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THE LAST SMILE  作者: 更木多秋一
Document1—夢—
8/8

面影の理由

「遺伝子…だろ」

祐介はミケの代わりに答えを言った。

ミケの目が少しだけ大きくなった。意外だったのだろう。

「あなた、見かけによらず少しは物を知ってるのかしら?」

「お前らに邪魔されなければ、明日センター試験の二日目で生物を受けるはずだったからな」

「それは悪い事をしたわね」

「本当にな。…ただ、今俺が言いたいのはそんな事じゃない」

祐介は立ち上がり、ミケに近づいた。

「本当に、見れば見るほど明美ちゃんの面影があるんだよな…」

「………」

ミケは表情を変えない。

「お前が人工的に作られた人間だっていう話を信じるなら…お前が生まれる為には、人工的に作るのが不可能な遺伝子を他人から貰い受ける必要があったはずだ。それならばもう、答えは決まっている」

「………」

「お前に植えられた遺伝子は、死んだ明美ちゃんから採取された物だ。そうだろう?」


「…正解ね」

ミケはあっさりと認めた。

「ただ、そのまま使われた訳ではないわ。身体能力や、情報処理能力を向上させる為に遺伝子には若干の手が加えられている…今度は、私があなたに質問していいかしら?」

「な、何だよ」

祐介は狼狽した。ミケの方から自分に質問してくるとは予想していなかった。

「私に遺伝子を提供した明美という女と…あなたはどういう関係だったのかしら?」

「…どうして、そんな事を」

祐介が反論すると、ミケはムッとしたように言った。

「質問に質問で返すようなら、もうあなたの質問も受け付けないわ」

「…わかったよ。明美ちゃんは俺の従姉妹で、9歳で死ぬまで一緒に遊んだり、仲良くしていたんだ。それだけだ」

「という事は、私が9歳の少女と似ているように、あなたには見えているのかしら?」

「いや、そういう訳じゃないけど…何となくわかるんだよ。明美ちゃんが死なずに成長したら、こんな感じになってたんだろうなっていうのが」

「…それほどまでに、克明に覚えているものなのかしら?他人の顔立ちなどを…」

「本当に大事に思っていた人なら、覚えてるんだよ。そういうもんだ」

「…そう」

何やら話題が妙な方向に逸れている。

祐介は頭をかいた。

「そんな事を聞いてどうするんだよ。本当に」

「私は私を作った科学者以外の人間とコミュニケーションを取った事がない。だから、人間に関するデータをこの機会に集めておこうと思ったのよ」

この台詞だけ聞けば何ともロンリーな発言だが、威風堂々と語るミケの姿からは悲壮さは感じられない。

祐介は呆れて呟いた

「データって…そんなもんじゃないだろ…人間は」

その時、また祐介を違和感が襲った。

「ちょっと待てよ」

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