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止まった柱時計と、時間の子―わたしは時間と話せる―  作者: 明石竜


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第4章 時間の秘密

 週末、ミオはまた祖父の家に来た。

 今日はお母さんも一緒だ。二人で台所の食器を片付けながら、ミオはときどき奥の部屋をちらりと見た。柱時計は今日も止まったままで、そこだけ空気が違う感じがした。

「ねえ、お母さん」

「何?」

「あの時計、どうするの」

 お母さんは手を止めた。食器棚の扉を閉めながら、奥の部屋に目を向ける。

「……まだ決めてない。大きすぎて、うちには置けないし」

「捨てるの?」

「捨てるって言うか、引き取ってくれる人を探すか、業者に頼むか」

 ミオは何も言えなかった。

 捨てる。その言葉が、妙に鋭く刺さった。


 お母さんが買い出しに出た後、ミオは一人で奥の部屋に入った。

 柱時計の前に座る。

 しばらくして、夜の時間の声がした。

「来たね」

「うん」

 昼間なのに夜の時間が来るのはなぜかと思って前に聞いたことがある。そのとき夜の時間は「ぼくはこの時計に一番近いから」と答えた。昼の時間や朝の時間は、外の空気の中にいる。でも夜の時間は、この柱時計の中にいる。

「ねえ」

「うん」

「この時計のこと、教えてほしい。ちゃんと」

 間があった。

「ちゃんと、か」

「おじいちゃんから何も聞いてなかったから。でも大事なものだって、なんとなく分かる」

「そうだね。話す時期かもしれない」

 夜の時間はゆっくりと、話し始めた。


「この時計はね、ただの時計じゃない」

「知ってる。時間が宿ってるんでしょ。でも、どうして学校でも聞こえるの?」

「この時計は中心なんだ。でも時間は、この町ぜんぶに流れている」

「中心?」

「明石は子午線の町だよね」

「うん。東経百三十五度の」

「日本標準時の基準になってる。つまり、この町の時間は、日本全体の時間につながってる」

 ミオはそれは知っていた。

「でもそれと、この時計は関係あるの?」

「直接の関係はない。でも、この町に時間が集まりやすいのは本当のことだ。だからここに、時間が宿った時計が生まれた」

「生まれた?」

「作られた、の方が正確かな。もう百年以上前、この町の時計職人が作った。ただ時刻を刻むだけじゃなくて、町の時間そのものを守るために」

 ミオは時計を見上げた。飴色の木。古いローマ数字。止まった振り子。

「おじいちゃんが守ってたのは、そういう意味だったんだ」

「そう。時計職人としての腕があって、時間の声が聞こえる人間が、この時計を守る。その役目が、ずっと続いてきた」

「じゃあわたしの前の人も、おじいちゃんの前の人も、みんな——」

「この町で生きてきた人たちだよ。名前は覚えてる。でも長い話になるから、またいつか」

「時計が古いって、どういうこと」

「ん?」

「この間、お母さんと話してたとき、業者に引き取ってもらうかもって言ってた。それが気になってたんじゃなくて——なんか、時計自体が疲れてる感じがして」

 夜の時間は少し黙った。

「……気づいてたか」

「やっぱりそうなの?」

「うん。この時計、もう百年以上動き続けてきた。その間に部品が少しずつ傷んでいる。おじいさんが定期的に手を入れてくれていたから保っていたんだけど、入院してからは誰もメンテナンスをしていない」

