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禁書読書  作者: アサクラ サトシ
第二章 友人来訪
13/62

友人来訪 その三

友人來訪 その三 です。


よろしくお願いします。


※追記 5/21 本文の一部を修正しました。

「大丈夫? どこか変わったところとか無い?」

「なにをそげに慌てとらいで。ほれ、うちは大丈夫だがね」

「覚えていないのか」

「なぁ、一体なにがあったで」

 僕の動揺が二人に伝播する。二人がどのような状況にあったのか言うべきか悩んだ。そして悔やんだ。やっぱり僕一人で小冊子探しをするべきだったんだ。見たところ、二人は無事なように見えるけれど今後も無事だという保証なんてない。当事者でもない彼女たちを巻き込んだ著者の彼を許すことは出来なかった。それ以上に、安易に二人の女の子に協力を得てしまい巻き込んでしまった自分が許せない。

 僕は二人の安全を最優先することに決めて、僕が骨董店から出てきた直後に何が起きたのか打ち明けることにした。自分たちがどんな風に話していたのか、記憶に無い出来事を聞かされた二人の反応は全く別だった。桜子ちゃんは青ざめているのに対して、高橋さんは眉間に皺を寄せて眼光を鋭くしていた。

「僕のせいで二人を巻き込んでしまったのは悪いと思っている。だから小冊子は僕一人で探すよ」

「井上さんのせいではありません」

 言葉とは裏腹に口調は強くて怒っているのだとわかる。ほら、フキダシにもなって僕にも届いてくる。彼女の感情が僕の中に浸透すると、彼女が抱いた怒りの矛先が僕ではないことに驚いた。

「どうして、高橋さんが自分を責めるんですか?」

「桜子を巻き込んだのは井上さんではありません。私が一緒にいたから桜子と私が伝言役に利用されたんです」

「どういうことなんですか?」

 予想外の展開と状況変化に頭がついて行けずに混乱するばかりだ。

 僕の問い掛けに高橋さんは周りを見渡してここでは注目されすぎますと言って、歩き出した。僕らは思っていたよりも注目を浴びていた。棒立ちだった女の子二人に、突如として現れた男がいるのだ。気になるのも当然だ。

 高橋さんの背中を追いながら、僕と桜子ちゃんは青山通へでるとそのまま渋谷方面に歩き出した。

 大勢の人が行き交う青山通りでようやく高橋さんが話しだした。

「まず、井上さんが懸念されているのは、桜子と私が危険に巻き込まれることですよね」

 ええと言いながら僕は頷いた。

「その心配はありません。今回の件に関して彼らは誰かを傷つけようというつもりは無いはずです。伝言役だって、本当なら私達じゃなくても良かったんです。本当なら井上さんが一人で骨董店に入って小冊子を手に入れた後、そこら辺にいる適当な人を選んで伝言を言わせる予定だったんだと思います。伝言を言い終われば記憶こそ失われますが精神と肉体に悪影響は残りません。他人を巻き込みたくない井上さんからすれば不本意かもしれませんけど、不可抗力と思うしかありません」

 適当な人間を選ばれていたらそれはそれで仕方がないと僕は思っていたのかもしれない。僕にとって桜子ちゃんとその友達である高橋さんだったから気を咎めたのだ。あと、彼女が話してくれた中に嘘は一つもなかった。今回の小冊子探しに危険はないというのなら、その根拠はどこなのか聞かないといけない。

「伝言役は自分のせいだといいましたよね。その理由を聞かせてください」

「私達に彼の伝言を言わせた相手は私のことを付喪神探偵といいました」

 付喪神。長年使われてきた道具や器物に魂が宿り、妖怪となった者の呼称だ。道具の声が聞こえるから付喪神探偵ということかもしれない。その呼び名を相手が知っていたとなると、向こうは高橋さんの素性を知っているということだ。

「付喪神探偵としての活動をたまたま知っているという可能性があるのでは?」

「ありえません。私のことを付喪神探偵と呼ぶ人間は限られています。私と親しい関係にある人か私と対立して敗れ去り潰された人達」

 物騒なことを口にしたけれど、どうやら事実らしい。『潰された人達』というフキダシには「生まれてきた理由がわからない」とあった。人の本性が分かってしまうのは、問題があるなと改めて思い直す。これまで漫画やアニメで登場してきたテレパスの能力を持ったキャラクターたちが苦悩した理由を、まさか身を持って知ることが出来るのは貴重だが最低な気分だ。

