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禁書読書  作者: アサクラ サトシ
第二章 友人来訪
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友人来訪 その五

友人来訪 その五 です。

よろしくお願いします。

「円城了のことは、私よりも風鈴と小町から話を伺ったほうがいいと思います。風鈴と小町は、良い子たちですよ。彼女たちがいなかったら私の高校生活は充実していなかっと言って過言ではありませんからね」

 彼女の言葉に嘘はない、と思う。円城了のことを話している時に見えたフキダシからは「困る」という気持ちが込められていた。話せない事情とか、本当に詳しくないから話せないのだろう。天見風鈴と月森小町のことは本当に大切な友人であるというのが強く伝わってきた。

「過去に起きた事件で痛み分けと言ってましたよね?」

「気になります?」

 高橋さんが発した言葉の裏には「関わらない方がいい」という感情が漏れていた。安易な興味本位で円城了に深入りしないほうがいいのだと言っている。

「気にはなりますけど、参ったな。どうやら、高橋さんは話したくないようですね」

 自分に掛けられている呪いで本心がわかってしまいましたと、言わなくても高橋さんなら表の嘘から裏の本音を理解すると思う。その証拠に高橋さんは軽く頭を下げる。

「ごめんなさい。私もどこまで話していいのかわからないんです。円城了が何者で何をしてきたのか、風鈴と小町が持っている秘密に関してもそうです。私が付喪神探偵であることを親しい人にしか話せないように、彼女たちもまた他人には伏せなければいけない秘密があります。それを友達である私が、まだ二人のことをよく知らない人に彼女たちの秘密を教えるのは筋違いだとも思うんです」

 なによりも友達に失礼だと、高橋さんは思っている。配慮深くて優しい人だ。

「いえ。謝らないでください。僕も軽率な質問をしたと思います」

 僕らのやりとりを、桜子ちゃんは頬杖を付きながら眺めている。

「もう、二人して敬語ばっかで喋ってかーに。もう随分と喋ったんだけん、敬語なんてよそよそしい感じでなくてもっと普通に喋りんしゃいや。聞いとるこっちがむず痒くなーわ」

 そんなことを言われても困る。会って間もないのだし、年下とはいえ初対面の人だからいきなり打ち砕くような話し方はできない。桜子ちゃんの時だって、と初めて会った時のことを思い出すと、僕は敬語で話していなかった。出会いが出会いだったから敬語を使うなんて発想がなかった。違うな、桜子ちゃんには親しみやすさが強かったんだ。だから、僕は敬語で話さなかったんだと思う。壁を作らない、それが彼女の特異な点だし良いところだ。人柄なんてものは教えられて身につくような代物ではないので素晴らしい人間性だと誇ってもいい。

「まぁ、二人がいいなら別にいいわー。それにな、ここにおらん人のことを喋っとっても本人と話してみらんと、その人のことはわからんけんな。会うまでのお楽しみにしといたほうがいいんと違うか。円城って人のことは初めから興味ないけん、どげでもいいわ。天見さんと月森さんだっけか? 二人のことも変なイメージを付けらんと本人と話をしてみて、ああ、こげな人かーって感じたいわ」

 おっしゃるとおりですと心の中でかしこまった。

「桜子ちゃんも会ったことはなかったんだよね」

「そげだでー。二人ともえらい美人さんらしいけん、井上さんが鼻の下を伸ばさんか心配だわ」

「言っているそばから変なイメージを植え付けようとするのは、わざとかな?」

「うちのことを泣かした罰だと思ってくれればいーわ」

 桜子ちゃんの表情は、それこそ悪戯をした子供みたいだった。残念だけど、彼女の本音は悪戯と似通っているけど違う。それを感じ取ってしまう僕からすると嬉しいというか気恥ずかしい。表情が緩まないように気をつけることで精一杯だ。

 僕が天見風鈴と月森小町に目移りしないかという心配による嫉妬と、もっと自分を見て欲しいという願いからくる嫉妬だ。

 そんな風に思っていなくても、僕はちゃんと見ているよと桜子ちゃんに言いたいけど、あまりにもクサすぎるその科白は二人きりの時に伝えたい。

 しまった。考えるんじゃなかった。こんな恥ずかしいこと言えるわけがない。いま、絶対に顔が赤い。

「どうしたん。どっか痛いん?」

「大丈夫」

 急に顔を顔をしかめて、そのまま伏せたものだから余計な心配をさせてしまった。

「ねぇ。私、一緒にいないほうがいいのかな?」

 恥ずかしくて顔を上げることができないけど、フキダシは出ているみたいで高橋さんの感情が伝わってくる。どうやらフキダシを視認しなくても出ていれば無関係に伝わってくるようだ。