「だから止まったの?」

「巻かれていないだけだよ」

 夜の時間が言った。

「柱時計はね、誰かが巻かないと止まるんだ。でも今の状態では長くは保たない。ちゃんと修理しないといけない」 

 ミオは膝の上で手を組んだ。

「修理したら、また動く?」

「できる人間が手を入れれば、動く。設計図も、どこかにあるはずだよ。おじいさんが大事にしまっていたから」

「設計図?」

「この時計を作った職人が残したもの。おじいさんはそれを見ながら、ずっとメンテナンスしてきた。この家のどこかにあるはずだ」


 ミオは立ち上がった。

 探すなら今しかない。お母さんが帰ってきたら、今日の片付けは終わりになる。

 祖父の書斎は、廊下の突き当たりにあった。本棚と、古い机と、引き出しがいくつか。ミオは片っ端から引き出しを開けた。工具、ねじ、古い領収書、手帳。

 三段目の引き出しに、木のカバーがかかった細長い筒があった。

 取り出してみると、中に紙が入っていた。広げると、細かい線で描かれた図面だった。部品の名前がびっしり書いてあって、ミオには何も読めない。でも、これだと思った。

「それだよ」

 夜の時間の声がした。

「見つけた」

「よかった。それがあれば、腕のいい職人なら修理できる」

「腕のいい職人」

 ミオは図面を丁寧に巻き直しながら、ふと思った。

「蒼井くんって、もう一人前なの?」

「ミオちゃんと同い年だし、まだだよ」

「だよね」

「でも父親が時計職人なんだ。ほら、蒼井時計店の」

 ミオは顔を上げた。

 商店街の端にある、あの時計屋だ。


 お母さんが帰ってきたのは、それから少しした後だった。

 ミオは設計図を大事に抱えていた。

「何それ」

「書斎で見つけた。柱時計の設計図だと思う」

 お母さんは眉を寄せた。受け取って、広げて、またたたんだ。

「お父さん、こんなの持ってたんだ」

「捨てないで。使えるかもしれないから」

「使えるって……誰が修理するの。今どき、こういう古い時計を直せる人なんていないよ」

「いるかもしれない」

 お母さんはミオを見た。

 ミオはまっすぐ返した。

「探してみる。だから、時計、もう少しだけそのままにしといて」

 しばらく間があった。

「……分かった。でも急いでね。片付け、進めないといけないから」

「うん」


 帰り道、ミオは商店街を遠回りして歩いた。

 蒼井時計店の前を通ると、灯りがついていた。ガラスの向こうに、修理中の時計が並んでいる。

 ドアを開ける勇気は、今日はなかった。

 でも、明日学校でトキに話してみようと思った。

「決まった?」

 朝の時間の声がした。夕方なのに、珍しかった。

「決まった」

「いい顔してる」

「そう?」

「うん。さっきまでと全然違う。ちゃんと前向いてる」

 ミオは空を見た。夕焼けが終わって、空の端が濃い青になっていた。

 帰ったら、夜の時間にまた話を聞こうと思った。設計図のこと、時計の歴史のこと、おじいちゃんがどんなふうにこの時計を守ってきたか。

 知りたいことが、たくさんあった。


 設計図を見つけた翌週の土曜日、トキが祖父の家に来た。

 お母さんには「同じクラスの子と一緒に時計を見る」と伝えてあった。お母さんは「そう」と言っただけだったが、少し嬉しそうな顔をしていた。

 トキは約束の時間の五分前に来た。

「早い」

「時計職人になりたい人間が遅刻はしない」

「まだわたしと同じで子どもなのに、えらいね」

「関係ないよ」

 ミオは引き戸を開けた。トキは入り口で一度頭を下げて、中に入った。初めて来る家なのに、落ち着いていた。きょろきょろしない。ただ静かに、家の空気を受け取っているみたいだった。