「潰してきた人達であれば、高橋さんだけでなく僕も桜子ちゃんも危険ですよね」

「もう一人だけ、私のことを付喪神探偵だと知っている人がいるんですよ。その人は井上さんも桜子も知っています」

 僕と桜子ちゃんが共通して知っている人間であり、こんなふざけた真似をするのはやはり……、

「春生?」

「お兄ちゃん?」

 どうやら思い浮かんだ名前は僕も桜子ちゃんも同じだったらしい。まさか今回もアイツが暗躍しているとなれば、殴るだけでは済みそうにない。

 右手を硬く握ると、前を歩いていた高橋さんが立ち止まって笑いながら否定した。

「違いますよ。桜子のお兄さんではありません。多分、お兄さんも何かしらの関係はあるかもしれませんが、あの人は私のことを付喪神探偵であることを知りません。桜子が私の秘密をお兄さんに話していたら別ですけど」

「うちはゆっとらんで。友達の秘密は家族には喋らんけんな!」

 反論する桜子ちゃんに高橋さんは冗談だよと微笑む。

「円城了ですよ」

「著者の彼が追っている呪術師が?」

「井上さんが骨董店の中に入っている間、私は小冊子に書かれている内容を聞いたんです。桜子からは大切な人が小冊子に呪われたとしか聞かされていませんでしたからね。まさか円城了の名前が出てくるとは思いもしませんでした。円城とは過去に一度だけ接触したことがあります。円城と因縁を持っていたのは私ではなく、私の友人たちの方でしたけどね。結果だけ言えば痛み分けで終わりました」

「それじゃあ、恨みを持っていてもおかしくないですよね?」

「彼はそういう感情を持ち合わせていません。彼の目的は困っている人を傍観するか、より混乱を引き起こして楽しむかのどちらかです。人の命を奪ってしまえば、その楽しみが減る。円城了の主軸となる行動理念は自己快楽のみです」

 自分の事じゃないのにすごく耳が痛い言葉だった。僕以上に痛い思いをしているとすれば、僕の隣にいる妹の方だろう。聞くだけなら石田春生と円城了の行動理念は似ているけれど本質は違う。春生は他人をさらなる不幸を呼び起こして楽しむようなサディストではない。

 どちらかと言えば、他人の不幸を自ら背負い込んで楽しんでしまうマゾヒストだ。

「円城了は私がいることを知って、わざと私と友人である桜子を伝言役に選んだ。理由は私の友人を呼び出すためです」

「そのお友達も、この小冊子探しに引き込むつもりですか?」

 円城了がいくら命まで奪わない男だとしても、絶対になにも起こらないなんて言い切れない。

「いいえ、さすがに彼女たちまでも参加させるつもりはありません。あの二人まで参加したら無事なものが無事でなくなる可能性が高いですから」

 さらりと出てきたお友達の性別は女性なのか。危険な女性を引き寄せてしまう相が今の僕には出ているのかとくだらないことを考えてしまった。目の前にいるのは柔道有段者でかなりの手練れ、春生の彼女にいたっては底知れぬ格闘術をもっている。そして、高橋さんの女友達ふたりもまた危険な存在だという。

「小冊子の著者ですが山本和弘でしょう。山本は円城了と手を組んで、呪術師としての腕を上げて、文章という呪いを身につけて、小冊子にした。おそらく、本は円城了が作ったのでしょう。いわば合作。これほどまでに強力な本は類を見ないでしょう」

 まほろば骨董店店主である斉藤さんの目利きは正しかったということか。

 説明を続けながら高橋さんがガードレールに体を預けた。

「今ひとつわからないのは、この合作本を作った理由です。読むだけで解かれてしまう呪いに、読み終わったら能力の報酬が貰えるとう点です」

「一般社会からズレた世界で活躍する人達の考えなんてわかるはずがないですよ」

 所詮は他人の思考と主張だ。共感するのは無理がある。

 高橋さんの確証と推理が終わる。

「一気に説明しましたけど、わからない点があれば聞いてください」

 なにを分かっていないのかわからない。まずは事実関係の整理か。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

友人來訪 その三 はいいかがでしたでしょうか。


始まりから最後まで高橋理緒の説明でした。

説明ゼリフが嫌いな読者の方にはもうしわけないです。


明日も投稿を予定しています。

よろしくお願いします。

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