「今更なにをゆっとーかいね」

「だってさ。二人の会話みていると、邪魔かなーって思っちゃたからさ」

「そんなことはないで」

 平常心で答えているようだけど、完全にどもっているので動揺しているのが丸分かりで、すぐに嘘だと分かってしまう。

「私も小林くん連れてくればよかったかなー」

「そんな、そんなダブルデートみたいなことしたないわ!」

「バカ、冗談よ」

 それにと言って、高橋さんはテーブルに置いたオルゴールに触れた。

「遊びじゃないんだしね」

「そのオルゴールとも話せるんですか」

 会話の流れを変える良い切欠でもあったが、そろそろ真面目な話もしたほうがいい。食事の後は狐も探さないといけないのだから。

「いいえ、これは至って普通のオルゴールですし、持ち主となった人との思い出もない。これ、手作りじゃなくて大量生産されている販売品のようですしね」

 高橋さんはオルゴールの底に刻印された制作会社の社名を人差し指を当てながら見せつけた。

「じゃあ、こっちは」

 僕はオルゴールから取り出した地図をポケットから取り出して高橋さんの前に置いた。これなら手書きで書かれた文章もある。

「ごめんなさい。それは道具ではなくて、ただの紙というかメモです。日記や手帳といった実際に使ってきた物の一部であれば断片的でもあれば話すことはできますけど」

「いまいち話せる道具とそうでない道具の線引がわからんなぁ」

「初めは私だってなんでも話せるのかなって試したりしたけど、意外と話せる道具って少ないんだよ。まず、どんなに使い込まれた道具であっても、持ち主の思い入れがなかったら、道具に魂みたいなのが入り込まないと駄目なの。だから付喪神探偵なんて呼ばれてはいるけど、本物の付喪神とは一度しか会ったことがないんだ」

「へー、そりゃ初耳だね。どんなんだった?」

「意外と思うかもしれないけど、普通の人間みたいな格好をして、街中を闊歩してたよ。漫画とかで描かれているような原型を元にした獣的なビジュアルはしてないの」

 高橋さんは木箱から手を話して頬杖をついた。

 溜息こそつかないけれど、物思いにふけている。

 僕らは高橋さんが出会った付喪神の話を聞くことになった。思い出話は料理がテーブルに並べられても、食べ終えた後でも高橋さんの思い出話は続く。高校時代に出会いそして、解決してきた事件の話をしてくれた。

 皿に盛られた料理を食べ終えて会計を済まして明治通りにまで戻った。

 原宿駅前では歩いている人よりも、待ち合わせで相手を待っている人達のほうが多いように思えた。

 年齢も性別も関係なく、これからの時間を楽しもうと相手を待ちわびているのを見ると、いつか僕もここの一人になるのかもしれないと、らしくないことを考えてしまう。この界隈では一人で歩くほうが珍しい。僕の隣に居る人いが、桜子ちゃんであればいいのにとも思った。

 

 日は傾き、夜に近づこうとする時間帯になってもまだ空には青い色が残っていた。数時間という内に辺りは街灯やビルディングから漏れる明かりで照らされていくだろう。

 公園は夜になると遊園できなくなるので、今のうちに狐を探さないといけない。

 地図に記されたバツ印まで園内を散策する。日の暮れる中でもいまだに利用している人は多い。

 湖の近くまでくると、畔の近くで板を引いてタップダンスをする人、ランニングで汗を流す人など、多種多様にいた。

「意外と園内の中にある湖って広いな。てか、狐ってそんな簡単にみつけることができるんだーか」

 見つかるといいけどなと相槌を打つと、日本人には懐かしい音色が耳に飛び込んでくる。

 誰かが三味線を引いてる。音楽は言葉ではないないし、感情を込めることができても、やはり人ではない物にはフキダシは出現したにようだ・

 音を奏でているのが本当に狐なんてテレビ局が取り合えようものなら、上野公園は普通ではいられなかっただるう。

 歩を進めて、三味線を奏でている女性の後ろ姿が見える。桜子ちゃんではないけれど、

「彼女が狐?」

 僕らは三味線を弾いている女性の前にたって顔を拝んだ。見事な黒髪、女性にしては長身で舞台衣装とも言えるべき服装は夏を先取りした浴衣姿だ。肝心の顔はというと、白い狐の面を付けていた。

 狐の仮面をかけているから狐と略したのかもしれないが、やっぱり雑な説明だ。

 狐が旋律させた三味線の音は大きくなっていく。

 僕ら以外にもギャラリーは多くいて、日本人だけでなく外国人の顔も見える。純正和物の音楽なのだ。今日、この場所で三味線の音を聞けるのも悪くないな。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

友人来訪 その五 はいかがでしたでしょうか。


明日も投稿を予定しています。

よろしくお願いします。

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