 廊下を歩きながら、トキが言った。

「古い家だね」

「おじいちゃんが長く住んでたから」

「木の継ぎ目の音がしない。ちゃんと手入れされてる」

「そんなことまで分かるの?」

「古い建物は、傷んでくると廊下が鳴る。これは鳴らない。大事にされてた家だよ」

 ミオはそれを聞いて、少し驚いた。

 時計のことしか見えない人だと思っていたのに、足元の音まで聞いているとは思わなかった。

 奥の部屋の戸を開けた。


 トキは三歩入ったところで、止まった。

 声も出なかった。

 しばらく、ただ柱時計を見ていた。

 ミオはその横顔を見ていた。トキの目が、時計の上から下まで、ゆっくりと動いた。文字盤を見て、ケースの木を見て、側面の彫刻を見て、最後に振り子の位置で止まった。

「……すごい」

 小さな声だった。早口ではなかった。ゆっくりと、本当にそう思っているから出てきた言葉、という感じがした。

「すごいって、どこが?」

「全部」

 トキはそれだけ言って、また黙った。


 少しして、トキは時計に近づいた。

 触れる前に、ミオを見た。

「触ってもいい?」

「うん。でも壊さないで」

「壊さない」

 トキは木のケースの側面に、そっと手のひらを当てた。目を閉じた。

「何してるの」

「木の状態を確かめてる。湿気がどのくらい入ってるか、木がどのくらい締まってるか、触ると少し分かる」

「手で分かるの?」

「父さんに教えてもらった。時計は木も金属も、全部つながってるから、木の状態が中の機械に影響する」

 トキは手のひらをゆっくりと動かした。ケースの上から下へ、それから側面の彫刻の部分へ。

「この彫刻、ひびが一か所ある。でも表面だけで、深くまで入ってない。補修したら大丈夫だと思う」

「よく分かるね」

「指が教えてくれる」

 そう言ったトキの顔は、少し照れているみたいだった。父親から聞いた言葉をそのまま使ったからかもしれない。


 次にトキは、文字盤を観察した。

 顔を近づけて、ローマ数字の一つ一つを確かめるように見た。

「この数字、手描きだ」

「機械じゃないの?」

「この時代のものは手描きが多い。でも、これは特にきれいだ。職人が相当丁寧に書いてる」

「設計図を書いた人と、同じ人が作ったのかな」

「分からない。でも、同じくらいの時代の人だと思う。文字の癖が似てる気がする」

 ミオは設計図を取ってきた。広げて、文字盤と並べてみた。

 トキは交互に見た。

「……似てる。数字の払い方が、同じ癖がある」

「じゃあやっぱり、同じ人が?」

「断定はできない。でも、つながりがある人だと思う。設計して、文字盤まで書いた。それだけこの時計に手をかけてる」


 トキが次に向かったのは、時計の側面にある小さな扉だった。

「開けてもいい?」

「開くの?」

「振り子時計は、側面か前面に内部へのアクセス扉があることが多い。これはたぶんここだと思う」

 トキは丁寧に扉の縁をなぞった。塗装の継ぎ目を確かめるように。そして、小さな金具を押した。

 扉が、静かに開いた。

 歯車が、いくつも並んでいた。


 トキはまた、止まった。

 さっきより長く、止まった。

 ミオも横から覗いた。

 歯車は動いていない。でも、並び方に何か決まりがある。大きいものと小さいものが、精密にかみ合うように配置されている。ミオには仕組みは分からない。でも、美しいとは思った。

「……これ」

 トキが、かすれた声で言った。

「何?」

「この歯車、一部が交換されてる」

「交換?」

「オリジナルじゃない歯車が、二枚ある。材質が少し違う。でも——」

 トキは歯車を指差した。触れずに、指先だけで示した。

「交換された歯車が、元のものと完璧に合わせてある。サイズだけじゃなくて、歯の角度まで。これ、元の設計図を見ながら、一から作ったと思う」

「おじいちゃんが、作ったのかな」

「たぶん」

 トキはしばらく黙って、歯車を見ていた。

「……丁寧な仕事だ。急いでない。一つ一つ、ちゃんと時間をかけてる」


 ミオはその言葉を、静かに聞いていた。

 急いでない。時間をかけてる。

 それは、祖父そのものだった。

 祖父はいつも、そういう人だった。植木の手入れも、料理も、ミオの話を聞くときも、急かさなかった。結論を出すのが遅いと思うこともあった。でも後から振り返ると、全部ちゃんと考えた上でのことだった。

「おじいちゃんの手が入ってるんだ」

 ミオは声に出して言った。

 自分でも少し驚いた。当たり前のことだ。でも、トキに歯車を指差されて初めて、それが目に見えた気がした。

 おじいちゃんの手が、ここにある。

 この歯車を作ったとき、おじいちゃんは何を考えていたんだろう。設計図を広げて、元の歯車を測って、同じものを作った。何時間かかったんだろう。一人で、この部屋で、やっていたんだろうか。

