表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神魔大戦 Hero&Forces  作者: 岸野 遙
スタートフェイズ
14/40

マスター&行き倒れ

 説明を一通り確認し終わったオレは、黒鶴のディスプレイを消した。

 一応、途中だった歌は最後まで歌う。


 確認しながらの時は忘れていたが、改めて歌うと超恥ずかしいぞこれ!


「……ん、んんっ。

 ミーネちゃん、試してみたいからちょっといいかな?」

「うん、わかった」


 ミーネちゃんは素直に頷くと、オレから少し離れてベッドに腰掛けた。


 うああ、幼女の温もりが遠ざかってしまった!

 オレは世界の選択を誤ったのだろうか……いやしかしミーネちゃんを守るためにも力が。うああ。



 葛藤を乗り越えたオレは、黒鶴を締め直して部屋の中で立った。

 さあ、ようやくお待ちかね。カードを使うぞ!


 カードポーチに指を入れると、脳裏にカードリストが浮かぶ。

 所有しているカードは、現在ちょうど10枚だ。

 レベルアップでもらった5枚。

 準決勝の後におばんからもらった3枚。

 オレの魂のカード『極光翼の不死鳥オーロラフェザーフェニックス』が1枚。

 そして、マスターカードが1枚だ。


 ていうか、なんだこのマスターカードは。

 早速取り出したマスターカードには、少年の絵が描かれていた。


「リュータくんの絵のカードだぁ」

「やっぱりこれ、オレに見える?」

「うん、かわいいね!」


 か、可愛いとか言われてしまった……

 可愛い幼女に、男のオレが可愛いとか言われてしまったじゃねーか!


 誰だ、このデフォルメされたリュータ少年のイラスト描いたやつは!

 上手だぞ、こんちくしょう!


 気を取り直して、マスターカードを黒鶴にセットする。

 デュエル用でなければ、これだけで使えるはずなんだよな?


「冒険道具セットを、マスターカードにエンチャント!」


 一緒に取り出した冒険道具セットをマスターカードに重ねて叫ぶと、突然オレの両肩にずしりと重みがかかった。

 たまらず後ろに転げるが、かばんがあったので痛くはない。ミーネちゃんにぶつからなくて良かった。


 どうやら自動装備の機能付きらしい。

 でもこれ、いつでもエンチャントできるんだから、背負って持ち歩くことないよな?


「わー、かばんが出てきた!」

「どれどれ……」


 自動装備についてはおいといて。

 下ろして中を見てみると、確かに冒険の役に立ちそうなものが色々詰まっている。

 ロープやランタン、非常食やテント、毛布など。こりゃぁ確かに重たいわけだ。

 うん、道具セットを持ち運びはないな。カードなら重量はゼロなんだし、今は子供の身体なんだから。



 気を取り直して、次の確認だ。

 次に取り出したカードは、初心者の盾。

 同じようにエンチャントすると、元から装備?していた冒険道具セットが送還されて左手に円形の盾が出現した。

 うん、これは自動装備でありがたい。


「今度は盾だ、リュータくんかっこいい!」

「ふふーん!」


 おおお、かっこいいと褒められたし!

 可愛いと言われるより、3倍は嬉しい!



 だが待ってほしい。可愛いと言われたことが嬉しくないわけではないのだ。

 そう、確かに恥ずかしさはあるが、可愛いものに対するあの笑顔を浮かべ

(中略)

 つまり、3倍とは言い過ぎであり。

 1.7倍くらい嬉しいというのが妥当な線だろう。



 脱線しました。本線に戻します。


「重たくない?」

「んー、使えない程ではないかな」


 初心者用というだけあって、子供のオレでも持って動けるくらいに軽いし小さい。

 見た目は灰色で、いかにも金属製って感じだけど。裏側は皮っぽいし、表面以外は木製とかなのかもしれない。


「ねぇねぇ、わたしも持ってみていい?」

「いいよ、はい」


 オレは盾を地面につくと、持ち手をミーネちゃんの方へ向けた。


「ありがと、リュータくん。

 でも、ものすごく重いんだね、わたしじゃ持ち上がらないよぉ」

「あれ、そんなこともないと思うんだけど……」


 こちら側で支えてみるが、別段重さは感じない。

 色々確認したところ、どうやらオレには軽いがミーネちゃんには重すぎて持ち上がらないみたいだね。

 エンチャントカードだからとか、かな?

 他の人に持てるのか、そのうち確認しよう。


 余談ではあるが。

 盾を地につけて少し回したりしてただけで、木製の床がごりごりと削られて凹んでたりした。

 いったいどれほど重たくなってたんだろうか、興味はあるが気を付けよう。



 さて、お待ちかねのユニットカード―――の前に、もう一つ。

 黒鶴のディスプレイを操作し、オプション機能のマップをオンにした。

 表示箇所がディスプレイか視界内かあったので、視界内を選んでみる。

 そうすると、視界の隅にゲームでよくあるミニマップが表示された。

 この部屋に、2つのマーカー。白がオレで緑がミーネちゃんっぽい。

 さらに意識すれば、マップを拡大することができた。

 家の周りに、いくつかの緑の点。そのうち1つがこっちに向かって……お、家についた。


「誰か来たみたいだ」

「あ、お姉ちゃんが帰ってきたみたい。わたしちょっと行ってくるね!」

「うん、いってらっしゃい」


……倍率を上げて表示エリアを広くするのだから、拡大ではなく縮小が正しいのか?

 まあ、どっちでもいいか。


 特定の内容だけ消したり表示したり、マーカーをつけたりアラームをつけることもできるようだ。

 なんか、想像してできそうなことはなんでも出来るっぽいな。

 試しに、以下の設定をしてみよう。

・ 表示範囲は村よりもう少し広くする

・ 表示範囲内にオレ以外の人間が入ったら警報を鳴らす


「うわっ」


 設定を変えた途端、脳裏で鳴り響く目覚まし時計のような音。

 慌ててマップを叩いて止めて、人間だけを表示するように変更した。


 って、この家の中にオレ以外の人間がいるじゃないか!

 マップを出したまま部屋を飛び出し、ミーネちゃん達を探す。


「お、リュータ君。ただいま、ミーネの相手をありがとう」


 居間には、ミーネちゃんとお姉さん、それとソファに一人の人間が寝かされていた。


「おかえりなさい、その人は?」

「村の近くで行き倒れてたらしいんだが、みんなぴりぴりしててねぇ。

 仕方ないから、私が面倒見るってことで引き取ってきたんだよ」


 良かった、とりあえず不法侵入者じゃないみたいだ。


「ひょっとして、オレのせいでお姉さんが人間当番になってる?」

「人間当番か、そりゃいいね。

 リュータ君のせいじゃないから安心しな」


 笑いながら言うお姉さんに、ちょっと申し訳なくて頭を下げた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