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神魔大戦 Hero&Forces  作者: 岸野 遙
スタートフェイズ
12/40

デュエリスト&幼女愛

「デュエリスト……?」


 オレの言葉に、怪訝な顔をするお姉さん。


「そ、そうだ!

 オレは最強の決闘者デュエリストになる予定の、山城 竜太だ!」

「最強、なの?」

「予定だけどな!」


 そうだ、最強。

 元の世界では、日本ランカーとか手が届かない高みだったけれど。

 この世界でなら、ひょっとして最強になれるかもしれない。

 なんせオレには、苦楽を共にしてきたこのデッキが―――


 あれ。

 そういえば、オレのデッキってどうなってるんだっけ?

 早く説明を見て、オレの能力を把握せねば!


 そんなことを考えて、ちらりと黒鶴を見る。

 その視界が外れた瞬間に、お姉さんがオレの左手を握り締めてきた。


「うひゃ!?」

「ねえ。君は、デュエリスト、なの?」


 なんだか真剣な眼差しに気おされつつ―――

 でもオレは、自分が決闘者デュエリストであることに誇りを持っている。

 けして偽ったりはしない!


「ああ、オレは決闘者デュエリストだ」

「そう……」

「お姉さんは決闘者デュエリストを知っているの?」


 オレの質問に、数秒考えこんで


「リュータ君こそ、デュエリストが何なのか、知っている?」


 え……?

 いや、決闘者デュエリストったら、決闘者デュエリストだろ。決まってる。


「己のカードに魂を込め、気高き想いをぶつける。

 いかなる敵も打ち倒し、万難を切り開く。そんな、至高の決闘者だ!」

「……うーん、そう言われても合ってるのか私じゃ判断つかないわね」


 あれ、お姉さんも決闘者デュエリストを知ってる……の?

 そういえばここ、日本じゃないよね? ていうか地球じゃないよね、異世界だよね?


「リュータ君が、本当にデュエリストであるのか、デュエリストに憧れているだけなのかは知らないわ。

 でも、その名乗りは、人前ではしない方がいいと思うわよ」

「どうして?」

「どうして……って、当たり前でしょう?」

「当たり前なんて、そんなことないよ。

 オレは決闘者デュエリストであることに誇りを持ってるんだ」


 オレの言葉に、額に手を当てためいき一つ。

 お姉さんが黙りこんだからか、幼女が話しかけてくれた!


「でゅえりすとって、なんかかっこいいね」

「ほんと?

 ほんとにかっこいいと想ってくれる!?」

「え、え?

 う、うん、そう思う……よ?」

「ありがとう!

 あ、オレは山城 竜太、よろしくね!」

「あの、えっと……私、ミーネ。よろしく、ね?」


 オレの勢いに押されて手を差し出してくれるミーネちゃん。

 うおお、おてて可愛い、すべすべだぁ!

 テンション上がりまくるぜ!


「ミーネちゃん可愛い、すごく可愛い!」

「あ、ありがと、あのあのあの、ちょっと、あの!」


 ぐいぐい迫るオレに、ちょっと引きつつ困った顔のミーネちゃん。


 こんな可愛い子に困った顔させるなんて酷いやつもいたもんだ! オレだ!

 でも困り顔も可愛すぎて、なんて困ったちゃんなんだ!


「はいはいはい、リュータ君は落ち着く」


 ぬう、邪魔が入ったか……

 しかし焦ることはない、ミーネちゃんはずっと眺めていても飽きないのだ!


 ていうか、ミーネちゃんだと。

 うちの美衣音むすめと同じ名前でけもみみだし、なんという偶然なんだろう。これは運命に違いない!


 今さらながら運命を感じてテンション上がりまくるオレに水をさすように、お姉さんが尋ねてくる。


「一応確認しておくけど」

「ん?」

「デュエリストというのは、昔いた人間の英雄だけが名乗っていた職業だったんだけど。

 それは分かっていて名乗ってるのよね?」

「……へ?」

「分かってないのね……」


 オレの間抜けな返事に、再びためいきをつくお姉さん。


 英雄の職業? 決闘者デュエリストが?


「かつて、東の小国が魔物の大群に襲われた時に一人で戦った英雄が、デュエリストを名乗っていたはずよ。

 人間の世界の事だからそれほど詳しくないんだけど、特別な職業の冒険者だったって話ね」

「なんと、パクられてたとは……」

「ぱく……?」

「いや、なんでもない」


 そうか、この世界には別のデュエリストがいたのか。

 なら確かに、デュエリストと名乗るのは面倒なのか?


「んー……」

「君がなぜデュエリストを名乗るのか、多くは聞かないけれど。

 人の町で名乗るなら、面倒が起きることは覚悟した方がいいかもしれないわね」

「わかった、わざわざありがとう」


 しばらくは様子見した方がいいってことなのかな?

 冒険者を名乗るのも、浪漫があると言えば浪漫があるしなぁ。

 おいおい考えよう。



 そんなわけで、いまさらながらお互いに自己紹介した。

 お姉さんの方は、ソーワさん。幼女ちゃんがミーネちゃん。

 二人はおばと姪だそうで、ミーネちゃんの両親はすでに他界しているそうだ。

 あともう一人、ソーワさんの弟のゴードさんがいるらしいんだが、現在は重症で絶対安静だとか。

 オレが倒した首領と一人で戦って負けたらしい。

 脳裏にちらりと、血まみれで倒れた男けもみみが浮かんだ。多分あってるはず。


 ソーワさんとゴードさんは犬っぽい獣人だ。

 茶色い毛並み……もとい髪を短く切りそろえ、スポーティな感じ。

 衣服はベージュで地味な作りだが、素材の良さが引き立つ感じの美人である。おばんだけどな。

 顔つきは犬っぽいというにはやや野性味が強くワイルドな感じ。気が強そうと言えばそうだね。

 ミーネちゃんが似てなくて良かったと思ってしまった。


 そのミーネちゃんは、狐っぽい獣人で、可愛いおみみとふさふさの尻尾がどこまでもチャーミングだ。

 大人しそうな表情で、ちっちゃな身体にちっちゃなおてて、少しだけ大きな瞳。

 髪や毛の色合いはソーワさんと同じく明るい茶色。きつね色というにはちょっと濃いってくらいかな。後ろでひとまとめにしてるのが、ちょっと尻尾っぽくてナイス。

 年齢は……推定だけど、8~10歳くらい?

 幼女って言葉の定義がどうとかそんな小難しい話はどうでもいいんです。心が叫べば幼女!

 服は同じ色と素材なので、見ようによっては親子でペアルックみたいだ。オレもペアりたいし。



―――で、オレなんだが。

 異世界から来ました!とか言えないよね。

 デュエリストです!ってのもあんまり良くないみたいだし。

 外見が十歳くらいになってるから、下手なことは言えないと思うんだ。

 そもそもこっちの国名とか何一つ分からない。

 困ったことに、うさんくさいというか、何を言っていいか分からないというか。

 ぶっちゃけ自己紹介できることがねーし!



 仕方ないので、いかに幼女が素晴らしいか熱く語ったら、ミーネちゃんとの距離が二歩分くらい遠くなった。

 全オレが泣いた。


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