「ミオさん?」

 トキが振り返った。

「ごめん。ちょっと考えてた」

「何を?」

「おじいちゃんが、これを作ったときのこと」

 トキはまた歯車を見た。

「すごく好きだったんだと思う、時計が」

「うん」

「好きじゃないと、ここまでできない。技術があっても、好きじゃなかったら、ここまで丁寧にはならない」

 夜の時間が前に言っていた言葉と、重なった。

 好きな気持ちが、腕に出る。


 トキは扉を閉めて、今度は振り子の前に立った。

「振り子、見てもいい?」

「どうぞ」

 トキは振り子の金属の部分を、そっと持った。触れるだけで、動かさなかった。

「重さがある。鉄じゃないかもしれない。真鍮かな」

「素材で何か変わるの?」

「温度の影響が違う。冬と夏で、振り子の長さが微妙に変わる。それが時計の精度に影響する。真鍮は温度変化への耐性が高いから、精度を保ちやすい」

「百年以上も前に、そこまで考えて作ったの?」

「考えてたと思う。腕のある職人は、気候のことまで考えて設計する。明石の冬と夏の温度差を知った上で、この振り子の長さを決めてる」

「時計って、そんなに奥深いの?」

「奥が深すぎて、父さんもまだ全部は分からないって言ってる」

「なのになんで好きなの、そんな難しいもの」

 トキは振り子から手を離し、少し考えてから、言った。

「難しいから好きなんじゃなくて——正直に動くから好きなんだと思う」

「正直に?」

「時計は嘘をつかない。ちゃんと作ってあれば、ちゃんと動く。手を抜いたらすぐ分かる。正直だから、信頼できる」

 ミオはその答えを、しばらく頭の中で転がした。

 正直に動く。

 おじいちゃんも、そういう人だった。無口で、余計なことを言わない。でも言ったことは必ず本当のことで、やると言ったことは必ずやった。

 時計が好きな理由が、少し分かった気がした。


 二人は床に座って、設計図を広げた。

 トキが解説してくれた。

「これが主ゼンマイ。ここにエネルギーが蓄えられて、これが動力になる。そこから歯車列を通って——」

 早口になっていた。気づいていないだろうな、とミオは思いながら、ついていこうとした。

「ちょっと待って」

「あ、ごめん」

「大丈夫。でも少しゆっくり」

「……僕、早口になると言われる」

「時計の話のときだけ、特に」

 トキは少し俯いた。

「それは、知ってた。父さんにもよく言われる」

「気になるの?」

「少し。でも止められない」

「止めなくていいと思う。好きだから早口になる。それはいいことだよ」

 トキは少し驚いた顔をしていた。

「……そう、かな」

「そうだよ」


 設計図を一通り見た後、トキが言った。

「これ、父さんに見てほしい。実物も含めて、正式に修理の相談をしたい」

「できると思う?」

「できる。ただ、時間がかかる。部品を一から作るなら、早くても数週間。長ければもっと」

「数週間でも、動くなら」

「動かしたいの?」

「動かしたい。この家のためじゃなくて——この町のために動かしたい、って感じがしてる」

 トキはミオを見た。

「それ、どういう意味?」

 ミオは少し考えた。夜の時間から聞いたことを、そのまま言うわけにはいかない。でも、嘘もつきたくなかった。

「この時計の音を、昔から聞いてきた人がたくさんいる。って分かってきたから。ちゃんと動かして、またその人たちに聞かせたい」

 トキはしばらく考えていた。

「——それは、いいと思う」

「そう?」

「時計は動いてなんぼだから。どんなに精密でも、止まってたら意味がない。音が出てこそ、時計だよ」


 帰り際、トキは玄関で靴を履きながら、また奥の部屋の方を振り返った。

「もう一回だけ、見てもいい?」

「いいよ」

 二人で奥の部屋に戻った。

 夕方近くになって、窓から斜めに光が差し込んでいた。その光が柱時計の木の部分に当たって、飴色がさらに深くなった。

 トキは黙って、時計を見ていた。

 ミオも横で見ていた。

 止まっているのに、何かが息をしているみたいだった。光の中で、時計は静かにそこにあった。

「おじいさん、いい仕事してたんだね」

「うん」

「こういう時計に手を入れてきた人って、時計のことを人みたいに思ってたんじゃないかな。機械じゃなくて」

「どうしてそう思うの?」

「手のかけ方が、そういう感じがするから。傷んだ部分を直すだけじゃなくて、全体のことを考えてる。長く生きさせようとしてる」

 長く生きさせようとしてる。

 その言葉が、ミオの胸に残った。


 トキが帰った後、ミオは一人で奥の部屋に残った。

 窓の外がオレンジ色になっていた。

「トキくん、いい子だね」

 夜の時間の声がした。

「うん。時計のことになると、別人みたいになる」

「好きなものがある人は、そういうものだよ。おじいさんもそうだった」

「おじいちゃんも?」

「普段は無口なのに、時計の話になると、よくしゃべるようになってた。でも、それでも言葉より手の方が多く語ってたけど」

「歯車を作り直したこと、知ってた?」

「知ってたよ。何年か前に、うまく動かない部分があって、一週間かけて作り直した。毎晩遅くまで、この部屋にいた」

「一週間も」

「楽しそうだったよ。しんどそうでもあったけど、楽しそうだった」

 ミオは歯車のある扉の方を見た。

 おじいちゃんが一週間かけて作った歯車が、今もそこにある。今は動いていないけれど、また動く。

「トキくんのお父さんが修理してくれたら、その歯車もまた動く?」

「動くよ。おじいさんが作ったものだから、設計図に合っている。蒼井くんが見れば、分かるはずだ」

「つながるんだね。おじいちゃんが作ったものと、蒼井くんの仕事が」

「そういうものだよ。時計は、一人で全部作るものじゃない。最初に設計した人、作った人、修理した人、また修理した人——全部がつながって、動き続ける。おじいさんも、その長い鎖の一つだった」


 その夜、ミオは手帳に書いた。

 トキが言ったことを、忘れないうちに。

 長く生きさせようとしてる。

 正直に動くから信頼できる。

 好きな気持ちが、腕に出る。

 全部、祖父のことだと思った。

 直接会って話を聞いたわけじゃない。でもトキが時計を見ながら言った言葉が、祖父の説明になっていた。

 時計を通じて、人が分かる。

 ミオはそれが、不思議で、でも当たり前のことのような気もした。

 おじいちゃんは自分のことを語らない人だった。でも、この時計に全部置いていった。手のかけ方に、向き合い方に、作り直した歯車に。

 ミオは手帳を閉じた。

 奥の部屋では、時計がまだ止まっている。

 でも、動く日が来ることをミオは知っている。

 それまでの間、ここにいる。

「時間にはね、ぼくたちみたいに流れる時間だけじゃない。ときどき、流れない時間もある」

「流れない時間?」

「いつか話すよ。おやすみ、ミオちゃん」

「おやすみ」

 窓の外で、秋が深くなっていく音がした。


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