【詩】航夜
『航夜』
灰白の断層
それ自体は痛み知らず
蛋白質が綾なす君は
何故に今日も 歌を聴くか
窓から眺める灯に
零下二度の記憶を込める
結晶繋げる縁の物理は
たかが塵すら子の笑む雪へ
手のひらの命
互いに反し
雪が溶けると困った顔の
童が駆けた里山の冬
私は見つめる 太古の化石も
白亜の断層
それ自体は奇跡知らず
琥珀の中に留まる虫は
何故に明日も 詩を呟くか
ことば繋げる物理の縁は
たかが愛すら 神話を刻む
手のひらの命
互いに応じ
時を忘れて繋がる伽の
上空駆ける一角獣は
雷雲歓び 世界を降す
灼ける凍土 シダの夢
やわらかな君 桜色の海