ある朝のいつもの風景
ここはとある城のとある一室・・・・
「はぁ・・・はぁ・・・」
「ほら、もっとしっかり動いて!!」
息の荒いひとりの男。
それを聞きながら、もっとと求める一人の女性
衣服が激しく擦れ合う音が聞こえる。
「うぅ・・・も、もう限界っ」
限界が近いのか、男が情けない声をあげる。
「あぁ・・・まだダメですわよっ」
しかし女性は男のギブアップを許そうとはしない。
男はついに限界を迎えたのか・・・・
力なく床に崩れ落ちる。
「もう・・・まだダメっていいましたのに」
女性があきれ顔で男を見下ろすと、
男は懇願するように言い放つ。
「いやいや、そんな無理だからっ!
いきなり腕立て500回とか出来ませんからっ」
乱れた息を整えながら答えた男に、女性はため息をもらしながら冷たく言い放つ。
「情けないですわねぇ・・・まだ28回ですわよ?
仮にも魔王様なんですから、これぐらい軽くこなしてくださいませ」
ここはとある魔王城のトレーニング室。
透き通るような白い肌と、漆黒の髪をなびかせ
やや吊り上った目をした女性。
シルフィーネ・タリアは呆れながら、
この城に来てから、もう何十回と聞かされた言葉を冷たく言い放つ。
「私、人選を間違えましたかしら。
まさかこんな情けないとは思いませんでしたわ」
額に手をあてながら、盛大にため息をついている。
「いやいや、俺だって魔王の仕事がこんな筋トレと・・・・
あんな大量の書類整理だって知ってたら、シルフィさんについてきませんでしたよ」
俺は疲れで震える腕をさすりながら答える。
「シルフィさんが、何もしないでふんぞりかえってればいいって言ったんですからね?」
ジト目で軽く睨むと、
「あら?そんなこといいましたかしら?」
などとお決まりのセリフを口にした。
「だいたい俺は一週間前まで、普通のサラリーマンだったんですよ?
スポーツだって、高校以来まともにやっていないのに・・・・」
無駄だと知りつつ、必死に頑張ってますアピールをしてみたが・・・
「けれど、そのままだといつか来る勇者さまご一行に
あっさりやられてしまいますわよ?」
彼女は物騒なことをさらりと言い放つのだった。