鉄格子
ぶーん。 ぶーん。
うるさい…。
ぶーん。 ぶーん。
何だ…この、頭に響く音は…。
ぶーん。 ぶーん。
俺は…いったい…。
「んっ」
祐介は目を開いた。背中が冷たかった。
身体を起こして見回すと、そこは四角の薄暗い部屋の中で、鉄格子がはめられた一面を残して全ての面がコンクリートで覆われていた。
ドラマなどに出てくる刑務所やら監獄やらのイメージそのまま。
そして鉄格子から見て向かいの壁の上隅に取り付けられた換気扇が、ぶーんぶーんと音をたてていた。
「ここは…」
意識が覚醒するにつれ、段々とさっきまでの記憶が蘇ってくる。
「俺は…拉致…されたのか…」
「そう」
誰にも拾われないとおもった呟きが、思わぬ方向から拾われた。
「うわっ」
驚いて振り返ると、背後に彼女がいた。
「明美ちゃん」
「明美じゃない。私の名前は『H-0023』。通称ミケ」
「はっ?」
わけのわからない事を言い出した。
「あとの5人は言うなれば下位生体。自我を持ってるのは私だけ」
「おっしゃっている意味がまったくもってわかりません」
「…わからなくていいわ。とりあえず私の事はミケって呼んで。明美じゃないから」
そう言ってミケはその場に座った。
「君…ミケもここに閉じ込められてるのか?」
「馬鹿じゃないの。あなたの見張りよ」
「誰の命令なんだ。というか君たちの狙いは何なんだ」
「…教えない」
ミケはそっぽを向いた。
祐介も座り込んだ。もう何度も思ったが、どうしてこうなってしまったんだろうと改めて思う。
どこかで対応を間違えなければ、こうはならなかったのだろうか。
それとも、これはどのみち不可抗力の結果だったのか。
わからない以上、考えるだけ無駄のような気もするが。
「あとさ…」
祐介はふと思いついて聞いた。
「ここ、メシは出るのか?」
ミケは答えなかった。