ひととき&ルール
なんだかんだ話し込んだ後、お昼ごはんを一緒に食べさせてもらった。
パンを入れた、野菜の多いシチューのようなスープにキノコと野菜の炒め物。あとは炙った鶏肉だった。
ソーワさん、ゴードさんとも狩りの腕は良いらしく、他の家より豪華なんだとか。
思ったほど質素なわけじゃなく、ワイルドだが十分においしくいただきました。
ご馳走様です。
いつ再び盗賊が襲ってくるか分からないため、村人の手当ての傍ら、元気な人は周辺の見回りとかもしているらしい。
ソーワさんも、食事を終えたら医療所に手伝いに行くそうだ。
今は村の中もぴりぴりしてるし、ミーネを一人にしたくないから、今日の所は家から出ないでじっとしてて欲しいといわれた。
幼女と二人きり……!
小躍りしたいのを隠し、快諾したのは言うまでもない。
そういうわけで、ゴードさん達の手当てに向かったソーワさんを見送り。
幼女と二人きりのお時間を堪能―――
いや、その前に大事なことがあったな。
「これから少し、調べものをしないといけないんだけど。いいかな?」
「何を調べるの?」
「ちょっと、こいつをね」
左腕の黒鶴、そのディスプレイを見せて言う。
「わたしも、見ていて、いい?」
「ああ、いいよ。
でも何が起きるかわからないし、今日見たことは二人だけの内緒にしておいてな」
「二人だけの秘密、だね。わかった!」
ああ、幼女と二人きりの秘密。なんて甘美な響きなんだ!
こほん。
酔いしれるのもいいが、まずは自分に何ができるのかを把握しないとな。
いつまた盗賊が襲ってくるか分からないし―――
「?」
「うん、ミーネちゃんとオレの、二人だけの秘密だよ」
少なくとも、この可愛い幼女―――ミーネちゃんを守りたい。
手の届く範囲くらいは、なんとか頑張りたいから。
「それじゃ、調べもの始めるな」
「うん!」
黒鶴の画面に触れると、文字が表示された。
基本的には、スマホのエリート&フォースのアプリと同じつくりのようだな。
説明の表示、っと。
「……ねぇ、リュータくん」
「ん、なぁに?」
「全然、文字、読めない……」
あー、そりゃそうか。日本語なんて読めるわけないよな。
いや、そもそも読み書きができない可能性もあるのか?
そう思って確認したら、ソーワさんに教わってちょっとは読み書きできるけど、この文字は全く分からないとのことだった。
言葉は通じるけど、文字は通じない。覚えておこう。
「ごめんね、しばらく暇になっちゃうけど、まずは使い方を覚えるね」
「うん……
読めないけど、そばに居てもいい?」
「うん、もちろんだよ!」
暇なのにそばに居てくれるとか、なんていい子なんだ。
あれ、これって。説明読むよりも、ミーネちゃんと一緒に居ることの方が大事なんじゃないだろうか?
いやでも、最低限の戦い方を覚えないと、いざって時に守ることが出来ないし。
いつまた戦いが起きるか、分からない世界なんだ。
でもミーネちゃんとのふれあいの時間は大事だし、寂しいとか暇な想いをさせるのは……ううう。
というか、オレがミーネちゃんともっと一緒に居たい!
うがー、どうすればいいんだ!
ミーネちゃんと二人きりでいちゃいちゃしまくりたい!
―――そんな迸る情熱を、控えめにミーネちゃんに告げたら、なんだかとっても嬉しそうな笑顔を見せてくれてすごく幸せになりました。
そうして、どうしようか話し合った結果。
「~♪」
なぜか気がつけば、ミーネちゃんを後ろから抱いて。
なんとなく、日本の歌を歌いながら説明を見ることになっていた。
え、あれ? なんでこうなったんだっけ?
うわ恥ずかしい、歌とか別に得意じゃないんだけど!
でも、嬉しそうに微笑んで目を閉じてるミーネちゃんを見ていると、恥ずかしいとかどうでもよくて。
一度、そっと髪を撫でて。オレはぽつぽつと歌いながら説明を確認した。
スキル 【エリート&フォース】
■ 基本ルール
① マナ=魔力
② 一度に使えるマナは、基本的にスキルレベルまで
③ マスターカードをセットしなければ一切のカードを使用できない
④ ユニットを召喚している間、召喚に必要な分のマナはターンが経過しても回復しない
⑤ ユニットの送還は任意のタイミングで行うことができる
⑥ マスター自身またはスキルのレベルが上昇した場合、新たなカードを入手することができる
⑦ 決闘に勝利した場合、新たなカードを入手することができる
■ 冒険用ルール
① 使用できるカードは、自分が所有しているカードのみ
② 所有しているカードは、カードポーチの中から自在に取り出すことができる
ただし構築したデッキの中に入れたカードは取り出すことはできない
③ 手札の枚数やデッキの制限は一切なし。自由にカードを選択して使用できる
④ 召喚・フィールドカードなどは、黒鶴の翼にセットしたカードのみ使用できる
⑤ エンチャントカードは、召喚カードのセット枠に重ねて配置することができる
⑥ ターンの概念はないため、マナの回復はマスターの魔力回復に依存する
⑦ デュエルを開始する場合、全ての冒険用カードの効果が消え召喚されていたユニットは送還される
ただしこれはスキルレベルを上げることで変更することができる
■ デュエル用ルール
① 黒鶴に宣誓カードをセットし、宣誓を行う事でデュエルの開始となる
② デュエルに用いるデッキは、一日ごと、あるいは戦闘ごとに構築することができる
デッキ構築の方法は以下の通り
1 所持しているカードから、デッキに入れたいカードを選択する
2 デッキに入れたいカードを黒鶴のホルダーにセットし、デッキ構築と言う
3 選択したカードの枚数が80枚に満たない場合、足りないカードはランダムで自動選択される
③ デッキ構築後は、デュエルを行うか日付が変わるまでデッキを変更することはできない
④ ターンは一定の時間や戦闘の状況により遷移する
⑤ スペルフェイズとバトルフェイズは同一として扱われ、順番の制限はない
その他のフェイズの変遷はカードゲーム通り
⑥ 通常のカードゲームのような、戦闘中限りのマスターのレベルアップは存在しない
マスターの状況は全てマスターカードに表示される
⑦ 戦闘中に新しいカードを入手した場合のみ、デッキに含まれていなくとも直接手札にカードを加える事が出来る
■ その他
・ オプション機能:マップ
周辺のマップおよび味方と敵を表示することができる。機能使用中はマナ1点を消費するが、デュエル中は消費しない
・ この説明は、スキルレベルの増加およびオプション機能の追加により、随時追記・更新される
まず、冒険中―――戦闘中以外は、好きにカードを使えるのか。
使える枚数は、黒鶴の翼のスペースを考えると、マスターカードと宣誓カード以外に5枚までってことだな。
でもエンチャントは重ねられるようだから、この間の冒険セットとかは出しっぱなしで良さそうだ。
そして、デュエル。
宣誓を行ってデュエル開始とか、いかにも決闘者らしくて素晴らしい!
宣誓カードも必須とか、なかなか再現度が高くて良い。
予めデッキを構築しておかないといけないみたいだが、冒険にもデュエルにも使えるカードは悩みどころだ。
ともあれ、ルールは大体分かった。
事前にデッキ構築をして、あとは宣誓をすればいいんだな。
―――早く試したい!