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THE LAST SMILE  作者: 更木多秋一
Document1—夢—
1/8

始まりだったはずの日

マイペースに更新していきます。宜しくお願いします。

『明日午前0時00分をもって、この世界は終了致します』

このある種悪魔じみたアナウンスが最初に放送されたのは、年が明けて2週間ほど経った、ある寒い朝だった。


それは午前4時を回ったくらいの事だった。

祐介は通常より2時間以上早く目覚めてしまい、部屋のカーテンを明けた。

朝日を取り込みたかったのだが、開けてすぐまだ早すぎた事に気付いた。

窓の向こうでは、まだ暗い空から雪がちらほらと舞い落ちていた。

街頭の頼りない光に時折照らされる雪の粒が、物悲しく輝きながら次々とくすんだ舗装道路に落ちてとけていく。

それを見た祐介は、妙に胸が空くような落ち着かない感覚を覚えた。

まるで、これから大切な物が失われてしまうような、そんな気がした。

祐介は首を横に振り、誰に言うともなく呟いた。

「違う。今日は始まりなんだ」

祐介は部屋の隅の机から赤のサインペンを取った。

そして窓のとなりに掛けられた今年のカレンダーに歩み寄ると、昨日の日付の欄に大きなバツ印を付けた。

最後のバツ印だ。

今日の欄には既に星印が書き込まれている。

2050年1月15日土曜日。

そう、その日は大学入試センター試験の一日目が実施される日だった。


居間に行き、照明と暖房のスイッチを入れる。

祐介はいつもどおり、コーヒーメーカーに水と粉をセットして電源を入れた。

一通りの動作を済ませてしまってから、祐介は自分の手が震えだした事に気付いた。

本番の朝は緊張を通り越して悟りの境地にでも行ってしまったかのような気分になるものかと思っていたが、そんな事ないのかと祐介は一人苦笑いした。

そして気分を落ち着かせようと、ソファに座ってテレビの電源を入れた。

正確には、入れようとしたが出来なかった。

スイッチを押す前に勝手に電源が入り、画面が表示されたからだった。

「えっ…?」

祐介は狼狽した。

テレビが勝手についた事、そしてその画面の青さに。

民間の全国放送にチャンネルを合わせている筈なのに、テレビ画面に映っているのは見事なブルースクリーンだった。

それもパソコンがおかしくなった時のような安直な青ではなかった。

どこか恐ろしさを感じさせる程の、澄むような色彩を帯びたブルーに祐介はにわかに見とれそうになっていた。

その時、声が聞こえた。

誰の耳にも聞き苦しくならないよう配慮された、優しい響きの電子音声のささやきだった。


『明日午前0時00分をもって、この世界は終了致します。いままでありがとうございました』

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