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第一話 龍の涙を求める二人

「ラルフの兄貴、こんどは何を盗むんですかい」

「知りたいか」

俺は、おせじにも太っていないとは言えない大男のグランを、煽るように言った。

「もちろんですぜ、ラルフの兄貴。あっしも知っておく必要がありますからね。

大盗賊の片腕が、そんな事ぐらい知っておかないと、仲間から笑われますからね」

俺は腹に力を入れて、腹を右手で抱えて笑いをこらるようにした。

しかし、あまりにもおかしかったのか、とうとう笑い声がもれてしまった。

「なんで笑うんですか、ラルフの兄貴」

グランは眉間に少しだけしわをよせて、聞いてきた。眉間に"少しだけ"しわを寄せたのは、俺が先輩だから、気を使ってならべく顔に出さない様にしたのだろう。こいつも多少は俺に配慮をしているようだ。

「お前が俺の片腕だなんてほざいたからだ」

「あっしが役に立たないとでも言うんですか」

グランは、こんどは完全に眉間にしわを寄せている。笑われたのがそんなに気に食わなかったのか、こんどのグランは少々立腹している。

「お前は俺の片腕と胸を張って言ってるようだが、それはお前の大きな勘違いだ。

いいか、お前はカルタス家の宝玉を盗むときにミスを犯した。

しかも、そのミスというのは ずいぶん情けないミスだ。

ずらかる途中で、お前がこけた。そして、バレた。危うく捕まるところだったぞ。

こんなマヌケなのが、俺の片腕だと言われたら笑うのがごく当然だろう」

グランは、俺はそんな事知らんという顔をしている。この間抜けなのが俺の部下。

少々情けなくなってくるが、こいつしか俺には部下が居ない。その方が情けない。

「まぁ、正直俺は大盗賊ってわけでもないしな」

グランは少々ネガティブになった俺を気づかっての事なのか、口笛を吹いて聞いてない素振りを見せている。

「ラルフの兄貴は人が良すぎますよ。貧民にタダで金をやるなんて。

ラルフの兄貴は正義の盗賊ってところですかね」

「これが本来の盗賊の姿さ。強き者から盗み、弱き者に盗んだ物を分ける。

これが盗賊のあるべき姿さ」

グランは気まずいと思ったのか、大盗賊の話から遠ざけてきた。グランは失敗ばかりしてはいるが、人としての優しさを感じる。人情の厚い奴だ。

「ところで兄貴、次のターゲットは何ですかい」

「青い石だ」

グランは虎の様な目を真ん丸くした。

「青い石っていうと、あっしら盗賊の中では『龍の涙』で通っている"あれ"ですか」

「そうだ。『龍の涙』、見たものを動けなくすると言われているぐらい美しい石らしい。

あれは相当な値打ちがある。一生遊んで暮らせるぐらいの値打ちがある。

それだけじゃねえ。"名誉"を手に入れれる。名の通った盗賊、"大盗賊"になる事ができる」

グランは輝いた目をした。その目は俺が少年の頃、盗賊に憧れたていた時の様な目だった。

「さすが兄貴、改めて尊敬させていただきやした。

大盗賊に憧れているのは同じっすからね

兄貴、しかし龍の涙はどこにあるんですかい」

グランの目は輝いた目から心配そうな目に変わった。

「心配するな、場所はつかめている。マージス城、通称お化け屋敷」

グランの顔が海の様な色になった。足元を見ると、グランの足が揺れている。

「あ、あにき。マジース城にいくのはやめましょうぜ。

おっかねえし。あそこに行って、生きて帰った奴は一人もいねえんですし」

「行きたくないんならいかなくてもいいぜ」

グランは安心したのか、暖かい吐息を吐いた。

「俺一人で大盗賊になるからな」

「それは勘弁ですぜ。やっぱりあっしも行きます」

グランの大盗賊になりたいという野望がグランの恐怖を打ち消した。

「マージス城に行くには、ここから西のチェルラッカ行って、

そこから西の帰らずの洞窟を抜けると行ける」

「大盗賊の道は険しいでやすね」

うんざりした顔でグランがこちらを見た。

「とりあえず、西へ行くぞ」

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