バーンズ公爵家
読んでいただきありがとうございます。
次の日の朝早めに宿を出て、昼少し前にルアナ王国に入った。
「わー。すごく広いですね~」
高台から国全体が見渡せる、海沿いに王都の町並みがありその周囲に森と川、広大な農場と畑が広がりいくつもの集落が点在している。
「リノア、そんなに乗り出すと危ないよ」
窓から顔を出す私をイオ様が心配する。
「風が気持ちいいですよ」
馬車の座席に座りなおして髪を整える。
「ねえ。リノア、海は行ったことがある?」
「海は初めてです!行きたいです。
今も王都の向こうに見えました!見渡す限り広い青がキラキラしていて。イオ様の深い青色の瞳みたいに綺麗ですね」
イオ様を見ると眼をそらされた。なんだか耳まで赤い。
「イオ様。熱いですか?それとも体調が?」
慌てる私の声に、馬車を走らせるモーガン様の肩がクスクスと揺れている。
「リノア様、あと半時ほどで王都に到着しますよ。ひとまずは公爵家に向かいます」
「はい。よろしく願いします」
✿ ✿ ✿
馬車は順調に進み、公爵家の裏手に停まった。
「こちらからの方が荷物を運びこみやすいんだ、招待したのに裏口からなんてごめんね、リノア」
裏から見ても公爵邸が大きく洗練された作りであることがわかる。
「こんな大きなお屋敷の正面から招待されたら緊張しちゃいますから、こちらの方がいいです」
「モーガンと一緒に急いで父上にだけ声をかけて、フェニックス像を置いて来るから少し待ってて」
「それなら少しお庭を見せてもらってもいいですか?」
「ああ。自由にしていいよ」
二人が手を振り去っていき、私は裏庭に足を踏み入れた。
色とりどりのバラが咲き誇り緑の芝がきれいに刈られている。石畳の通路には小さなバラで埋め尽くされたのアーチがあり、中を覗くと一人の女性がいた。
作業用のワンピースにエプロン。使用人の方かしら?
「あら。どちらのお嬢さんかしら?」
女性が私に気づき声をかけて来た。
「コアナ王国から参りました。エバンス伯爵家が娘 リノアと申します。
本日はバーンズ公爵令息様に旅先のご縁でお招きいただき、お邪魔させていただいております」
私がワンピースの裾を持ち挨拶すると女性は驚いた顔をした後、にっこりと微笑んだ。
女性が何か小さな声で呟き、考え込むようにうつむいた。
「あおのイオが……お嬢さんを……」
ん?
なにか失礼なこと話してしまったかしら?
慌ててバラの話をしてみる。
「それにしても素敵なお庭ですね、この白くてふちがピンクのバラはピエールドゥロンサールですか?
かわいいですよね。コアナ王国でわたくさん咲いていて、私の作業部屋からもよく見えます。気候が違うこの地でもこんなに立派に育つんですね~」
「バラに詳しいのね。気候が違うから育てるのに苦労したのよ」
女性は小さなバラにそっと触れほほ笑んだ。
私は、延ばされた女性の手に小さなき傷を見つけて思わず手を取った。
「あ。突然触れてしまいすみません。この傷が気になって」
手の甲に少し深めのひっかけたような傷がある。
「ああ。さっきバラの棘にひっかけてしまったの」
「植物や動物に傷つけられた時は直ぐにきれいにしないと傷が赤く腫れてしまうことがあります。手当の道具を持っているので、私が傷の手当をしてもいいですか?」
「いいの?」
「はい」
私は急いでポシェットから綺麗なタオルと消毒水、傷の張れを抑える塗布薬を取り出し手当てを始める。
「作業部屋って何のお部屋なの?」
「私、魔道具を作るのが大好きで、裏庭に専用の作業部屋を持っているんです」
「まあ。魔道具を作るの?そのポシェットも魔道具?」
「はい、これは収納力抜群なんです」
手当の間、女性と魔道具について話が弾んだ。
「痛くないですか?」
「少し沁みるわね、でも大丈夫よ。 あなたの魔法は暖かいわね」
「薬や調整水は作る時に少し効能強化の魔法をかけているんです」
手当てが終わると、私の手を握り女性はお礼を言って去って行った。
そういえばお名前を教えていただくのを忘れたわ。
作業着を着ていたけれど、とてもきれいで優雅な人だったな~。
ぼんやり庭を眺めて進んでいくと、噴水にたどり着いた。
「おーい。リノア、準備ができたよ~こっちに来て」
屋敷の方からイオ様が手を振り私を呼んでいる。
庭に面したサロンのドアに招かれて入ると、サロンの半分はガラス張りになっていて日差しが暖かく、お部屋の中も沢山の花が飾られている。
「お花のいい匂い」
「母上は花が好きでね、しかしこんなところから入ってもらってごめんね、ちょうど姿が見えたから。このまま客室に案内するけど、俺も汗を流して着替えたいからリノアも着替えて。客室にいる侍女達にお願いしてあるから」
「ややや。そんな私は何処か自分で宿を探しますよ、これ以上ご迷惑をお掛けするわけにはいきません」
「なに言ってるのリノア。命の恩人を着いてすぐにお礼もせず追い出したら俺が両親から怒られる。ちゃんとお返しさせて」
イオ様は私の手を握りずんずん進んで私を客室に押し込んだ。
「みんな、あとは頼んだよ」
「はい。畏まりました」
見回すと淡いベージュを基調とした部屋で小物や装飾はピンクで統一されている、客室にしては広すぎるかわいい部屋だった。
「素敵なお部屋ですね」
お部屋には4人の侍女さん達が待っていた。
「お手伝いさせていただきますアンナと申します。リノア様、どうぞこちらに」
アンナさんと3人の侍女の方々に隣の部屋に案内されると、そこにはバスルームだった。
「いえいえ。自分で入れますから~」
抵抗もむなしく、私は昨日のホテルより手厚い湯あみにマッサージのあと、美しく身支度を整えてもらった。
(*^-^*)




