて。


「ハーフだとか親がどうとか、そんなことでいじめられたらいつでもオレに言ってくれ。

 いや、どんな理由であれ言ってくれ。オレは絶対きみの味方だ!」


 こんな愛らしい幼女を悲しませる奴を、オレはけして許しはしない。

 そう、例え勝てない相手だとしても、絶対にぶん殴ってやる!


「あ……ありがとう……」

「ついでに言っちゃうと、ミーネの父親は獣人特有の病気で、ミーネもそうなんだよね」

「お姉ちゃん!」


 かるーく言ったお姉さんの言葉に、真っ赤になったミーネちゃんが叫ぶ。


「それで?」

「それで、病気がうつるだなんだといじめられて、村の中で孤立してるんだけど。

 どう思う?」

「ぶっ飛ばす!!」


 オレの宣言に、なぜか拍手するお姉さんと、驚いた顔で見上げるミーネちゃん。


「いい返事だね、気に入ったよ。

 ミーネ、良かったね?」

「う……うん、良かった……のかな。

 ねえ、喧嘩とか、しないでね?」

「うん、わかった!」


 うるうるしたミーネちゃんの眼差しの前には、生半可な怒りは無力です。

 元気に即答すると、手を握ったまま椅子に腰を下ろした。


「でも、何があってもオレはミーネちゃんの味方だから。

 困ったことはして欲しいことがあれば、遠慮なく言ってね」

「ありがとう、リュータくん。

 なら……」


 オレの言葉に、一瞬だけちらりとお姉さん(にやにやしていた)を見て。

 ぐっと握った手に力をこめて、ミーネちゃんが言った。


「お友達になってください!」




 お友達になってください……


 お友達になってください……


 お友達になってください……




 ミーネちゃんの言葉が、脳裏でリフレインする。



 お友達に。


 誰が? オレが。


 誰と? ミーネちゃんと。


 何に? お友達に。



「う、うおおおお!」

「きゃあっ」


 お友達!


「是非っ! 早速っ! 心からっ!」

「ひっ」

「お友達になってください!!」



 オレは、心の底から幸せであった。もう何もかもぶっちぎって。



 苦節27年、生まれてきて良かった!


 暴走し過ぎだとお姉さんからありがたい突っ込みチョップをいただいたが、その痛みさえ祝福だと感じるくらいにぼくはいま幸せです!


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